園田菜々 「園田菜々」の記事

レビュー

この作品を読んでもまだ、生活保護受給者を「甘え」だと言えるだろうか。『健康で文化的な最低限度の生活』

「生活保護」という言葉を聞いて、いいイメージを抱く人はどれだけいるだろう(そもそも、いるのだろうか)。「それは国民の権利だ」と頭ではわかっていても、いざ「生活保護で暮らしています」という人と対面したら、やっぱり心のどこかで「ずるい」とか「怠けている」と思ってしまう自分がいるのではないか。 正直、私は「いや、生活保護は国民の権利だから、決して責めるような気持ちは抱かない」と言い切れる自信がなかった。生活保護に関するニュースとして耳に入ってくるものの多くが、不正受給絡みだったということもあるだろう。 しかし、2018年7月に吉岡里帆主演でドラマ化もされた作品『健康で文化的な最低限度の生活』を読んでから、少し自分の中で感覚が変わったように思う。

レビュー

この作品は私をどんな感情にさせたいのか?『バスタブに乗った兄弟〜地球水没記〜』

『絶望の犯島―100人のブリーフ男vs1人の改造ギャル』を描いた鬼才、櫻井稔文が描く最新作が、とにかく面白い。とにかく面白いのだが、私はいま、このレビューを書くことを希望した過去の自分を呪っている。どう考えても、言葉を尽くして面白さが伝わるような作品ではないのだ。というよりも、正直「表紙を見てください」とだけ言って終わらせたい気持ちである、今。表紙を見てください。

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「なんで一生懸命働かないといけないの?」という疑問に対する一つのアンサーが『働かざる者たち』にはあった

「働きたくない」が口癖になったのは、いつからだろう。ちょっと疲れると「働きたくない」とぼやきつつ、なんだかんだ言って仕事をするのはやめていない。というよりは、やめる勇気がない。来月の家賃が払えなくなるからだ。むしろそれ以外に何か理由あるかな、と思う。もし明日5億円手に入ったら、私は仕事をしているのだろうか。

まとめ

「神」は生きるよすがになるか。宗教がモチーフとなる作品3選

突然チャイムが鳴って出ると知らない人。熱心に自分の信じる宗教について語るが、何を言っているのかよくわからない。そんな経験した人はいないだろうか。   私はかなりの数、ある。おそらく「信じやすそう」と思われているのだろう。家にもくるし、学生時代は何度かキャンパスでも勧誘されたし、社会人になってからは合コンで知り合った女性からも熱心に勧められた。   私はあまりそういったものを信じていないので、「なんか怖いな」と思って深入りはしない。ただ、彼ら彼女らがなぜそこまでして熱心に信じ、広めようとするのか、それには興味があった。

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幼稚園児が無邪気に両親の情事を覗きこむ? 『しいちゃん、あのね』は可愛らしい表紙とのギャップにやられる

よく、家族でドラマを見ていたら、とつぜんベッドシーンが挟まれて、両親が子どもの様子を気にしてあたふたする……なんて場面がある。実際我が家でも、幼いころはそういった「変な空気」がたびたび食卓で起きていた。 でも、子供たちは、それが何を意味しているのかわからないのがほとんどなのではないだろうか。ベッドで二人の男女が裸で仲が良さそうに眠っている、その程度の認識なのではないか。(いまはデジタルネイティヴの世代だから、もっと知識もあるのかな)

レビュー

どうしたら「自分は誰よりも不幸だ」と言えるだろう?『世界で一番、俺が〇〇』

「好きな人にフラれた」 「就職の面接に落ちた」 「仕事でミスをして上司に怒られた」   生きていれば、辛いことも恥ずかしいこと山ほどある。そのたびに、ややもすれば、私たちはつい「自分が世界で一番不幸だ」とでもいうような顔で頭を抱えてしまう。   でも、ふと冷静になる。たとえば屋根のある家に住んでいたら、毎日の食事に不自由していないのなら、友人が一人でもいるのなら、誰よりも不幸だ、なんてこと言うことはできないのではないか。恵まれていることがひとつでもあるのなら、それがない人に比べて、幸せだと言える部分があるということではないか?

まとめ

笑いと悲哀の振れ幅がエグすぎる。『少年アシベ』だけじゃない、森下裕美作品まとめ

ある日、道を歩いていたら、トラックの荷台からゴマフアザラシの赤ちゃんが落ちてきた。少年は家に持って帰り、その日から一緒に家族として暮らすことに。 『少年アシベ』は、可愛いゴマちゃんが印象的だからかついほのぼのとしたギャグ漫画だと思ってしまうが、一度でも読んだことがある人ならそうではないと分かるはずだ。

レビュー

妄想でも現実でも好きな子に優しくしたい……思春期の爆発しそうな性欲を抑えられるのか?『思春期エトセトラ』

多感な年頃である、思春期。好きな人ができると、ついその人のことで頭がいっぱいになってしまう。性欲も強くなってくる時期だから、いけないとわかっていても、あんなことやこんなことをしたいと考えてしまう。一緒にデートに行く妄想なんかして、だんだんとヒートアップして、たまに夢と現実の区別がつかない瞬間があったりする。   そんな思春期のムラムラな妄想事情を描いたBL『思春期エトセトラ』が、色々とぶっ飛んでいて面白い。

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なぜ私たちは、マイノリティを放っておけないのだろう?『しまなみ誰そ彼』

昔、知人が「セクシャルマイノリティーの人たちにとって、その性志向はアイデンティティとなってるわけでしょ。なのに、それをカミングアウトしづらい社会は間違っている。もっと気軽に言えるようにに、社会を変えていかないといけない」と言っているのを聞いて、「本当にそうだろうか?」と思ったことがある。 もちろん社会が受け入れる雰囲気を作ることで、より生きやすくなる人は増えるかもしれない。

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「欲情」は悪いことじゃないけど、ときに相手を傷つける。十人十色の“性の目覚め”を描いた『中学性日記』

たいてい、若いころに思い悩んだことの多くは、10年も経つと笑い事になるものだ。「なんであんなことで悩んでいたのだろう」と不思議に頭をかしげるが、おそらくそこは必要な通過儀礼のようなものだったのだろう。 シモダアサミの描く『中学性日記』を読んでいると、そんな些細な悩みやコンプレックスで頭がいっぱいだった頃を思い出す。 当作品は、多くの男女が性に目覚める「中学生」という時期に焦点を当てたオムニバス形式の作品である。 思春期の彼らは、自分にも他人にも意識が過剰で、とても不器用で、不安定だ。不用意に傷つけたり誤解しあう姿にもどかしく思う人もいるだろう。しかし、きっと必ずどこかで「ああ、私も昔そういうことで悩んでいたよ」と言いたくなる瞬間があると思う(あなたがすでに「大人」であるならば)。