園田菜々 「園田菜々」の記事

レビュー

その「性的すぎる肉体」が女を“敵”と“味方”に分けてしまう『ひばりの朝』

Instagramを見ていると、どう考えても“遠近法”を使って自分の顔を小さく見せようとしているな、という女の子が山ほど出てくる。心底仲がいいと思っている友達とプリクラを撮りに行っても、シャッター音が鳴るたびに彼女が半歩後ろに下がっているのに気づいて辟易とする。彼氏ができたという話を母親は喜んで聞いてくれるが、あんまりにも幸せそうなノロケ話になると途端に「女」の表情になって心が離れていくのがわかる。親ですらそうなんだから、友達に「彼氏にされて嬉しかったこと」なんて言えるわけがない。 自分よりも幸せそう、自分よりも可愛い、自分よりもモテそう……誰かに対して「自分よりも」という言葉を使って比較しようとした瞬間、相手と私の間に対等な関係はない。そこにあるのは、マウンティングが前提の敵と味方に分かれた世界だ。

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愛されることは気持ち悪いし、セックスは気持ちよくない。“ふつうの幸せ”に中指を立てるような『ひもとくはな』という作品

目を見て「好きだよ」と言ってくれて、困ったときは助けてくれて、いつだって私のことを大切に考えてくれる。少女漫画の王子様は、いつだって優しい。それがSっ気のある素直じゃない王子様だとしても、結局最後は助けてくれるし、根本的には主人公のことが好きだったりする。

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生まれた場所や家族によって、私の“幸せ”は決まるのか?『死にたがりと雲雀』

昔、上司に毎日のように怒鳴られなじられ、死にたくなりながらも職場に通う日々があった。いま思えば完全なるパワハラだったが、その環境にいるとなかなか気付かなかったりする。結果的に隠れてやっていた副業先の企業から「これくらいのお金を出すからフリーランスになってはどうか」という提案をされたことで、私はその職場で耐え続ける以外の選択肢を考えることができた。あのときの「ここから抜け出せるのか」という希望に満ちた喜びは、今も忘れない。

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飯がうまいからって仕事が進むわけじゃない。食材も調理過程も全部イカれたグルメ漫画『めしにしましょう』

そこは、漫画家广大脳子(まだれだいのうこ)の仕事場。   敏腕アシスタントである青梅川おめがは、料理の腕も一級品。作業の合間の飯は彼女が作る。過酷だと言われる漫画家の仕事場で出る料理、きっと疲れた漫画家の胃を優しく癒す素材や、徹夜を手助けするエネルギー満点の料理を出すのだろう。そして、元気になった漫画かはまた仕事場に戻るのだ……。

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誰だって夢を追える。田舎娘がアイドルを目指す『きらめきのがおか』を読むと生きる希望が湧いてくる

どこか、「夢を追う」という言葉は、若者の特権のようなイメージがある。大人になると、身分不相応な夢をもつことが、恥ずべきことのように感じられてしまう。「いい歳して……」なんて言われちゃうかもしれない。ほんとうはやりたいことがあったとしても、尻込みしてしまうかもしれない。   ゴトウユキコが描く『きらめきのがおか』は、そんな人生における夢を、いくつになっても、誰であっても、追いかけていいんだ、という勇気を与えてくれる作品だ。

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不気味すぎる毒親漫画『血の轍』からなぜか目が離せない

近年、「毒親」という言葉をテレビやインターネット、書籍、漫画など様々なところで目にするようになった。毒親とは、過干渉やネグレクトなど、子どもに対する異常な執着(もしくは無関心)を示す親のことを指し、子どもがそれにより精神的に病んでしまうケースも多い。   もはやひとつのジャンルとして地位を築き上げつつある「毒親」。そんな毒親テーマに扱った漫画作品の中でも、どこか異色の存在としてあるのが押見修造が描く『血の轍』である。

まとめ

メンタルヘルスに効く奮闘エッセイ漫画3選

うつ病、パニック障害、統合失調症、過食症、拒食症、ヒステリック……これらの精神障害は、風邪などの病と同様に、いつだって私たちが当事者になりうるものだ。しかし、なったことがない多くの人々に、その症状の辛さや心境を理解してもらうのは難しい。「結局甘えなんじゃないの?」なんて辛辣なことを言われてしまう可能性だってある。   そんな当事者の孤独は、同じようにその病と向き合い戦う人たちの姿をみることで癒されるかもしれない。