荒木若干 「荒木若干」の記事

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龍と共に生きる人々の生活を覗き見る。お腹が空くファンタジー漫画『空挺ドラゴンズ』

「ドラゴンクエスト1」をプレイしたことのある人なら、きっとドラゴンに対して思い入れがあるだろう。私はある。緑のあいつ。とにかくレベルを上げて戦った。達成感がすごかった。 それから何年か経ち、今度は「ドラゴンクエストモンスターズ」が発売された。今までのドラクエシリーズでは敵だったモンスターたちを今度は育てる、という内容。緑のあいつも仲間になるのだ。昨日の敵は今日の友。シリーズファンならカタルシスを感じたはず。 さあ、今回ご紹介する『空挺ドラゴンズ』はドラゴンを食べる漫画だ。 ある作品では神聖な存在とされ、ある作品ではおとぎ話の一節に登場するドラゴンを、食べる。 つまりは「野生動物としての龍」がたくさん登場する物語である。

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親子三代に渡ってリンクする不思議なお話『水域』は背中がぞわぞわする

皆さんは子どもの頃に読んだ絵本で「これはめちゃくちゃ怖かった」という作品はあるだろうか。 私は「すてきな三にんぐみ」という絵本が怖かった。とにもかくにも何よりも、絵が怖かった。 さて今回私が紹介する『水域』という漫画。 さきほど例に挙げた絵本だが、大人になってから読むと、さすがに怖さは感じない。 しかし『水域』。これを読んだあと、私は背中がぞわぞわした。 それは子どもの頃に、あの絵本たちを読んだ時の感覚と同じだった。 なぜそう感じたのか?あらすじを紹介するとともに、これから書いていこうと思う。

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いじめと難聴。重いのに面白い。『聲の形』を読んで考える「エンターテイメント」の話

「漫画」は「エンターテイメント」だと思う。そして「エンターテイメント」は「面白さ」だと、私は思う。 そしてその「面白さ」という言葉は、「笑い」だけを指しているわけではない。 感動ストーリーでは「泣ける」、ホラー漫画では「怖い」、ヒーローものであれば「熱い」。 その物語のテーマに沿った感情を抱けるかどうかこそ「面白さ」だと考えている。 さて、今回ご紹介する『聲の形』という漫画。読んだことがある人なら分かるだろう。 簡単に言ってしまうと、非常に重い話である。 ただ、重い設定ではあるものの、私はこの漫画の「面白さ」にハマり、全部を読んだ。 そして泣いた。

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宇宙ゴミの回収業者。そう遠くない未来のヒューマンドラマ『プラネテス』

「宇宙デブリ」という言葉をご存知だろうか。 例えば打ち上げから年月が経ち、使われなくなってしまった人工衛星の部品。多段ロケットでの切り離しの際にどうしても出来てしまう破片。 当然、宇宙は無重力なので、そういったものは基本的に地球へ落ちてくることなく、いつまでも宇宙空間を漂うことになる。 それが「宇宙デブリ」。つまりゴミのことだ。

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平凡な話なんてない!エネルギー全開な農業エッセイ漫画『百姓貴族』

みなさんは、牛のエサがおいしいことはご存知だろうか。 噛み砕くと香ばしさが口いっぱいに広がる。そして食べる手が止まらなくなる。 ビールのおつまみにぴったりだ。 さて…筆者の頭がおかしくなった訳ではない。 本当に食べたことがある。 現在は廃業してしまったが、昔、私の実家では牛を飼っていた。 育てた牛を食肉用に出荷する、畜産業を営んでいたのだ。 そこで、牛の世話を主だってやっていた叔父に「牛のエサ、うまいから食べてみーや」と言われ、口に運んだ、というのが経緯。

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若者たちのリアル。『ソラニン』を読んで憧れ、共感し、そして自分が大人になったことを感じた話

今回ご紹介する漫画『ソラニン』は、そんな若者たちのモラトリアムが描かれている作品だ。 そして私には気づいたことがある。 それは、登場するキャラクターたちに対して「こいつらの考え方、若いな…」と先輩風を吹かしている自分がいること。 しかし、20歳頃に読んだ時は「分かる、分かるぞ!その感じ!」という思いを抱いていた。 もっと言うと、初めて読んだ高校生時代には「大人だな、この人たち!憧れちゃうぜ!」だった。 『ソラニン』は読むタイミング、自分の年齢によって読後感が変化する漫画だと思う。

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当たり前を当たり前じゃないものに。海賊たちが生きた時代『ヴィンランド・サガ』

おじさん臭いことを言うが、歴史にはロマンがある。 現代のようになんでもかんでもデータで残る時代じゃない訳で、いくら文献を読み込んでも人々の暮らしの隅々までは分からない。 だからこそ「あの頃はこうだったんじゃないか」と想像することが歴史の楽しみ方の一つだ。 歴史に思いを馳せること。ロマンだ。ロマンでしょ?ロマンです! しかし「あの頃」は殺し合いや略奪、奴隷制が当たり前に存在していた。 現代に生きる中で、特に日本に住んでいるとなかなか理解できない感覚だ。ロマンという言葉だけで歴史を見ていて良いものか?時々、考えてしまう。 どこにも記録が残っていない悲しい話や、薄暗い気持ちになる出来事も数多いだろう。虐げられ、苦虫を噛む人だっていたはずだ。 それが「当たり前」。いつも通りの日常で、普通だった。 『ヴィンランド・サガ』はその時代の「当たり前」を変えようとする人物たちの物語である。

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夢を追う父親の背中に息子は何を見るのか『花男』

「ちょっとお父さん!しっかりしてよ!」 世界中で、このセリフがどれだけ言われてきただろうか。 物悲しい気もするし、それぐらいの方が変に気を使わない間柄なんだな、とも思える…いや、やっぱり物悲しい気がする。 夢追い人な父親と、現実的な息子。 その関係性が次第に変化していく様子に、自然と胸が熱くなってしまう。 そんな素敵な漫画が、松本大洋の描いた『花男』である。少女漫画『花より男子』の話ではないです。

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卓球漫画なのにヒーロー漫画。胸熱くなる物語が凝縮された『ピンポン』

漫画における「ヒーロー」には様々なタイプがいる。熱血漢やクールなタイプ、ひょうきん者、怖さ危うさを併せ持つ性格…。 この記事を読んで頂いているのであれば、あなたが漫画好きなのは十二分に察せられる。 ということは、あなたの中にもお気に入りのヒーローがいるはずだ。 もしかしたら、それは漫画のキャラクターではないのかもしれない。尊敬する著名人有名人、家族、友達の中にいる、と言える方もいるだろう。 自分にとっての「ヒーロー」とは誰か。読むと、そんなことを考えてしまう漫画が『ピンポン』だ。

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きっとあなたも主人公の女子力、主夫力に「ウッ」ってなる『極主夫道』

私ごとで恐縮だが、現在こうしてライターなどの仕事をしているかたわら、主夫としても生活している。 料理や洗濯、掃除など、普通のことならある程度はこなせる自信がある。 しかし、誰かに何かを言われることがない分、ついついサボってしまうことも。 「あかんわ…やらなあかんわ…」と思いながら布団に潜ってしまい、昼寝することもしばしば。起きた時の後悔が半端ない。まじであかんわ。 そういう状況なので、今回レビューさせて頂く『極主夫道』を読むと、笑いながらも主人公の女子力、主夫力の高さに「ウッ」と思ってしまう。