平成感ある〜!! こういう青春時代のマンガを気軽に読めるのはいいですよね。 GALS読みながら平成カルチャーを思い返してみる的な。

レビュー

ああ、平成が終わる。
 
ガラケーはスマホになり、消費税は8%になり、「いいとも」が「めちゃイケ」が、「おかげでした」が終わり、SMAPが解散し、安室ちゃんが引退する。
 
平成元年に生まれた筆者はまさに平成ど真ん中世代。自分のアイデンティティのひとつが終焉を迎えるにあたって、ふと思い出したことがある。
 
それは……ギャル。

 
現在のアラサーが思春期を迎えていた当時、流行の最先端にいたのは渋谷のギャルたちだった。厚底ブーツ、ハイビスカスにアニマル柄、メッシュ、ギャル語……。
巡り巡ってリバイバルを現在起こしているコンテンツも少なくない。
 
さて、みなさんは一時代を築き上げたギャル文化を主軸に描いた、笑いあり涙あり恋愛ありの伝説的な少女漫画があったことを覚えているだろうか。
 
そう、それが藤井みほな先生の『GALS!』だ。

渋谷のコギャルが繰り広げる鉄板青春ストーリー

 

GALS!
©藤井みほな/集英社
 
主人公の寿 蘭(ことぶき らん)は渋谷の若者たちを執り仕切っている高校生。
 

 
口も悪いし勉強もできないし、そもそもギャルだし(当時、ギャルはいわゆる「最近の若者は……」とニュースでよく揶揄される存在だった)、けれど情に厚く、弱きを助け、悪をくじく正義漢。
 
『GALS!』は、そんな彼女と、彼女の仲間たちが渋谷を中心に巻き起こるトラブルをアツい拳と言葉で解決していく鉄板青春ストーリー。
 

 
女を食い物にする男、援助交際をせまるおじさん、スジを通さないライバルのギャル、パワハラ教師……街にはびこるさまざまな「悪」を、社会の鼻つまみ者的な立ち位置のギャルが、ばったばったと薙ぎ倒していくさまが見ていてメチャクチャ気持ちいい。
 

 
運動神経オバケなのですぐに手や足が出る。いつも厚底の靴で平気で大立ち回り。
 
体幹どないなっとんねん。

ギャルにもいろいろあるんです。

 
主人公の蘭を筆頭に、物語の中心人物となるのがアイドル系ギャルの山咲 美由(やまざき みゆ)とキレカワ系ギャルの星野 綾(ほしの あや)。
 

 
いまでこそ蘭の兄で警察官の大和とラブラブな家庭的な美由だが、以前は補導常習犯の不良だったり。
 

 
綾は綾で、学年トップクラスの優等生でありながら、厳しい親へのプレッシャーから大きく道を踏み外しそうになったり。
 
中心人物以外にも、みんながみんないろんな重苦しい過去や悩みを持っていたり。
 
もちろん少女マンガなのでフィクションや誇張した表現はあるんだろうけど、親との不仲や、グレて周囲に反抗し続けた過去、学業でぶつかる大きな壁や進路、イジメなどの問題は、割と身近に転がっていた問題な気がする。
 
若々しいがゆえにスルーしたりごまかしたりできなくて、にっちもさっちもいかなくなって……。

もちろん胸キュンな恋愛も!

 
とはいえそこは少女漫画の金字塔、りぼん掲載作品。しっかり恋愛だってある。
 

 
クールな眼差しの乙幡くんは、「スーパー高校生グランプリ」1位に輝く、いまでいう雑誌の人気読モ高校生。
 

 
愛嬌のある笑顔が魅力的な麻生君は「スーパー高校生グランプリ」で次点だったことから「2位」という不名誉なあだ名をつけられる三枚目キャラ。いい奴なのにね……。
 
ぎゃーぎゃーうるさいが求心力はバツグンの蘭、彼氏がいるもののその可愛さで注目を浴びる美由、乙女らしく少し引っ込み思案な綾。誰と誰が結局くっつくのか? 複雑な恋模様にも注目したい。
 
しかし『GALS!』の男子たちは高校生なのにやたらと大人っぽいし、すぐオールするし、湘南とか好きそうだし、シティボーイ感がすごい。渋谷ってこれがフツーなの?
 

自分がコレだ!って思った生き方を選んでる?

 
当時、筆者にとって蘭たちは流行の最先端をいくお姉さんだったわけだが、別にギャルそのもののになりたかったわけではないし、実際なっていない。
 
作中でギャルたちが、床に直座りで胡座をかいたり、ドラッグストアの試供品でフルメイクしたりする行動には昔も今も「う〜〜〜ん」と苦笑。
 
なのになぜか『GALS!』自分にとって忘れられない漫画になっている。
 
それはきっと蘭たちが、自分の生きたい場所で、自分の生きたいスタイルを貫いているから。
 

 
渋谷のギャルであることに誇りと自信を持っている蘭の言葉はやっぱり強い。
ビッシバシに強い。もう作中の彼女たちとは倍近くも歳が離れてしまったけれど、何度読み返しても、あの天真爛漫な顔で聞いてくるのだ。
 
「お前は『自分がコレだ!』って思った生き方を選んでるか?」と。
 
痛快でわかりやすいストーリー展開や、ギャルの派手な生活ばかりが目立つが、じつは何に信念をおいていきるのかということを常に問いかけてくる名作。
「派手なオンナはちょっと……」と思うなかれ、気づけば蘭たちギャルの清々しい生き様に夢中になっているかもしれない。
 

 
いつか自分も「自分の生きる道はココ!」と自信を持って言えるようになりたいな〜。
 
 
GALS!/藤井みほな 集英社