虚々実々の歴史ミステリー・エンタテインメント! 宗像教授に民俗学を教わりたい! 

レビュー

知的興奮を味わいたい!
歴史の謎に迫る漫画を読みたい!
荒唐無稽な神話や伝説の影に隠れた歴史の真実を知りたい!
繋がらなかった二つの謎がパッとつながる瞬間が好きだ!
歴史のそこここに潜むあやしいもの、オカルト風味が好きだ!
 
そんな人に私がおすすめしたいのが『宗像教授』シリーズです。

宗像教授伝奇考 完全版
©星野之宣/小学館
宗像教授異考録
©星野之宣/小学館
 
主人公・宗像伝奇(むなかた・ただくす)は、東亜文化大学の教授。古代製鉄文化を専門分野とする民俗学者で、研究のために日本全国、ときには世界各地を飛び回ってフィールドワーク(現地調査)を行うのですが、(なぜか)彼の眼の前で起こったさまざまな事件を解決しつつ、その土地に古くから伝わる神話や伝説、歴史上の謎に挑み、大胆な仮説を展開していきます。
 
たとえば、『宗像教授異考録』第1巻の内容は、こんな感じ。
 
『宗像教授異考録』第1集(星野之宣)「巫女の血脈」
 

 
・縄文時代「遮光器土偶」の不思議な顔、とりわけ特徴的な大きな「目」の謎を、青森の「イタコ」の老婆との出会いから宗像が解き明かす「巫女の血脈」
 
『宗像教授異考録』第1集(星野之宣)「百足と龍」
 

 
・「巨大なムカデと竜の戦い」の伝説が残る地には、なぜか金属採掘民の足跡がある……調査の末に、ある戦国の天才軍師の実像が浮かび上がってくる「百足と龍」
 
『宗像教授異考録』第1集(星野之宣)「天平のメリー・クリスマス」
 

 
・8世紀、西方から渡来した“羊太夫”と呼ばれる男と、厩戸皇子(聖徳太子)の出生の謎をさぐるうちに、古代日本に隠された禁断の秘密へとたどりつく「天平のメリー・クリスマス」
 
『宗像教授異考録』第1集(星野之宣)「天竺鶏足記」
 

 
・インドの旅の途中、巨大な鳥の化石との出会った宗像教授が、仏陀入滅と弥勒信仰の謎に迫る「大天竺鶏足記」
 
などなど。
宗像教授は、民俗学など人文科学の範疇にとどまらない、豊富な知識と、想像力を駆使して、一見全く関係ない伝説や歴史的事実に共通点を見出し、その裏に隠された真実を解き明かす「仮説」を打ち立てていきます。
 
まさに、「目からウロコ」です。
 
もちろん仮説ですから「信じるも信じないもあなた次第」なのですが、宗像教授の説には「もしかしたら本当にそうかもしれないな」という説得力があります。
 
このシリーズの凄いところは、本来なら長編連載が作れそうな凄いネタ、面白いアイデアを、惜しげもなく毎回、短編や中編に投入して、珠玉のエピソードに仕上げているところ。
誰もが知る「かぐや姫」や「浦島太郎」、「花咲爺さん」といった童話や「河童」「天狗」といった妖怪伝承から、古代中国の人型戦闘兵器、「日本のアトランティス」瓜生島のように知る人ぞ知るといった伝説も数多く登場する本作。
宗像教授は、自らの専門分野である製鉄文化の伝播の研究のかたわら、奇っ怪な伝説の真相にせまり、古来の神話や伝説の後ろに見え隠れする古代史の真実に迫っていきます。
こう書くと「難しいんじゃないの?」と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、ご心配は無用です!
きちんと作品内で説明されていますので、立ち止まることがなく読み進めることができますし、気になった伝説を調べて再読すると、さらに深く楽しむことができます。二度も三度も楽しめる、奥深い作品だといえるでしょう。
 
これを読んで「面白そう」と思った方。
『宗像教授伝奇考 完全版』が全8巻、『宗像教授異考録』は全15巻あります。めくるめく知的エンターテイメントの世界にどっぷりと沈み込むことができるんですから、まだ読んでいない方は本当に羨ましい!
 
そして、『宗像教授』シリーズを全巻読んでしまったけど、まだまだ読み足りない!という方には、『宗像教授異考録』のヒロイン・忌部美奈が登場する姉妹編『神南火』(かんなび)もオススメします。
 

神南火
©星野之宣/小学館
 
あー、学生時代、宗像伝奇教授に「民俗学」を教わりたかったなあ!
 
 
宗像教授伝奇考 完全版/星野之宣 小学館
宗像教授異考録/星野之宣 小学館
神南火/星野之宣 小学館