吉川 ばんび 「吉川 ばんび」の記事

レビュー

連続幼女殺人事件の犯人像と、被害者のトラウマを描いた『闇の果てから』は子どもも大人も読むべき

「子どもに読ませたい漫画はあるか」と聞けば、きっとたくさんの答えが帰ってくるだろう。 感銘を受けた漫画や、面白かったギャグ漫画、偉人の功績を描いた漫画など、私もたくさんの読んでもらいたい作品が浮かんでくる。 そんな中で、とりわけ「子どもがある程度大きくなったら、必ず読んでほしい」と思っている漫画がある。単純に面白いとか、そういう理由からではなく「こういう危険があることを知ってほしい」という願いからだ。 連続幼女誘拐殺人をテーマにした漫画『闇の果てから』である。この作品を初めて手に取ったのは、小学生の高学年くらいの頃だったと思う。普段そんなことはしない母から「読んでおきなさい」と手渡されたのがきっかけだった。

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幽霊でも、妖怪でもない。本当のおぞましさを描いた傑作ホラー漫画『ギョ』を知っているか

「人がもっとも恐れるのは、自分の理解を超える存在である」 という言葉を、どこかで聞いたことがある。 確かに言われてみれば、自分と思考回路が全く違う人間にまくし立てられるのは怖いし、何を考えているのか分からない人のことも「怖い」と感じたことがある。 さらに言えば、歴史上で繰り返されてきた差別だって、それが元で起きた争いだって、相手のことが分からないし、理解ができなくて恐ろしいから起きたことなんじゃないか、って、そんな風に思ったこともある。

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連載終了から24年、未だ色褪せない『幽★遊★白書』は何度読んでも愛が深まるばかりの名作だよねという話

正直なところ、少年漫画でよくある「バトル漫画」には、あまり興味がなかった。 ギャグ漫画だと思って読んでいた作品が突然シリアスなバトルシーンに入ったりすると、「早くこの戦い終わらないかなぁ」と思うくらい、興味がなかった。 そんな私の価値観を根底から覆した漫画がある。バトル漫画の面白さ、見所を教えてくれた作品がある。 知らない人はほとんどいないであろう、冨樫義博先生が手がけた超有名作品『幽★遊★白書』だ。

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不朽の伝説的漫画『タッチ』。大人のあなたにこそ読んでほしい作品の見所と魅力を語る

今から37年前の1981年、今なお漫画史に残る名作が誕生した。 あだち充先生の漫画『タッチ』だ。 コミックスの累計発行部数は1億部を超え、アニメ化はもちろん、実写化もされた伝説的作品であるため、知らない人はほとんどいないと思う。 そんな『タッチ』だが、単なる野球漫画だと思っていないだろうか。スポ根漫画だと敬遠していないだろうか。 もしそうであれば、それは「全くの誤解である」と言いたい。『タッチ』は、ただの野球漫画でもスポ根漫画でもない。あまりにも純粋な愛を描いた作品なのだ。

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「世の中には本当に死んだ方がいい人間がいる」。古谷実が描く衝撃作『ヒミズ』の絶望と希望について

今まで読んできた沢山の漫画の中で、特に好きなセリフがある。 「まるでオレの人生の目標は長生きみてーだ」 古谷実さんの漫画『ヒミズ』の主人公、住田の言葉だ。 もう数年前だったけれど、このセリフを読んだとき、「ああ、別に私、長生きするために生きてるわけじゃないんだよな」と心がフワッと軽くなったのをよく覚えている。 住田のあの言葉はきっと、過酷な人生を必死に生きようとする彼の心の奥底からでてきたものなんだと思う。 今回は、私が大好きな漫画『ヒミズ』について紹介したい。

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「ギャグ漫画界で語り継がれる伝説的作品『ピューと吹く!ジャガー』の魅力を改めて振り返る」

「週刊少年ジャンプでの連載終了から8年経った」と聞いて「え、もうそんなに!?」と驚いてしまったのだが、どうやらもうそれくらい経ったらしい。時の流れはとんでもなく早いものだ。 うすた京介先生による大人気漫画『ピューと吹く!ジャガー』の話なのだけれど、ついつい懐かしくなって「もう8年かぁ」と思いながらパラパラとページをめくっていくと、やっぱりめちゃくちゃにおもしろくて、1冊…2冊…と読み進めてしまい、気づかぬうちに時間をごっそりと盗まれてしまった。 そんな『ピューと吹く!ジャガー』の魅力について、ここで改めて振り返りたい。

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「ホラー漫画界の鬼才・伊藤潤二が描く、太宰治の『人間失格』の衝撃」

「恥の多い生涯を送って来ました。自分には、人間の生活というものが、見当つかないのです。」   太宰治の代表作『人間失格』を読んだことはあるだろうか。   太宰がこの小説を書き終えた1ヶ月後に女性と入水自殺していること、主人公と太宰のあいだにある共通点が多いことなどから、彼の「遺書」だと言われることも多い作品である。   私はこの小説が好きで今までに2〜3回ほど読んでいるのだけれど、読むたびに新しい魅力を発見できるのが『人間失格』のすごいところだと思う。   「『人間失格』の読者には「主人公が自分と似ている」と思う人も多いのだ」という話を聞いたことがあるが、これは私も何となく分かるような気がする。

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不良×ケンカ×茶道部!?異色の茶道漫画『お茶にごす。』が異常に癒される

「茶道漫画」と聞くと、うっかり「何やらおてんばでちょっぴりドジだけれど、まっすぐで一生懸命な女子高生がお茶の道を極めて行く」漫画を想像してしまう自分がいる。多分これはものすごい偏見なのだけれど。 しかし、最近その偏見をぶっ壊されるような漫画に出会った。 「悪魔」と呼ばれるほどの強さを持つ不良少年が、茶道部に入部する漫画『お茶にごす。』だ。

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ヤンキー漫画の常識をくつがえした『今日から俺は!!』は、癒し系ほのぼの青春コメディーである

『今日から俺は!!』という西森博之先生が描いた伝説的人気漫画をご存知だろうか。 最近でも、2018年10月から実写ドラマが放映することが話題となったため、名前だけでも聞いたことがある人は多いと思う。 しかし、本作を読んだことがない人たちからすると「あー、あのヤンキー漫画でしょ?」くらいの予備知識しかないんじゃないだろうか。いや、絶対そのはず。でもね。 それが、違うんです!!! 『今日から俺は!!』は、ただのヤンキー漫画ではないんです!!! というわけで今日は、1人でも読者を増やすために、『今日から俺は!!』の魅力について紹介したい。本当にみんな読んでほしい。それくらい好きなんですよ……。

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ファンなら絶対に読んでおくべき冨樫義博の不朽の名作『レベルE』を知っているか?

冨樫義博、という天才漫画家を知らない人はほとんどいないだろう。   大人気漫画『幽☆遊☆白書』『HUNTER×HUNTER』を手がけた作者であり、少年漫画界の歴史に残る、超有名な漫画家である。   しかし、彼の描いた作品で、(小学生のときに『HUNTER×HUNTER』の連載が始まった筆者の世代では)意外と広く知られていない名作が存在する。決して「面白くないから知られていない」というわけではないのだ。「めちゃくちゃに面白いのに、なぜか知名度がそこまで高くない」のだ。   それが、冨樫先生があの名作『幽☆遊☆白書』の連載終了後に手がけた『レベルE』という作品だ。