読めば肉が食べたくなる! 女子たちが肉をガッツく姿にキュンキュン『肉女のススメ』

レビュー

なんのかんの肉ってウマい。

脂が甘くて柔らかい和牛、ミッシリと噛みごたえのあるオージー、じっくり煮込んでホロホロになった豚バラブロック、独特の臭みがクセになるマトン、疲れた時に食べると一気に元気になるニンニクたっぷりの馬刺し……。

ああ〜〜〜肉ってウマイな〜〜!!

数年前まではひとりで女が肉をガッツくなんて「はしたない」「女のくせに」とあまりいい目で見られなかったものだが、最近は「おひとりさま」がメジャーになり、ラーメンから焼肉まで幅広く食事を楽しめるようになって、本当によかったと思う。

小鳩ねねこ先生の『肉女のススメ』が生まれたのも、男女関係なく好きなものを気持ちよく食べればいいのだという潮流の表れなのかもしれない。

肉女のススメ
©小鳩ねねこ/少年画報社

肉を愛する3人の女たち

主人公はとあるデザイン事務所で働く3人の女。


「ガッツくように食べる」ことが原因で婚約者にフラれるという不憫な女・狼谷(かみや)さん。比較的、真面目で神経質な性格のため周囲からは「暗い」と思われがち。

愛らしいルックスで男性陣から人気の受付嬢、犬塚(いぬづか)さん。見た目とは裏腹に毒吐き女だし、隠してはいるが筋金入りのオタク。

アラサーの熊代(くましろ)さんは、キャリアも肉体もいい意味で脂の乗ってきたチーフ。年齢のせいか、友人たちの付き合いが減ってきたのが悩みのタネ。爆乳。

年齢もタイプも違う3人の共通点は、肉好き。

各々食事を楽しんでいた彼女たちが、ひょんなことから距離が縮まり、いつしか連れ立って肉を食べに行くようになったり、まあひとりでも肉に食らいついたりする。

強いて言えば『肉女のススメ』は可愛い女の子が夢中になって肉を食べる、それだけを描いた作品なのだ。

赤身肉のタンパク質がどうだとか、いい肉の脂は融点が……などのウンチクも全然ない。ただそこに肉があり、彼女たちが食べる、それがこの作品の真理なのである。

美味しそうに食べる姿が可愛いんだ!

数あるグルメ漫画のなかでも『肉女のススメ』は、食べ物それ自体の描写はそれほど詳細ではない。わりとデフォルメされて、実物よりもサッパリと描かれている。

そのかわり、食べているときの描写がとにかくいい。

食べ方を気にして「肉断ち」をしていた狼谷さん、深夜の肉に負けてがっつくこの表情……!無駄話もなく、一心不乱に肉を切っては口に運び、切っては口に運ぶ!!

しかも肉が来た瞬間にいそいそ髪の毛を縛るところが素直でツボ。

犬塚さんは好かない相手との食事に辟易して帰宅したのち、禁断とも言える深夜のカツカレーに雄叫びをあげ、

寒空から逃げるように入った定食屋さんの唐揚げには、カタブツキャラの熊谷さんも思わず頬がふにゃーんとゆるみ。

残業の合間、ポン酢&柚子胡椒や七味マヨネーズなどいろんな味でアッツアツの餃子を楽しみ……。

毎話毎話、さまざまなシチュエーションでさまざまな肉料理を楽しむ彼女たちの表情が、なんとも官能的で、愛らしくて、見ているだけでお腹が空いてきてしまう……!!

しかもこういう飲食モノ漫画って、ともすれば「美味しそうに食べる表情」からかけ離れて、品がない感じになってしまうことがあるなか『肉女〜』は食事シーンへのエロスを感じさせつつ、読者に「肉食いて〜!」と共感させる絶妙なライン取りの描き方なのだ。

自分の好きなものを思いっきり食べることの幸せ、ああ幸せ。

こんなに美味しそうにモリモリ食べてくれる女子がいたら、デートとかきっと楽しいだろうな……!

肉に特化し、アッサリした人間関係

狼谷さんが気になる同僚、犬塚さんの異母弟、熊谷さん行きつけのお弁当屋さん……、一応、何人かのサブキャラがいて話ごとに彼女たちと絡む回があるのだが、それぞれいい意味でドカーンとした進展がない。

異母姉である犬塚さんのことを家族愛と異性愛が混じり合った特別な思いで見つめる弟の学(まなぶ)くん、かといって禁断の愛……は始まらない。

グルメマンガという主軸を超えて主人公たちが恋愛などの私生活に埋没していくシーンが増えていくと「もっと食のシーンくれよ……」と悲しくなる筆者にとっては初めから終わりまで「女子たちが肉を食う」というコンセプトを貫き通しているあたりすごく安心する。

まあ、あえて進展が…と注目するサブキャラなら、社内きってのチャラ男、鷹木(たかぎ)くんかもしれない。

根暗で神経質な狼谷さんを「苦手なタイプだわ〜」と評価し、ついつい余計な事を言ってしまう彼が、とある出来事をキッカケに彼女を気にしはじめるのだ。

狼谷さんが肉をガッツく姿に完勃ちするという新たな性の扉を開いて。

「あんな女」と思いながらも、食べてるところにどうしようもなく惹かれていく彼はどうなってしまうのだ!がんばれ鷹木!あとあんまりいらん事を言いすぎるな!

読めば肉が食べたくなる

読んで「私も食べたい……!」と共感するのも勿論だが、個人的な楽しみ方は肉を食べる前に読む事だ。

肉料理を食べに行くと決めた夜、お店に行く前に『肉女のススメ』を読むと彼女たちの表情にノセられて「うおおお!はよ!はよ肉をくれ!!」と食欲5割増、確実にその日の肉が普段よりも美味しくなるのだ。ホントに。

自分が食べたいものを気持ちよく食べる彼女たちを見ていると、どうにもこうにもお腹が空くのは必至。

全世界の肉好きのみなさん、ぜひ一緒にこの作品をよんで肉欲(食べる方の)を高めてみませんか。

肉女のススメ/小鳩ねねこ 少年画報社