その才能に誰もが嫉妬し、賞賛する『響〜小説家になる方法〜』

レビュー

キレ者の頭脳キャラや、他を寄せ付けない天才キャラが出てくる漫画が好きだ。
例えば『NARUTO』でいうところのシカマルのような、『アイシールド21』でいう蛭魔妖一のような。ジャンプ漫画に偏ってしまったが、他にも『3月のライオン』の宗谷冬司もそこに当てはまるだろう。

響~小説家になる方法~
©柳本光晴/小学館

そんな天才キャラの中が出てくる漫画の中でも、今一番注目しているのが『響〜小説家になる方法〜』。
主人公はとにかく文才に秀でた少女、響。その天才ぶりが爽快で仕方ないのだ!

とにかく天才で仕方ない

物語は、ある文芸誌の新人賞に応募された作品『お伽の庭』が入社3年目の編集者・花井の目に止まったことから始まる。

ウェブからの応募が必須だったはずが、『お伽の庭』は原稿用紙に執筆され郵送での応募。当然対象外となる作品は封も開けてもらえずゴミ箱行きになるはずだった。
出版不況と若者の活字離れを「スターが現れる前兆」だとポジティブにとらえる花井は、ふとゴミ箱行きの原稿の封を開けた。

もちろんこの『お伽の庭』の作者が主人公・響の作品であることは言うまでもないのだが、一般読者も、作家をも魅了する表現力と文章力に驚くことになる。

そう、とにかく天才なのだ。

暴力的で協調性がないキャラクター

そこまで全ての人に天才を賞賛される響だが、そのキャラクターは暴力的で、驚くほど協調性がない。

高校の文芸部に入部希望をした際には、部室にたむろしていた不良の先輩に臆することなくボールペン片手に売られたケンカを買うし、

やる気がなく、怠慢な態度で接する顧問には歯向かう。
空気を読まず自分の好き・嫌い、やりたい・やりたくないで物事を判断する様子にも爽快さを覚える。

いくら天才と言われようと本人はどこ吹く風。
ただただ自分の書きたい文章を書いているだけなのだ。
ここまで素直に忖度せずに生きられたら……と羨ましさを覚えてしまうシーンがとにかく多い。

同時進行する部活仲間との友情

響が小説家として成長していく最中、同時進行で同じ部活の仲間と友情を築いていく様子にも注目していきたい。
響の所属している文芸部には響含め、5名のメンバーがいる。

その中でも部長の凛夏(りか)は物語の展開に大きく関わってくる人物だ。

ネタバレになるので多くは語らないが(ひとつひとつの展開でびっくりして欲しいんだもん)、見た目の派手さとは裏腹に周りより秀でた小説の才能を持ち、昔から多くの文芸に触れてきた凛夏。

彼女もまた、響の作品に触れる度にその才能に感情をゆさぶられる。ストーリーが進むに連れてだんだんと距離が縮まっていく響と凛夏の関係にも注目して読み進めてもらいたい。我が道を行く響に対して、人間らしく感情がゆさぶられる凛夏を見ていると少し安心するが、響のバケモノ具合がより際立つのだ。

まるで無敵のサイボーグのような響の才能は、正直現実離れしすぎている。
しかしもしもの世界があったら、響の紡ぐ作品に触れてみたいと心の底から感じてしまう。

今年9月には欅坂46の平手友梨奈さんを主演に映画化も決まった本作品。
ぜひ一気読みして、ありえない天才のいる世界線を垣間見ていただきたい。

響~小説家になる方法~/柳本光晴 小学館