ヤンキー漫画の常識をくつがえした『今日から俺は!!』は、癒し系ほのぼの青春コメディーである

レビュー

『今日から俺は!!』という西森博之先生が描いた伝説的人気漫画をご存知だろうか。

最近でも、2018年10月から実写ドラマが放映することが話題となったため、名前だけでも聞いたことがある人は多いと思う。

しかし、本作を読んだことがない人たちからすると「あー、あのヤンキー漫画でしょ?」くらいの予備知識しかないんじゃないだろうか。いや、絶対そのはず。でもね。

それが、違うんです!!!

『今日から俺は!!』は、ただのヤンキー漫画ではないんです!!!

というわけで今日は、1人でも読者を増やすために、『今日から俺は!!』の魅力について紹介したい。本当にみんな読んでほしい。それくらい好きなんですよ……。

今日からツッパリ!!

今日から俺は!!
©西森博之/小学館

三橋貴志(みつはし たかし)と伊藤真司(いとう しんじ)は、ごくごく平凡な生活を送る高校1年生。しかし、千葉県にある軟葉高校への転校をきっかけにそれまでの「ノホホンとした生活にオサラバ」し、「ツッパリ」になることをそれぞれ決意する。

軟葉高校に入学する前日のこと。2人は、ツッパリにふさわしい髪型にイメチェンするべく訪れた床屋で初めて出会う。そして三橋は金髪に、伊藤はトゲトゲ頭に変身する。

そして登校初日、たまたま同じクラスに転入してきた三橋と伊藤は再会するやいなや、「お前、昨日まではダセー髪型してたくせに!」と言わんばかりにいがみ合い、教室で、屋上で、顔を合わせるたびに派手にケンカを始める。

しかし学校内で目立ちすぎた2人は、「もとからツッパッていらっしゃった」不良たちに目をつけられてしまうが、2人がかりで不良たちを撃退し、意気投合。

この瞬間、「軟葉高校の三橋と伊藤」の伝説コンビが誕生した。

本作はそんな彼らの青春と戦いの日々を描いた、ヤンキーコメディ漫画である。

「ヤンキー漫画」の常識を破ったキャラクター設定

「ヤンキー漫画」って聞くと、「劇画タッチか」ってくらい線が書き込まれた、リーゼントで短ランのガタイがヤバイお兄さんが血まみれになって拳で語り合ってる「男(漢?)クサい漫画」ってイメージがあるじゃないですか。ないですか?私はあるんですけど。

私にとって、そんな「THE・ヤンキー漫画」みたいな固定概念をぶっ壊したのがこの作品で。

なにより、三橋と伊藤は、あんまりカッコよくない。

例えば、ヤンキー漫画『ろくでなしBLUES』の前田太尊(まえだ たいそん)は男気にあふれ、ケンカも強いのにそれを誇示することもせず、人望もある。めちゃくちゃ格好いいキャラなのだ。

それに比べて、本作の主人公の1人である三橋は、性格がクソである。周囲の誰もが認める卑怯者で、ケンカの勝利の定義は「相手に自分より不愉快な思いをさせること」だ。(そんな主人公の設定ある?)

一方で、伊藤は義理堅く、三橋に比べると男気がある。しかし、ケンカをふっかけた相手が強そうだと見ると、三橋を犠牲にして物陰に隠れて身を守るなど、ビビりな一面もある。

そんなヤンキー漫画の主人公としては「異色」な2人が次々とトラブルに巻き込まれ、戦い、血と汗を流す。とは言っても、本作は基本的にはギャグ要素が強く、言うなれば「ほのぼの系ヤンキーコメディ漫画」だと私は思っている。

ヤンキーたちの愛らしい日常

本作は週刊少年サンデーで連載されていたため、男性人気が非常に強い作品だ。しかし私は、この作品を女性にもオススメしたい。

先ほど書いた通り、ヤンキー漫画と言えば「拳で語り合う男臭い作風」をイメージする方が多いと思う。しかし、『今日から俺は!!』はヤンキー漫画だとは思えないほど、ほぼずっと「ほのぼの」していて、なぜか癒されるのだ。そこが西森博之先生の作品の特徴とも言える。もちろん、ヤンキー漫画だからバトルシーンはあるのだけれど。

↑ 無意識に外国人の女の子を誘拐してしまう三橋(しかもその罪を伊藤になすりつけようとしている)。相変わらず、三橋の卑怯さが伺える。

本作に登場するのはバリッバリのヤンキーたちばかり。

でも、彼らはチャーミングで、どこか憎めなくて、愛されるキャラクターだ。『今日から俺は!!』は、「ヤンキー漫画かあ〜、ちょっと苦手なんだよね」と思っている人にこそ、ぜひ一度手にとってもらいたい作品である。

今日から俺は!!/西森博之 小学館