人界と異界が混ざり合って超バイオレンス!でも読んでスカッとするのが『血界戦線』だ!

レビュー

アニメをご覧になった方も多いであろう『血界戦線』。私は観ました。
1期のオリジナルストーリー、いいですよね。ボーイミーツガールって感じで。
私もあんな青春したかったなぁ…。観てない方はぜひとも。

さて「私もあんな青春したかったなぁ…」と言ってはみたものの『血界戦線』の世界は超バイオレンス。正直、一週間もあそこで生きていられる自信がない。
そんな場所で、主人公たちは暮らし、闘っている。そこでは生活の全てが活劇になる。
今回この記事で、その危なすぎる世界観、そしてその魅力が少しでもお伝えできればいいな、と、思っている。

血界戦線
©内藤泰弘/集英社

舞台は元ニューヨーク、現「ヘルサレムズ・ロット」。
異界との接触により一夜にして崩壊、再構築された街だ。
そこでは日々超常現象が起こりまくり、人類も異界人も関係なく、混じり合うように生活している。

とても「平和な場所」とは言えない。超常的な犯罪が横行し、現世ではありえないことが当たり前のように起こり、家の外へ出ることすら危ない…というか家の中にいても危ない、そういう場所。

そんな街で暮らすのが主人公、レオナルド・ウォッチ。
見た目はごくごく普通の少年だが、彼の眼には秘密がある。
過去、妹とともに遭遇した異界人の手によって「神々の義眼」と呼ばれるものを移植されたのだ。
そしてそれは、妹の視力と引き換えの産物だった。
そのことに責任を感じていたレオは、異界に近い場所であれば妹の視力を元に戻す方法が見つかるかもしれないと、ヘルサレムズ・ロットに住むことに。

そして出会うのが、街の均衡を秘密裏に守る「秘密結社ライブラ」。
一瞬で世界が変わってしまうような事件を処理し、一瞬で世界が終わらせてしまうような異界人と毎日のように闘っている組織である。

とある事件に巻き込まれ、それを解決するのに一役買ったレオ。
その様子を間近で見ていたライブラのリーダー、 クラウス・V・ラインヘルツからライブラメンバー入りのオファーが。
それからレオは、ライブラの一員として、様々な事件に身を投じていくことになる。

さて『血界戦線』の世界は、最初にも書いたが、とにかくこれでもかととても非常にバイオレンス。
「魑魅魍魎が跋扈する」と表現したくなる街、そこではなんでも起こる。
ほんと、道端の段差にちょっとつまずいて転ける感覚で、死ねる。
比喩ではなく、死ねる。命がなくなる。
『血界戦線』を読んでいると「あ、雨降ってきたから洗濯物取り込まないとな…」という、我々の普通の暮らしが奇跡なんじゃないかと思えてくる。

そのバイオレンスっぷりを、さあどうやって紹介しようかと考え、今回『血界戦線』全10巻の中で、死んだキャラの数をカウントしてみた。
「あ、これ死んだでしょ…」と思ってしまう、直接的じゃない描写も含みます。

合計は211人でした。
内訳はこちら。
・1巻 26人
・2巻 10人
・3巻 89人
・4巻 43人
・5巻  0人
・6巻 26人
・7巻  0人
・8巻  1人
・9巻  8人
・10巻 8人

さきほども書いたように直接的な描写のない人物もカウントしているため、おおよその数字ではあるが、しかし中々の人数ではないか。
さらにここから「ストーリー上、重要ではない死」つまりモブキャラが事故的に死んでしまった場面もカウントしてみた。そちらは合計33人だった。
数えていると怖くなってくるので、オススメは出来ない調査だ。

中には0人という巻もあるが、それは本当に一切描かれていないというだけで、画面の向こう側の世界ではだいぶやられているだろう。
ヘルサレムズ・ロットがどういう場所なのか、少しは理解していただけただろうか。
(ちなみに『血界戦線』のセカンドシリーズである『血界戦線 Back 2 Back』は含んでいない。)

しかも、異界人たちの中にはその「死」、自身の命を絶たれることを楽しんでいるような奴もいる。
全く理解できない感覚だ。やべえよ異界人。やべえよヘルサレムズ・ロット。

何が起こるか分からない。タコ足に叩き落とされる可能性だってある。
そういう場所でレオを含むライブラの面々は闘っている。
ある意味、綱渡り。踏み外せば間違いなく終わる場面を、彼らは自身の力と仲間を信じて乗り越えていく。

『血界戦線』は、ここまでバイオレンスな世界観について語ってはみたが、しかし読んでいて気分がいい作品だと思う。スカッとする。
嘘みたいなこと、奇跡的なことが重なりまくって事件が解決する。
小難しい理屈が展開されるなんてことは、まずない。力技、勢いで全てをねじ伏せていく。カンフー映画のものすごいアクションシーンを見て「これこれ!これが見たかった!」と思ってしまうような、そういう気持ちに近い。

危ない世界を断固たる意志を持って、綱渡りのように、奇跡的に前進していくレオたちの活躍はハラハラドキドキ。
その、次の展開が分からない物語性こそが『血界戦線』の魅力だ。
世界観ありきである。この世界観じゃないといけない。いけないんです。
現実世界がこうなるのは嫌だな…と思いつつ、ほんのちょっと「こうなったら面白いのかもしれない」という憧れが、心の中に芽吹いてしまう。

血界戦線/内藤泰弘 集英社