彼女のおニクに誰もが夢中になる。ぽっちゃり女子4コマ『さわらせてっ!あみかさん』

レビュー

あみかさんは、手芸用品店で働く27歳。10年前に両親を亡くしてから、中学生の妹とふたりで暮らしている。

家計は決して豊かではないけれど、ふたりの生活はいつも幸せで満ちている。それはひとえに、周りの人を優しく包み込むあみかさんの太陽のような性格と、あみかさん自身を物理的に包み込む豊満なおニクのおかげだ。

もちもちのほっぺ。ぷるぷるの二の腕。ぷよぷよのお腹。むちむちの太もも。重量感と弾力たっぷりな彼女のおニクを見た人たちは、必ずこう口にする。『さわらせてっ!あみかさん』――と。

さわらせてっ!あみかさん
©トフ子/芳文社

太っていることを誰も笑わない、やさしい世界

いわゆる「ぽっちゃり女子」がブームになって久しいが、男女が考える「ぽっちゃり」の定義には大きな隔たりがあるとも言われている。男性が考える「ぽっちゃり」は女性からすれば「痩せすぎ」だったり、反対に女性が考える「ぽっちゃり」は男性からすれば「太りすぎ」だったり。

さて、あみかさんは「ぽっちゃり」だろうか、それとも「太りすぎ」だろうか。個人的には、充分ぽっちゃりの範囲内だと思うが。

この作品を一言でいえば、あみかさんがその体型ゆえに悪戦苦闘する様子を面白おかしく描いたギャグ4コマ。昔の服を着ればボタンが吹き飛ぶ。腹肉が邪魔をして足の爪が切れない。焼き肉店でライスを頼むときはさすがに迷う、普通盛りにするか大盛りにするかで。

しかし、断じて「太っている人を笑いものにする漫画」ではない。本作のネタは微笑ましいものばかりで、あみかさんも読者も決して傷つけない。

あみかさん自身は至って健康体であることも、明るい作風の形成に一役買っている。確かに体重は人並み以上にあるものの、意外と動きは俊敏で日常生活には困らない。健康診断もほとんどの項目は正常値(体重以外)。

もちろん女性だから、自分の体型がまったく気にならないわけではない。たまにはダイエットに挑戦する。けれど、運動と食事制限による空腹に負けて逆に食べすぎ、リバウンドするまでもなくただただ太ってしまうことも。

さすがにもう少し痩せたほうがいいのでは……と心配になるときもあるが、嬉しそうにご飯を口の中いっぱいに頬張る姿を見ると、仕方ないなあと思えてしまう。それでいい。それでこそあみかさんだ。

あみかさんのおニクを狙う女子(猛獣)たち

あみかさんがぽっちゃりしているのは、食生活だけでなく環境面の影響も大きい。周りの人たちがこぞって彼女のおニク目当てに集まってくるため、痩せるに痩せられないのだ。

あみかさんの妹のかがり。家ではいつも一緒というメリットを活かして、あみかさんを抱きまくら代わりにしたりクッション代わりにしたりとやりたい放題。

沙織は、あみかさんとは対照的にスラリとしたスタイルの女性。同僚からの信頼も厚い有能な学校教師だが、あみかさんの前ではただのぽっちゃり好きと化す。

手芸用品店のアルバイト・まひろ。匂いフェチで、あみかさんの髪の毛や服の匂いを嗅ごうとしてはドン引きされている。あみかさんはきっと、干したての布団のようないい匂いがするのだろう。

あみかさんが通勤で使うバスでよく遭遇する女子高生、バス子(本名不明)。心の中であみかさんを「モチ神」と崇め、バスの振動で揺れるおニクの感触を堪能する。

総じて奇行が目立つが、それもこれもみんなあみかさんを心から愛しているからだ。人は、誰かに認めてもらうことで初めて自分を肯定できる。もしも太っていることをからかわれていたら、あみかさんは自分の体型にコンプレックスを持ち、暗い性格になっていたかもしれない。あみかさんのおニクと明るさは、周りの人たちの優しさでできている。

世間の価値観に惑わされず、ありのままの自分を、他者を受け入れる。キレのいいギャグの中にも、人生における真理が隠されている作品。女性はやっぱりスリムじゃないと……と思っている人にもぜひ読んでほしい。

さわらせてっ!あみかさん/トフ子 芳文社