おしゃべり主人公が意表を突く!新感覚ミステリー『ミステリと言う勿れ』

レビュー

みなさん、漫画のジャケ買い、してますか?
この作家さんの作品はもれなく揃えている!この漫画雑誌の作品は単行本で集めてる!
などなど、各々自分のルールで漫画を購入されているかと思います。

かくいう私は、お気に入りの作家さんの作品を買い集めつつ、ジャケ買いで新規開拓をしていくという楽しみ方。

今回ご紹介する作品は、ほわほわ頭のイケメンと「おや?」と考えてしまうタイトルに惹かれ、思わずジャケ買いした『ミステリと言う勿れ』です!

ミステリと言う勿れ
©田村由美/小学館

主人公・久能整(くのう ととのう)はごくごく普通の大学生。
カレー作りが大好きで、家にいる時は十中八九台所に立っているほどのカレーフリーク。しかし、彼はなかなか自分が作ったカレーを食べることができない(まだ食べているところを見たことがないです)。

なぜなら、作っている途中や食べようとしている時に、あらゆる事件に巻き込まれるから。

「おいおい!事件に巻き込まれるなんてありがちな設定だな!」
と思われる方もいらっしゃるでしょう。

いえいえ、「ミステリと言う勿れ」。
このお話は従来のミステリーのように事件が起きて、主人公の高い推理力でそれを解決していくような物語ではないのです。

整は感じたことを、なんでもかんでも口に出してしまうおしゃべりな性格の持ち主。
彼の饒舌っぷりが事件やトラブルを解決へと導いてしまうのです。
例えば物語冒頭、殺人事件の犯人として警察にマークされていた整。署に同行することを求められ、事情聴取されます。犯行時刻のアリバイを教えても、警察に疑われたまま。

しかし自ら思ったこと・感じたことを話し、警察官たちの話を引き出すことで、自分に罪を被せた人物を言い当ててしまいます。

そう、とにかくよく喋る主人公・整のとめどないマシンガントークはがこの作品の最大の魅力なのです。

トークの中には思わず「へぇ!」とつぶやいてしまうような小ネタも出てきます。

例えば

水中で溺れたときの対処の仕方や、

ゴミ捨てにまつわる夫婦ゲンカの原因と解決策など、生活の知恵となる知識が沢山出てきます。

こんなにためになるミステリー他にないと思いませんか。

作品のおもしろさを形作るもう一つの魅力は、ミステリーに欠かせない、先の読めない展開。

ある程度犯人の当たりをつけて物語を読み進めていくのですが、これがことごとく外れてしまうのです(私の読みが甘い?いや、そんなはずない!)。そのどんでん返しの巧妙さに、心の中で思わず「やられた!」と思ってしまうはずです。

「ミステリと言う勿れ」って言っているのに、連作ミステリーとしても相当クオリティが高いのです。

ミステリー小説が好きな方にも、自信を持っておすすめできます。

舞台もどんどん変わっていきます。人里離れた山奥にある古く豪華な洋館だったり、またある時は古くからのしきたりを重んじる相続争い真っ最中のお屋敷だったり。あれ、なんて王道ミステリー!

それでも今までにない読後感を味わえるのは、やはり整の軽快かつ意表を突くトークの力のたまものです。

どうしてこんなに知識豊富でおしゃべりなのかと不思議になるのですが、整のバックボーンについては現段階では触れられておらず。巻数が進んでいくうちに、徐々に解き明かされていくのかも!

『名探偵コナン』『金田一少年の事件簿』などのメジャーどころからは一線を画している『ミステリと言う勿れ』。
現在刊行されているのは2巻までと手が出しやすいのもポイント!ぜひこの機会にお手にとってみてください。

ミステリと言う勿れ/田村由美 小学館