『ゆるキャン△』あfろ先生のデビュー作『月曜日の空飛ぶオレンジ。』がカオスすぎる件

レビュー

あfろ先生といえば、言わずと知れたキャンプ漫画『ゆるキャン△』の作者。2018年に放送されたTVアニメのヒットをきっかけに、原作の漫画を読み始めた人も多いことだろう。
 
だが、古参アピール乙と言われるのを覚悟の上で、ここは声を大にして訴えたい。
 
あfろ先生の漫画、『ゆるキャン△』以外も面白いから読んでください!!!
 
『ゆるキャン△』と同じ、山梨県が舞台の『mono』。『魔法少女まどか☆マギカ』のスピンオフ『魔法少女ほむら☆たむら ~平行世界がいつも平行であるとは限らないのだ。~』。死後の世界「煉獄」を描いた『シロクマと不明局』。日常ものはもちろん、シュールなギャグ漫画やSF漫画も手がける作風の幅の広さに驚かされる。
 
その中でも今回は、あfろ先生の記念すべきデビュー作、『月曜日の空飛ぶオレンジ。』を紹介したい。

 

月曜日の空飛ぶオレンジ。
©あfろ/芳文社
 
ひと目でキャンプ漫画と分かる『ゆるキャン△』と違い、本作はタイトルと表紙だけではイマイチ内容が分かりにくい。
 
でも大丈夫。本編を全部読んでも、どんな漫画なのかまったく分からないので。
 

「自由」とは、こういうことさ。

 
『月曜日の空飛ぶオレンジ。』は、2011年~2013年に「まんがタイムきららミラク」(芳文社)で連載されていた4コマ漫画。
 
「もっと自由に、4コマを。」というキャッチフレーズが示す通り、ミラクの作家陣の多くは漫画未経験のイラストレーターで、従来の枠にとらわれない独創的な4コマが数多く生み出された。
 
特に本作は、「自由」という点において、他の追随を許さない。
 

 
物語の舞台は、人口8万人の「六日島」。
 
緑豊かなこの島で、ツッコミポジションのななみ、いたずら好きのヨシノたちは、放課後に他愛ないお喋りをしたり、カフェに寄り道したりと、華の高校生活を送っている。
 
こう書くと『ゆるキャン△』と同じジャンルの作品のように見えるが、本作のキモは、六日島で起きる超常現象の数々にある。
 
例えば、道路脇にスイカの自動販売機が置かれていたり、
 

 
学校の先生がどう見ても人間ではなかったり、
 

 
部屋の中にボウリングレーンが設置されていたり、
 

 
朝起きたら、頭が箱になっていたり、
 

 
なんで? って、こっちが聞きたい。
 
「ストーリー」なんてものはおよそ存在せず、ミラク以外の雑誌なら連載が許されなかったのではないかと思うほどのカオスっぷり。さしずめ、「あfろ先生の頭の中」そのものを描いた作品といえるだろう。
 

「それ伏線だったの?」というまさかの展開

 
世間一般の常識が通じない六日島で、自由奔放なキャラクターたちがその場限りのテンションで暴れ回る本作。各話のオチも、だいたい投げっぱなしで終わる。
 
その中で唯一、シリアスな雰囲気を漂わせるのが、「ケーブル」にまつわる一連のエピソードだ。
 

 
ななみの近くにいつも垂れ下がっていて、引っ張るとタライが落ちてくる、コントでよくみるアレ。主に、ヨシノのいたずらを止めるために使われる。
 
「そもそもどこから垂れ下がっているのか?」ということには誰もツッコまないのも、本作のフリーダムさを象徴しているが。あるときを境に、冷蔵庫やトラックなど、落ちてくるものがだんだん大きくなっていく。
 
さすがに洒落では済まないレベルになってきたので、ななみはケーブルを引くのを自重するように。しかし、バイクの衝突事故に巻き込まれそうになったヨシノを助けるため、無我夢中でケーブルに手を伸ばして……。
 

 

 
ヨシノの安否は? 「ケーブル」とは何なのか? ここから先の展開は、ぜひ単行本を読んで確かめていただきたい。
 
作風はもちろん、絵柄も今とはだいぶ違っているため、「本当にあfろ先生が描いたのか?」と面食らう人もいるかもしれない。だが、緻密な作画、キャラクター同士のつかず離れずの絶妙な距離感などに、『ゆるキャン△』にも通じる作者のセンスを感じられるだろう。
 
また、「バイク」「犬」「太眉」など、作者の漫画には必ずといっていいほど盛り込まれている要素も、この時点で完備。「日常系漫画家」という一言ではとても言い表せない、あfろワールドの原点を体感してほしい。
 
 
月曜日の空飛ぶオレンジ。/あfろ芳文社