最近流行りのボードゲーム!始める前に読んでおきたい『放課後さいころ倶楽部』

レビュー

皆さんは「ボードゲーム」で遊んだことありますか?

最近はテレビの情報番組でボードゲームが遊べるカフェが取り上げられるなど、その熱は静かに増してきています。

トランプや人生ゲームであればそのシンプルさゆえ、誰もが一度は遊んだことがあると思います。
一方ボードゲームは、それらよりはもう少しルールが複雑だったり、独特な世界観を持っていたりしてたくさんの種類があるのが特徴です。

有名なものだと「カタン」や「カルカソンヌ」。
非電源系ゲームというくくりでとらえると、数年前に流行した「人狼ゲーム」なんかも含まれます。

今回紹介するのは、そんなボードゲームをテーマにした珍しい漫画『放課後さいころ倶楽部』です。

放課後さいころ倶楽部
©中道裕大/小学館

ボードゲームで遊びまくる女子高生たち

『放課後さいころ倶楽部』の舞台は京都。主人公はボードゲームが好きな女子高生たち。

引っ込み思案な性格の主人公の「美姫」は天真爛漫なハツラツ少女の同級生の「綾」や優等生の「翠」と出会い、ボードゲームを通して交友を深め、成長していきます。

作中では毎話様々なボードゲームが登場し、それらで遊ぶ様子が描かれます。

老舗ボードゲームショップのすごろくやが協力していることもあり、出てくるボードゲームは実際に存在するもので、どれも本当に面白いゲームばかりです。

引っ込み思案だけど洞察力には優れていたり、常に冷静でいることができたりと、主人公たちの性格によってボードゲームに得意不得意が見られるのも面白いところ。
そう、ボードゲームの多様さは、そのままどんな性格の人でも得意分野を持てることに繋がるのです。

また、主人公たちのうち1人はボードゲームデザイナー(ボードゲームのルールやデザインを考える人)志望で、作中ではオリジナルなボードゲームをつくる話もあります。
実は筆者の僕もボードゲームデザイナーなので、描かれる苦労話のリアリティにはウンウンここが難しいんだよなとうなずいてしまいます。

なかでも面白かったのは、「“だるまさんが転んだ”をどうすればもっと面白くできるか」という話。
子供向けのゲームをどうすれば大人も熱中できるようなルールにできるか、という思考実験は、知的好奇心をツンツン刺激されるものでした。

見事に描かれる、ボードゲームのすばらしさ

当たり前ですが、ボードゲームは基本的に1人では遊べません(1人用ゲームもありますが)。

そのため、遊ぶには複数人が同じ時間に同じ場所で集まらなければなりません。
なので、いざやろうとすると結構面倒なのですが、裏を返せば「他者貢献感」が得られやすいという大きなメリットも持っています。

『嫌われる勇気』などで有名になったアドラー心理学によれば、人間は他者貢献感(自分が他者に貢献できているという感覚)を持つことでハッピーになれるそうです。

どんなに楽しそうだとしても、4人用ゲームを1人で楽しむことはできません。
4人が集まることで、初めてその楽しさを味わうことができます。
ボードゲームで遊ぶと、そんな「場の楽しさに貢献できている感覚」を無意識のうちに感じられます。だから、勝っても負けても最終的にはハッピーになれるのかなと思います。

『放課後さいころ倶楽部』は、そんなハッピーさが、よく描かれている漫画です。
作中のゲームで遊ぶ人たちはとにかくみんな楽しそうにしています。

本作のいいところは、そんな登場人物たちの楽しさを僕らも忠実に再現して体験できてしまう点にもあります。作中で登場するゲームは全部、実際に買って遊べるものなのです。

最近人気が出始めているボードゲーム。遊びたいけど、どれで遊べばいいのか分からないなーと思っていた方は、この漫画をぜひ読んでみてください。
気になるゲームが見つけられると思いますよ。

放課後さいころ倶楽部/中道裕大 小学館