軽快なトークが気持ちいい!ラジオ好き必読漫画『波よ聞いてくれ』

レビュー

脳天をつくようなキレッキレのトークと、耳触りのよい声。
「これは映像化よりも、音声化して欲しい」
『波よ聞いてくれ』を読んだら、誰もがそう思うに違いないと思っています……。

 

波よ聞いてくれ
©Hiroaki Samura/講談社
 
本作は、ひょんなことからラジオパーソナリティーとなった主人公・鼓田ミナレの活躍を描く物語。
 

 
物語は、北海道のスープカレー屋で働くミナレが、たまたま飲み屋で出会った麻藤 兼嗣(まとうかねつぐ)に自身の恋愛のグチをこぼすところから始まります。ラジオ局のディレクターである麻藤はミナレのトークを密かに録音しており、ラジオに無断で流したことからミナレのパーソナリティーとしての一歩が踏み出されることに……。
 

 
いかにも胡散臭いこちらが麻藤さん。
1巻の冒頭から飲み屋で出会った見ず知らずの二人がべろべろに酔っ払う漫画、他に見たことないかも。
 

 

目で見ているのに聴こえてくる

 
冒頭にも書いたとおり、ミナレのトークはとにかく軽快。
不思議なことに、目で文字を見ているだけのに、実際に音が聴こえてくるかのようなんです。
 

 
例えば、麻藤と飲み屋で出会いパーソナリティーとなるきっかけとなったしゃべりがこちら。
恋愛における地方性を語るミナレ。
 
とにかく一コマにおける情報量が多すぎる……!!それがこの漫画の特徴であり、おもしろさを生み出すポイントなのです。
 
私は普段漫画を読む時にセリフを飛ばし飛ばし読むことが多いのですが、この漫画においては一字一句逃すまいと読み進めて、脳内再生をしてしまうんですよね。野球ネタ出されても全くわからないのにっ!
 

今一番友達になりたいキャラクター

 
本作の一番の魅力は、ミナレのキャラクター性にあるのではないでしょうか。
ミナレは「黙っていれば美人なのに……」というタイプの女性。
スープカレー屋のお客さんに余計な説明をして店長に怒られることも。
 

 
独り言にノリツッコミ。話していないと落ち着かない性分の彼女を見ていると、そのスピード感に圧倒されます。頭の回転が早すぎて見ていて気持ちがいい!
 

 

とにかくラジオが聴きたくなる

テレビ離れ、ラジオ離れが進んでいると言われている昨今。
IT技術の進歩とともに、個人で音声や動画を配信できるサービスも増えてきました。
日々の作業や車の運転、散歩なんかをしながら楽しめるコンテンツの幅に広がりを感じます。
 

 
『波よ聞いてくれ』はそんなメディアの過渡期を描いた漫画でもあります。
 
WEBやネットコンテンツの勢いを組んだ上で、既存のラジオをいかにおもしろく変えていくか。
ラジオ局のディレクター麻藤さんがミナレと共に挑戦していく姿にも注目です!
 
 
波よ聞いてくれ/沙村広明 講談社