読んで一足先に納涼!沖縄を舞台にした泥沼恋愛ホラー漫画『太陽の玻璃』

レビュー

異国情緒あふれる魅力に詰まった日本最南端の都道府県、沖縄。
 
独自の文化や風土は作り手の心をくすぐり、これまでたくさんの沖縄を舞台にした漫画が生まれてきた。
 
恋愛、青春、歴史モノ。そしてもちろんホラー作品も。

 
エメラルドブルーの海、色鮮やかな花々、カラリと晴れた青い空……
 
のような爽やか路線とは一線を画す、ホラー漫画を紹介しよう。
 
沖縄のとある小さな島を舞台に繰り広げられる、失恋・浮気・自殺・祟りの満塁ホームラン泥沼ホラー漫画、それが栗原まもる先生が描く『太陽の玻璃』なのだ。
 

太陽の玻璃
©栗原まもる
 

「16歳になったら、私をニンシンさせてよ」

 

 
主人公の金城 砂那枝(きんじょうさなえ)は16歳の誕生日を迎えた高校生。
 
16歳の誕生日は、砂那枝にとって初恋の人である9つ上の幼馴染、陸(りく)との大切な約束の日だった。
 
それは、砂那枝の処女を陸にもらってもらうこと。
 

 
陸ちゃんが進学のため上京する際、ゴリ押しで取りつけたのがこの約束だったのだ。
 
当時18歳の陸にとって、わずか9歳の砂那枝のお願いは「いつか忘れるだろう」程度の安易な約束だったのかもしれない。
 
しかし進学後、Uターンして陸が地元で漁師になってからも、砂那枝は彼を思い続けてきた。
 
そしてやっと16歳の誕生日その日、陸を迎えに行った砂那枝の前には、人魚のように美しい女性を抱える陸ちゃんの姿が……。
 

 

いつから不幸な女だと勘違いしていた?

 

 
陸が助けたのは、咲子という東京から来た観光客。聞けば、いままで散々な恋愛を繰り返してきた不幸な女。
 

 
陸とも意気投合してお酒を飲んだりするさまに、一時は警戒心むき出しだった砂那枝も、咲子の美貌と健気さに心を通わせていく。
 
しかし、じつは相当、咲子は腹の据わった女だったのだ!!
 
なんと咲子は、砂那枝の陸に対する気持ちを知っていながら、陸と結婚してしまうのだ。
 
いつから不幸な女だと勘違いしていた?
 

 
咲子「初めての恋で どうして陸が一番いいってわかるの」45pより引用
 
そして、陸を最後の恋の相手と定め、砂那枝の初恋を踏みにじって「幸せ」をもぎ取った咲子。
 

道を踏み外した砂那枝と陸ちゃん、そして……

 

 
1年の歳月が経っても陸を忘れられない砂那枝は、ついに陸に思いのたけをぶつけてしまい……。
 
砂那枝「もう陸ちゃんに会わずに暮らすなんてできない   「咲子の夫」でもいいから 手に入らなくてもいいから」(p62より引用)
 
ここからは怒涛の陸ちゃんダメ男ターンである。
 
咲子との幸せを標榜していながら、陸は砂那枝との関係に身を溺れさせていく。
 

 
当たり前の話だが、盲目的な恋は結局ハッピーエンドにはならないし、長くも続かない。
 
とある決定的なトラブルがきっかけで、陸と砂那枝はもちろん、陸と咲子の関係も、後味が悪いという言葉では言い表せないような破綻へと突き進んでしまう……。
 

きらびやかな沖縄の光景×うすら寒い怪談が織りなす名作

 
陸と咲子の破綻の原因をつくった重責から、愛する島を離れた砂那枝。
 

 
その後も2人の周囲で静かに起こる、不可解な出来事。
 
ストーリーは終盤に向かうにつれ、言いようのない恐ろしさをはらんだホラー展開へと転がっていく。
 
陸と砂那枝の罪深い恋のエンディングはどうなってしまうのか……。
 
本作品、いわゆる修羅場展開満載の恋愛漫画かと思いきや、気付いた時には怪談話のようにになっており。寒々しい恐ろしさや悲しさに包まれている。
 

 
元禄時代の事件がベースとなった物語『四谷怪談』や、江戸後期の読み本『雨月物語』の「吉備津の釜」のような悲しい女の情念を、あえてきらびやかな沖縄の風土にぶつけてきたこの世界観よ……!
 
きらびやかな沖縄の光景×うすら寒い怪談がつくりあげる隠れた名作を、ぜひ夏本番の前に読んでヒヤッとしてほしい。
 
 
太陽の玻璃/栗原まもる
 

プレゼント企画のお知らせ
こちらのまんが王国のTwitterアカウント(@okoku_hensyu)をフォロー&この記事の該当ツイートをRTすると、抽選で10名様にまんが王国で使える500円分ポイントをプレゼント!》
応募締切:7月6日(金)16:59まで
 
当選された方にはTwitterのダイレクトメッセージにて通知いたします。