海外でも大人気のニッポンのヒーロー・ニンジャがストーカーとして登場する漫画があったら、一瞬戸惑う人もいるでしょうか。まぁどちらも隠密で行動するし、痕跡は残さないし、適材適所なのは確かだけどwhy?!ってなりますわな、きっと。
しかしそんな驚きはまだまだ序の口。本作で待ち受けているのはややアウトなストーカー癖といじらしくて可愛いほっこりラブ、さらには疾風怒涛のギャグラッシュ。新しい年を笑って楽しく迎えたい、そんな方にオススメの一冊です。
頑張り屋だけどストーカー癖の強い抜け忍参上
恍惚とした表情を浮かべ、天井から想い人に熱い眼差しを注いでいるのは抜け忍・紅丸（べにまる）。森で倒れていたところを助けられて以来、領主である獅之介（しのすけ）にベタ惚れした彼は本業で培った能力をフルに活かして密かにご恩返しをしています。
傷んだ筆や硯を取り替え、着物のほつれを縫い、部屋の掃除をして。少しでも役に立ちたい一心で行動する紅丸はいかにも恋する乙女そのもので、見ているこちらまで微笑ましくなるほど脳内がお花畑です。しかしさすがにひと月もの間この状態が続いたら、不気味に思わない方がおかしいというもので…
案の定、純粋で真面目な性格の獅之介は敵の仕業ではないかと怪しむ始末。
それでも恋する気持ちは止められず、「こんなことはもう終わりにしなければ」と悩みつつも暴走していく紅丸。ついには大胆に近づいてしまい、目を覚ました獅之介にあっさり身バレ。
その後、彼の計らいで城に住むことを許され、自由を与えられた紅丸は自分のやりたいことについて改めて考えます。
紅丸の本当にやりたいこととは何か？
それは獅之介様を見ていたい、お傍にいたい、生涯添い遂げる誓いを立てて、墓までご一緒したい。そんな強烈すぎる恋心と体に染みついた忍びの性が合わさった結果…
獅之介様の褌を隠れてゲットォーーー！しかも使用済み！YES！
思わずズコーッ！といきたくなる
…いかがですか、この展開。
破天荒ながらも一瞬で分かるベタな笑い。この妙に懐かしいノリにハマる30代、40代はきっと多いのではないでしょうか。ひたむきに底抜けにポジティブに、思いっきり道を踏み外している紅丸があまりにも体当たり過ぎて大変お茶目。クスッとさりげなく笑うよりもズコーッと全力でコケたくなるのは自分だけではないはずです。
さらに紅丸の想い人である獅之介様の方も、真面目な性格ならではのすごい返しをしてくるので油断できません。他人に使用済みの褌を盗まれたと知った時の彼のリアクションがこちら。
やっぱしズコー―――ッ！
脇を固める仲間たちも笑いに貪欲
また、トンデモ忍者・紅丸と天然スパダリ領主の獅之介様という黄金タッグに加えて、途中から味変といわんばかりに投入されるツッコミ役の後輩忍者・蒼太（そうた）もＷボケをより一層輝かせる存在です。
ボケ渋滞で収拾がつかなくなる前に素早くツッコんでくれる彼のおかげでどれだけ笑わせてもらったことか。
ついには獅之介様の父上も参戦し、いつしかボケ多めの演劇集団のような体制でどんどん笑いを量産。怒涛のギャグラッシュはもちろん、このチームがまたほんわかムードで良いんですよね。誰一人として歪んだ悪人がおらず底抜けにポジティブで、なんだかんだいってお互いを思いやっていて、それでいて全員が全員クレイジーで。
そんな新たな家族の形に癒されるとともに、二人の恋を温かく見守る忍びBL。コミカルな要素が多いのでギャグ漫画だと誤解されるかもしれませんが、笑いの合間合間にきっちりラブパートもいくつか織り込まれており、恋のほろ苦さも甘さも存分に楽しめる内容になっています。割合でいうと笑い７：恋２：エロ１ぐらい。
年明け早々、実家のコタツと会社のデスクの差に愕然としている方、休み終わりでもうすでに元気が出ない方はぜひお手に取ってみてください。筆者の笑いのセンスが足りないせいで作品の良さがイマイチ伝わっていないのが残念で仕方ありませんが、それでも騙されたと思って読んでみて欲しいです。騙してないから。本気だから。
