カップルには山あり谷あり、絆あり。当たり前の日常が愛しくなる同棲物語『逃げても逃げても』

レビュー

なんとな~く気持ちがモンモンして、友達との約束をドタキャンしてみたり、仕事をズル休みしてみたり、恋人からの連絡を無視してみたり……。
 
なにか大きな不満があるワケでもないけれど、なんとなく今の日常から少しだけ逃げてみたくなる。そんなことって、たまにありませんか。私ある。たまにどころかめっちゃある。
 
仕事に、友人に恋人に家族に今ある人間関係に、目の前の日常に、ふとイライラもやもやとしてどこかに逃げ行ってしまいたくなる。

そんな現実逃避の願望は、『逃げても逃げても』に出てくる同棲中の仲良しカップルにも訪れてしまうみたいです。
 
まずは、そんなふたりの日常生活をごらんください。
 

逃げても逃げても
©ねむようこ/小学館
 

仲良しカップルの日常にも、いろんな「もやもやイライラ」がある

 
サキちゃんとみいくんは、付き合って5年、同棲して3年の仲良しカップルです。
 
マイペースで少しだけ気性の荒いサキちゃんと、ほんわか優しく穏やかで植物のようなみいくん。この本を2ページ読んだだけで、ふたりの相性のよさが伝わってきます。
 

 
でもそんな2人だって、互いに、日常に、モヤモヤすることはもちろんあります。
 
漫画家のサキちゃんは、締め切り前やネーム作成中はついイライラ。
みいくんの気遣いやちょっとした絡みもウザったく感じてしまったり。
 

 
今すぐ結婚に踏み出す気はないそぶりを見せつつ、みいくんが結婚の先延ばしを検討し始めるとふてくされたり(勝手!)
 

 
一方、デザイナー会社員のみいくん。
 
日々の仕事にただ追われる自分と、慌ただしくもキラキラと漫画に打ち込むサキちゃんを比較して落ち込んだり。
 

 
本当はもっとコミュニケーションをとりたいのに、忙しくてマイペースで自分をほったらかしにしがちなサキちゃんに、ちょっと寂しさを感じてしまったり。
 

 
本当にふとした瞬間、ささいな出来事をきっかけに、「この日常から逃げてしまいたい」なんて衝動がふたりにポツポツと訪れます。
 

 
そうそう、逃げるのって簡単ですし。
 

<それでも、また戻ってこられる”当たり前の日常”がある幸せ

 
互いにもやもやして、つい日常から逃げだしたくなってしまったとき。
 
ふたりはちゃんと向き合って、本音を伝え合って、解決策を話し合って……という様子はまったくありません。
 

 
少しの時間と、少しの気分転換と、ふたりのふわふわとした何気ない会話を経て。
 
ふたりはまた、絆をバトンに、仲良しで穏やかな日常にスルリと戻っていきます。
 

 
仕事も、恋人も、日常も。
逃げたら、そのままなくなってしまうモノもあります。
 
一方、なんとなくつらい現実からふと逃げてしまったとしても、気付けば隣にいてくれる大切なモノもあります。サキちゃんとみいくんは、まさにそんな感じ。
 
また戻ってきたくなる場所があるから、たまには逃げたくなったって大丈夫だと、ちゃんとお互いが分かっている。ふたりには、ちゃんと絆があるんですね。
 

 
なんて事のない、当たり前の日常。
近くにあるモノ、そばにいてくれる人。
 
『逃げても逃げても』は、そんな”当たり前”を、改めて大切に想わせてくれるような漫画です。
 
サキちゃんみいくんから、ぜひほっこりのおすそ分けをしてもらってくださいね。
 
はぁ~こんな同棲してぇ~。
 
 
逃げても逃げても/ねむようこ 小学館