超ユルユルはちゃめちゃアクション漫画。『ARAMITAMA』は漫画初心者にこそ読んで欲しい

レビュー

難しいこと、ややこしいことを考えすぎるとなんかこう…「うがぁ!!」ってなりませんか?
私はなります。そして布団の中で悶えます。

みなさん様々なストレス発散法をお持ちだと思うが、私はやはり、漫画を読んで気持ちを落ち着かせることが多い。まんが王国ラボで好きな漫画について書きまくっちゃうぐらいには、漫画好きなので。

さあ、本日は頭をリフレッシュさせたい時にオススメできる漫画『ARAMITAMA』をご紹介。
そのユルくてバイオレンスでかわいくてかっこよくて…とにかく、はちゃめちゃな世界観が
あなたの脳みそを揉みほぐしてくれるはず。

ARAMITAMA
©Ryuji Gotsubo/講談社

長い間、戦争状態が続いた「人」と「鬼」。その戦いは混乱を生み続け、ついにお互いが疲弊しきったところで、種族間での休戦協定が結ばれた。

『ARAMITAMA』の舞台はそれから1000年後。
長い時が経っても種族の溝は埋まらず、人が暮らす「人間界」と鬼の暮らす「鬼界」は超巨大な壁で区切られていた。
お互いがお互いの領土へは不可侵…という協定ではあるが、しかし中にはその掟を無視して相手側へと侵入し、悪さをする者もいる。

ということで、そんな輩を取り締まる組織が出来上がるのは至極当然。
それが「帝都守護異形管理局」であり、その中には人間界に入り込んだ鬼を鬼界へと送り返す専門の部署「陰陽二課退魔班」が存在する。
『ARAMITAMA』はその、陰陽二課退魔班所属の人間たちを主役に置いたストーリーである。

さあ『ARAMITAMA』。設定的にはバイオレンスでドロドロした物語が展開されそうな匂いもあるが、そうではない。
いや人と鬼が戦うし、日本刀でバッサー真っ二つなんかもあるし、そう簡単に「違う」と言うのもアレだが、だって違うんだもん。
ユルいんだもん。めちゃくちゃ。孫にデレデレなおじいちゃんの財布の紐ぐらい。3年ぐらい履き続けたパンツのゴムとか。

『ARAMITAMA』を含むゴツボ×リュウジ作品全般に言えることだが、とにかく脱力できる作風が良い。「さっすがリュウジさんやでぇ!それが欲しかったんやでワイは!」と拍手したくなる。
シリアスな雰囲気だな…と思った次のページでは、その空気を破壊されている。
また、有名な漫画やアニメをパロディしている場面も多い。

目が隠されているので一応こちらでも隠してみるが、完全にジャ◯アン出てるし、

これは完全に『AKI◯A』ですね。本家を観直したくなりました。

いや隠そうとはしていない。ガンガンそういう表現をしてくる。
これもゴツボ×リュウジ作品ではいつも通りなことで、作者の趣味、好きなものを物語の中に盛り込んでくる。嗜好が見て取れて楽しい。ノーヒントで「あ、これパロディだ」って分かると嬉しくないですか?私は嬉しい。好き。

キャラクター性も特徴的で、例えば、

陰陽二課退魔班の鷹山は、長身長髪、ゴーグルのようなメガネにヒゲ、そして日本刀を持っていて、なんだかすごく出来そうな雰囲気を醸し出す見た目をしているが、

言動の端々にバカさ加減が見て取れてしまう。いや鬼相手には強いは強いが、ビシッと決まらないというか、肩の力が抜けてしまうというか。

班の新人ユーリも、最初はちょっと堅物な少女という印象を受けるが、読み進めていくと金稼ぎに執着している姿が見えてきて、すごく…なんだろう…年頃の女の子であって欲しいな!…って…おじさん、思っちゃうし…。

ぱっと見、設定的には人側が主人公で鬼側が敵役な『ARAMITAMA』。
ただ、読んでいると主人公サイドのキャラクターたちの言葉や思想、行動に傍若無人な面が見えてくる。はっきり言うと、主人公たちが好き勝手やり放題している。そうしていると(え…鬼かわいそう…)なんて思ってしまうシーンが増えて、そのうち鬼側を応援したくなる。
「鬼に優しくしてあげて!暴力で解決しないで!」奇しくもいつのまにか、世界平和を願ってしまうのが『ARAMITAMA』だ。

さて、ここから少しだけ、自分語りをさせて欲しい。

私は昔、漫画家を目指していた。
もちろん今現在漫画家ではないが、そうした目標があってのんべんだらりと漫画に接しながら生きてきたからこそ、こうして好きな漫画について書かせてもらう機会を得られ、幸せだなぁと思っている。

私が漫画家を初めて夢見たのは中学生の頃。
何を隠そう、そのきっかけは『ARAMITAMA』の作者、ゴツボ×リュウジである。

その頃ゴツボ×リュウジは『ササメケ』という高校サッカー部を舞台にした漫画を描いていた。そちらも『ARAMITAMA』と変わらず、ユルさの際立つ内容だった。
それまでの私はコロコロコミックの漫画や、ジャンプ作品しか読んだことがなかった。
つまり「友情、努力、勝利」が軸にある、まさに少年漫画、というものしか知らなかったのだ。

その価値観がゴツボ×リュウジ作品との出会いによって大きく変わったのである。
(漫画って、こんなん描いてもええんや…!)
ちょっと語弊があるかもしれないが「これでいいんだ」と感じた。
視界がバッとひらけたような感覚。漫画って自由なんだ、と。自我の芽生え始めた中学生にとってそれは、人生観が変わったとも表現できる衝撃だった。思いっきり中二心もくすぐられた。そして「将来こんな漫画が描きたい」と私は思い、筆を取ったのだ。

ARAMITAMA
©Ryuji Gotsubo/講談社

そういう経験があるので、私は『ARAMITAMA』を、これまであまり漫画を読んでこなかった人にこそオススメしたい。
おおげさかもしれないが、もしかしたらあなたの人生も、変わるかも。

ARAMITAMA/Ryuji Gotsubo 講談社