知られざるハッカーの世界!『王様達のヴァイキング』

レビュー

知られざるハッカーの世界!『王様達のヴァイキング』

王様達のヴァイキング
©さだやす/深見真/小学館

あまり触れられることが少ないIT業界の舞台裏を描いた『王様達のヴァイキング』。
本作品ではIT業界の中でもさらに特殊なハッカーと投資家という2つの立場からみる世界が描かれています。

主人公は18歳の天才ハッカー是枝一希と仕事中毒のエンジェル投資家坂井大輔。

人とうまく接することができず、何をやってもうまくいかなかった是枝一希はある日坂井大輔と出会うことで、世界征服を目指すことになります。

世界征服と言っても、それはもちろんIT業界での話。
ただ、話が進むうちにどんどんスケールは大きくなっていくので、もしかしたら、最後は本当に世界征服してしまうのかもしれません(笑

それはさておき、本作品の魅力は何といっても、是枝一希が不器用ながらも、個性的かつ様々な立場の人々と接しながら少しずつ成長していく過程での心の葛藤や悩み、そして決意が絶妙に表現されている点です。
18歳の青臭い感情の移り変わりなどは、ハッカーとは無縁だった筆者でも、何となく懐かしく、歯がゆい気持ちになったりします。

また、それを厳しくも暖かく見守る坂井大輔とのやり取りも大きな魅力の一つ。
時には感情をむき出しにして激しくぶつかり合うので、気持ち良いやらもどかしいやら、複雑な感情を抱きつつ、ついつい読み進めてしまいます。

もちろん、そうした人間模様だけではなく、ハッカーと投資家、そしてサイバー捜査官やハッキングの黒幕といった普通の人にはあまり馴染みの少ない世界で起きている出来事を
知識のない人にもわかりやすく、ただ臨場感が失われないように、実際に起こっていることに近しいであろう形で表現されているのも見逃せません。

先日、某仮想通貨取引所がハッキングに合い、大量の通貨が流出した事件が大きな話題となりましたが、本作品を読んでいると、ひょっとしてその舞台裏ではこういった人たちが人知れず戦っていたのかも?と想像力を掻き立てられてしまいます。

2020年度から小学校でプログラミング教育が必修化されることが決まっており、職業としてもますます注目される存在となってきてはいるものの、縁遠い世界だと思って敬遠している人も多いと思います。
しかし、一方でITの普及により意外と自身の生活に密着した身近な世界だったりするのも事実です。

筆者も長くIT業界にいますが、その舞台裏をここまでドラマチックに、そして情熱的に表現している作品は少ないような気がします。
そんな世界をまずは漫画で覗いてみませんか?

王様達のヴァイキング/さだやす/深見真 小学館