動物好き必読の書『動物のお医者さん』の魅力アレコレ

レビュー

動物が登場する漫画、と聞くと、どんな漫画を思い浮かべますか?
 
ツイッターで話題を呼び、単行本化もされた『こぐまのケーキ屋さん』やアニメ化もした『しろくまカフェ』など、動物を扱った漫画はたくさんあると思うのですが、私が最もオススメしたいのは、『動物のお医者さん』という漫画です。2003年にはテレビドラマ化もされたので「名前を聞いたことがある」という人は多いかもしれません。

でももし、漫画を読んだことがないのであれば、絶対に読んでみてほしいんです。
 
犬や猫以外にもさまざまな動物が登場してストーリーを盛り上げてくれるので、動物好きの人の中でも特に、動物の生体や行動に興味がある人にオススメの作品です。
 

動物のお医者さん
©佐々木倫子/白泉社

 
主人公のハムテル(西根公輝)は、高校生の頃、ひょんなことからシベリアンハスキーの子犬・チョビを引き取ることにり、獣医になることを志ざし、親友の二階堂昭夫とともにH大学の獣医学部へ進みます。
 
本作は、自由奔放な祖母、好戦的なニワトリのヒヨちゃん、プライドの高い猫のミケと暮らしながら、大学でも超個性的な仲間たちに囲まれるハムテルとチョビの日常を描いたコメディ漫画です。
 
この漫画についてまず特筆すべきは、動物たちの感情表現のおもしろさではないでしょうか。チョビやミケ、ヒヨちゃんなど登場する動物たちの思考や会話がすべてが明朝体のレタリングで書かれていて、その内容も思わず「クスッ」とさせられるようなものなのです。
 

 
チョビは強面な外見とは裏腹にとても優しくて、温厚で、ハムテルのことを非常に慕っています。
 

 

 
ハムテルが犬に噛み付かれてしまったとき、チョビはハムテルを守るために、とっさにその犬に噛み付いたことがありました。怒ることがめったにない(作中でチョビが唯一怒ったのがこのシーン)チョビが怒りをむき出しにしたのはとても印象的で、ハムテルに対しての愛を感じることができます。
 
登場する動物たちの感情表現が豊かなので、そのぶんそれぞれのキャラクターや口調の違いがはっきり出ていて、読んでいてとても楽しめます。
 
また、冷静沈着で落ち着いているハムテルとは対照的に、彼を取り囲む人たちのキャラクターが強烈なのも見所のひとつ。
 

 
大のネズミ嫌いの親友・二階堂をはじめとして、おっとりマイペースな先輩である菱沼(ひしぬま)さん、破天荒でトラブルメーカーな漆原(うるしはら)教授など、登場人物は基本的に「ボケ役」が多いです。
 
ハムテルとチョビは、そんな彼らが引き起こすドタバタ劇にいつも巻き込まれてしまう、いわゆる「ツッコミ役」なんですけど、このバランスがめちゃくちゃ絶妙なんですよね。ツッコミが少なくてボケ役がやたらと多いからこそ、トラブルが後を絶たず、ストーリーにも面白みがあって、ずっと読んでいられるのがすごいところです。
 
『動物のお医者さん』の作者は、少女漫画家の佐々木倫子さん。
 
作品を通して写実的なタッチで人物や動物を描いており、ほのぼのしたストーリーとのギャップが魅力的。また、本作ではチョビの愛らしさが爆発的な人気となり、日本で「シベリアン・ハスキーブーム」を巻き起こし、社会現象にもなった作品です。
 
ストーリーはほとんどが1話完結なので、サクサク読めちゃうところもいいですし、途中から読み始めても十分楽しめる作品です。
 

まとめ

「動物好きの中の動物好き」という人には、絶対にハマると言っても過言ではない『動物のお医者さん』。「人間関係に疲れてとにかく癒されたい……」というときには、ぜひ手に取ってみてはいかがでしょうか。個性豊かなキャラクターの動物たちや登場人物のおかげで思わずクスリと笑ってしまって、癒されること間違い無しです。
 
何巻から読んでも面白いですが、読み始めるのであれば、ぜひ1話から全話読んでみてほしいです。きっとあなたも、好きな動物に出会えると思います。
 
 
動物のお医者さん/佐々木倫子 白泉社