連載終了から24年、未だ色褪せない『幽★遊★白書』は何度読んでも愛が深まるばかりの名作だよねという話

レビュー

正直なところ、少年漫画でよくある「バトル漫画」には、あまり興味がなかった。

ギャグ漫画だと思って読んでいた作品が突然シリアスなバトルシーンに入ったりすると、「早くこの戦い終わらないかなぁ」と思うくらい、興味がなかった。

そんな私の価値観を根底から覆した漫画がある。バトル漫画の面白さ、見所を教えてくれた作品がある。

知らない人はほとんどいないであろう、冨樫義博先生が手がけた超有名作品『幽★遊★白書』だ。

主人公が死ぬところから物語が始まる

幽★遊★白書
©冨樫義博 1990-1994年

主人公の浦飯幽助(うらめし ゆうすけ)は粗野で乱暴、おまけに短気で無鉄砲な不良中学生。

物語は、そんな幽助が子どもの身代わりとなって、交通事故で死亡するところから始まる。

幽霊となった幽助は、霊界案内人である ぼたん に「あんたの死は霊界にとって予定外で、極楽にも地獄にもまだ行き場がない。生き返るための試練を受けるか?」と問われる。この世に未練がなかった幽助は一度はぼたんの申し出を断るも、自分が死んだことで悲しむ人々の姿を見て、試練を受けることを決意する。

魂は抜けているため意識はないものの、試練を受けたことで幽助の心臓は再び動き出した。幽助の体が生き返ったことを知った幼馴染の雪村螢子(ゆきむら けいこ)は、彼の魂が戻るのを待つ。

初期の『幽★遊★白書』では、こうした幽助と霊界との関わりや、霊界と人間界との間で浮遊霊となった幽助が人々を助ける姿が、一話完結型のエピソードで描かれている回も多くある。

『幽★遊★白書』と言えば、3巻以降の妖怪とのバトルを思い浮かべる人が多いと思うが、私としては初期のちょっとオカルト色のある、ほのぼのした短編ストーリーも好きだ。

有名すぎる個性的なキャラクターたちの登場

『幽★遊★白書』における人間界では、魔界からやってきた妖怪が人間を殺すなどの悪事を働く事件が相次いでいた。幽助は「霊界探偵」に任命され、霊能力を与えられて、ぼたんと共に妖怪たちを相手に戦い始める。

ここからなんです。ここから「伝説」が始まるんですよ……。この作品を知らない人でも名前を聞いたことがあるほどの、あまりにも有名なキャラクターたちが登場するのはこれ以降。

普段は人間の姿を借りて人間界で生活をしている妖狐、南野秀一(みなみの しゅういち)こと蔵馬(くらま)。

魔界でも名を馳せたほどの強さを持つ盗賊の飛影(ひえい)。ちなみに、蔵馬と飛影はそのビジュアルから女性人気が圧倒的に高い。

幽助と同じ中学に通っている、霊感の強い不良の桑原和真(くわばら かずま)。桑原は……うん、主に男性からの熱い支持を得ている。

仲間となった4人は霊界からの指示を受け、罪を犯した妖怪を退治する任務を次々とこなしていく。彼らの圧倒的な強さは次第に妖怪たちの間でも一目を置かれるようになり、命を狙われることになる。そして出会ったのが、これまた超有名な悪役、戸愚呂兄弟だ。

肩に乗っている方が兄。戸愚呂弟は元人間だが、永遠の若さと人智を超える力を得るために妖怪に転生した過去を持つ。彼に出会ったことで、幽助たちは妖怪たちが死闘を繰り広げる「暗黒武術会」にゲストとして参加することを余儀なくされる。

武術会までの2ヶ月間、強くなるために過酷な修行を受ける幽助だったが、いざ暗黒武術会が開会されると、そこには予想をはるかに超える強さの妖怪たちが待っていた……。

こうして「暗黒武術会編」が始まるわけだけれど、『幽★遊★白書』の中で一番有名なのはこのあたりじゃないだろうか。何が面白いのかというと、全部面白い。いや、本当に全部。

例えば敵のキャラクターがいちいち魅力的で個性的でストーリーを持っているし、戦いを通して幽助たちがどんどんパワーアップしていくのがワクワクするし、「こんなに強い敵、絶対勝てないでしょ」って思うような敵に対しての「あぁ、そうくるのね!」っていう計算され尽くした戦い方も目が離せない。

冨樫義博先生が描くキャラクターって、どうしてこうも惹きつけられるんだろう。

複雑な「人間」模様が際立たせる作品の魅力

『幽★遊★白書』は1990年から1994年にかけて「週刊少年ジャンプ」にて連載された超人気作品。

先に書いたとおり『幽★遊★白書』に出てくるキャラクターは敵キャラでさえ緻密な設定がされていて、中には悲しい過去を背負っているものもいる。主要キャラと密接な関わりを持つ敵キャラもいる。そのため、バトルシーンにおいては何度読んでもついつい感情移入しすぎてしまうのだ。単純に敵と戦うだけの漫画じゃない、それが『幽★遊★白書』の魅力の一つだ。

そんなキャラクター設定があるからこそ、戸愚呂など「みんなに愛される悪役」も多く存在するのだと思う。大好きだった敵キャラ、いっぱいいたなぁ……。

この作品は全部で19巻。しかし、読み進めて行くと決して長くはない作品だ。読み終えたあと、「もっと読みたかった」とすら思えるほどに面白い。これまで『幽★遊★白書』を読んだことがない人はもちろん、過去に読んだけれどしばらく読んでないという人も、ぜひこの機会にこの作品を手に取ってみてほしい。きっと、人気の秘密がわかるはずだ。

幽★遊★白書/冨樫義博 集英社