今宵も我らは部屋に集って酒を飲む!女のリアルを愛らしく描いた『宅飲み残念乙女ズ』

レビュー

おかざき真里先生の『サプリ』しかり、東山アキコ先生の『東京タラレバ娘』しかり、尾崎衣良先生の『深夜のダメ恋図鑑』しかり、女はなぜいい歳になるとここぞとばかりに集まり、酒を飲み、人生について、男についてギャースカ喋りがちになるのだろうか。

筆者自身がアラサーになってわかったことがある。

ああああ〜〜〜〜女同士で集まって酒飲んで喋るの、めっっっっちゃ楽しい〜〜〜〜〜!!!!

仕事で見せる顔、男に見せる顔、いろんな場面で「外の自分」を形づくる仮面を脱ぎ捨て、女友達だからこそ話せる本音、見せられる醜態がある。何を飲んでもいい、どんな格好でもいい、どんなヤバい話も女同士だから受け止められる。

ストレス社会JAPANにおいて「女子会」は女に必要不可欠なのだ。

『凪のお暇』でお馴染み、女子の本音をゴリゴリに抉り倒してくるコナリミサト先生もまた、夜な夜な集う女子たちを描いた漫画を描いている。それが『宅飲み残念乙女ズ』である。

宅飲み残念乙女ズ
©コナリミサト/芳文社

女たちは週末、麦酒を片手に集う

主人公は敏腕デザイナーのグリっち、化粧販売員のゆみみ、そしてフリーターときどきプータローのてつ子。

職業もタイプも違う3人は、「週末デトックスの会」と称した飲み会を頻繁に開催している。といっても家でビールを飲みながら話すお手軽なものなのだが。

恋愛命のゆみみは男に振り回されがち。

仕事命のグリっちは日々の業務にストレスMAX。

ののほん夢追い人のてつ子も時には自分の将来を不安に思い……。

誰かが何か会った時、まあ何もなくても彼女たちは集い、ビールを喉に流し込み、ひとまずの不安や悲しみから解放されるのである。

ちなみにクリスマスもこんな感じなのである。

女の実態が生々しい!

4コマ構成でサラサラ〜っと読めるこの作品だが、中身は全然サラサラしていない。「特筆すべきことでもないけど、女の実態ってこんな感じ」が詰まりまくっている。

恋愛特化型の自己啓発本にハマる女と、「こーゆーの読んでる人って本当にいるんだ」とdisる女。しかも家に起きたくない装丁が多いことにまで言及するこのリアル。

ピンセットで皮膚を破いて、埋没毛を外に出してあげる作業の面白さとか。カミソリでムダ毛を剃る習慣のある人には超あるあるだよね、埋没毛の解放……。

ベッド周りは掃除しても、意外と詰めが甘いのが排水口の掃除。浴室の排水口に残った長髪から男の浮気を発見するリアルさとか。

そう、浮気を調べるためなら排水口に手を突っ込むことを女は厭わない……。

で、意外と仲のいい女同士はさっぱりドライ。目の前に仕事があれば飲まなくてもいいし、部屋の隅で仕事しててもぜんぜんOK。

そういういい意味での合理主義な感じとか、「あ〜わかるわ」という等身大の女子の姿が描かれていて、自分の抱える仕事や恋愛の悩みと気持ちよく同調できる。

サクっと登場する酒のアテが最高!

コナリ先生の作品には、サッとつくれて美味しそうな料理が頻繁に登場するのも読んでいて楽しみなところ。

じつは『凪のお暇』で話題になった「ハイボールチョコミントアイスのせ」はこの作品が初出だったりする。

唐揚げやイカフライなど、見切り品弁当のおかずを細く刻んでご飯と炒めて即席のチャーハンにするという、なんともウマそ〜な貧乏飯!

乾燥ワカメを刻んでつくるジャンクなナムル。乾燥ワカメにこんな食べ方があるとは思いもよらなかった。これはマジで今度作ってみよう。

土鍋まるごとでつくるユルヤワ〜〜な湯豆腐とか。豆乳とにがりだけでできる簡単なレシピなのに女子力高めの宅飲みにピッタリなメニュー。

さすがコナリ先生のメニューは女子のツボを心得てるな〜と思ってたら、幕間に殺伐としたレシピが登場したりする。

わかる……納豆と豆腐まぜるやつ……やるよね……。

嗚呼、女でいることって楽しいな

岩盤浴にいけば滴る汗を孤独な自分と重ねて涙し、

汗かいてデトックスした後は自家製のレモンサワーのうまさに咽び泣き、

カラオケの画面に表示される消費カロリーの実態を探るべく、激運動しながら歌って検証したり(やったことあるよね)、

念入りなお肌のお手入れの結果に大騒ぎしたり。

宅飲みで、あるいは近場の酒場で、お金も使わず安いお酒を飲んで笑い、泣いて騒ぐ。女友達との何気ない日常が、あまりに楽しくて愛おしい。

キラキラした女の子も、バリバリ働く女の子も、家に帰ればありのままの姿でデトックスしてるのかも。

リアルな彼女たちの姿を見ていたら、女友達を誘って飲みたくなった。

宅飲み残念乙女ズ/コナリミサト 芳文社