「あの頃、俺たちは童貞だった」20代男子に捧ぐ00年代青春ラブコメ漫画3選

まとめ

男はみんな、誰もが童貞だった。
 
そう。
クラブでヒューヒュー言ってる男も、マッチングアプリで300人斬りしてる男も、童貞の若者にマウントをとってバカにしてくるおっさんも、みんな昔は童貞だったのである。
 
そんな、思春期を童貞で過ごした俺たちには青春を共に過ごしたラブコメ漫画。
つまるところの「バイブル」が一つや二つ、必ず存在するはずである。

 
「放課後、手を繋いで一緒に帰りたい」
 
「掃除用具入れに隠れ込みたい」
 
「ベッドの下に隠していたエロ本が見つかって、わちゃわちゃ言い訳がしたい」
 
ページをめくるごとに、想像と股間を膨らませていたはずだ。
 
あれからどれくらい経ったろう。
俺たちは「大人」になったのだろうか。
でも、誰もが心の中の隅っこに「童貞だったあの頃の俺たち」を飼っているはずだ。
 
あの頃と今を比べてもよし、あの頃を思い出して布団の中で吠えてもよし、今宵はノスタルジーにとことん浸ろうではないか。
筆者が思春期を過ごした00年代。
バイブルは毎週週刊誌として発行され、そのストーリーを必死に頭に叩き込んできた。
 
今回は、筆者と同世代を生きた20代男子が学生時代を過ごしていた2000年代にバイブルとしていたであろう、
青春ラブコメ漫画を紹介する。
 

もしもクラスメイトがグラドルだったら・・・?『I”s<アイズ>』

 

I”s
©桂正和/集英社
 
もしもクラスメイトにグラビアアイドルがいたら……?
男の子なら誰もが一度は考えたであろう、禁断の思考実験を漫画にしてしまったのがこの『I”s<アイズ>』。
 
1997年から2000年の間、週刊少年ジャンプで連載され、男子中高生から絶大な人気を誇っていた。
作者は、美少女を描かせたら隣に並ぶ者はいないことで知られる『電影少女』でも有名な桂正和先生。
 
さて、青春ラブコメ漫画といえば、「主人公に妄想癖がある」ことがお約束のパターン。
例えば、女の子が「一緒に帰ろ」と声をかけてくる。
この行動一つだけでも、
 
「これはもしかして俺に気があるんじゃないか……?」
 
「いや、でも、これは他に好きな男がいて、本命をわからなくするためのカモフラージュかもしれない」
 
これくらいの妄想ができない奴は、青春ラブコメの主人公たりえない。
仕方ない、どの主人公も童貞なのだから。
 
しかし、この『I”s<アイズ>』の主人公「瀬戸一貴」は圧倒的に童貞だ。
他の作品と比べても、圧倒的な妄想力を兼ね備えているのである。
 

 
瀬戸一貴は、心の声の描写があまりにも多い。
おそらく、実際の会話で発している声よりも、心の声の方が1.5倍ほどの分量がある。
たまに、心の声を発することにふけりすぎて、他のキャラからの会話に反応できないことも多い。
 

 
極め付けは、このトリップだ。
欲望の感情がスイッチになって、心の声どころか、一人違う世界に入り込んでしまう。
なんという圧倒的童貞力。
 
でも、たしかに俺たちも、童貞だったあの頃はよく妄想をしていた気がする。
 
『I”s<アイズ>』を読みながら、もしクラスのあの子がグラビアデビューしたら……なんて日常茶飯事だったはずだ。
 
是非この作品に触れ、あの頃の童貞スピリットを思い出してみて欲しい。
 

一体俺はどの子を選べばいいんだ? 『いちご100%』

いちご100% モノクロ版
©河下水希/集英社
「一度にたくさんの女の子からモテたい。」
 
これに勝る理想はこの世に存在するだろうか?
『いちご100%』はそんな理想の極地「ハーレム」を夢見させてくれる作品だ。
 
2002年から2005年の間、週刊少年ジャンプで連載されていたこの作品。
「主人公は最終的にどのヒロインと結ばれるのか?」という点が話題になり、最終話で選ばれたヒロインに不服だったファンが作者に対して猛抗議。
なんてエピソードもファンの中では語り草である。
 
『いちご100% 』の何がいいって、やっぱり主人公「真中淳平」がモテまくるところだ。
イケメンでもなければ運動もできない。勉強もできなければ、生徒会長でもない。
そんな主人公なのに、なぜかモテるのである。
 
なんで真中淳平はモテるんだ!理由を知りたい!
僕たちの童貞心は真中の野郎に急き立てられる。
 

 
真中は「映画監督になりたい」という夢を無邪気に追っている。
そんな夢追い人、真中の言葉にヒロインたちは心動かされていく。
 
「そうか、真中淳平のように、俺にも夢が見つかれば女の子にもモテるかもしれない」
 
数多くの童貞が『いちご100%』を読んでそう思ったであろう。
 
何者にもなれていなかったあの頃の自分とその焦燥感。
そして、夢と女の子は一緒に手に入るという希望。
 
まだ誰しも、あの頃の気持ちをまだ忘れていないはずだ。
『いちご100%』を読んで思い出してみてほしい。
 

少しずつ大人になった俺たちの青春劇『涼風』

 

涼風
©瀬尾公治/講談社
『いちご100%』と同じくハーレムものだが、少しだけ一皮剥けた人間劇が楽しめるのがこの『涼風』(すずか)だ。
 
2004年から2007年まで週刊少年マガジンで連載されていたこの作品。
作者は『君のいる町』など、数多くの青春学園モノを描いている瀬尾公治先生。
 
青春ラブコメにはお決まりのドキっとするお色気シーンは残しつつも、本格的な人間ドラマを垣間見ることができるのが『涼風』の特徴だ。
 

 

 
例えば、主人公はたくさんの女性に囲まれてハーレムになりながらも、心をドギマギさせることはない。おっぱいをみても、裸を見ても、心を乱すことなく、一途にヒロインである「朝比奈涼風」のことを想い続けるのである。
 
一言でいえば、「童貞らしからぬ佇まい」だ。
読んでいた当初は「こいつ、本当に童貞かよ!」と思わず突っ込んでしまうこともあった。
 
しかし、徐々にそのひたむきさ、純粋さに心を動かされていったのを覚えている。
小中学生の頃から、あれやこれやと妄想をしては鼻の下を伸ばしていた筆者であったが、最終的にはこういう「一途な想い」が身を結ぶのかもしれない、そう思えてきたのだ。
 
そんなことも思えるようになったのか、と『涼風』を読んで感じてしまった。
ラブコメ漫画の歴史を辿れば、当時の自分(童貞)がよみがえる。
 
是非『涼風』を読んで、青春の中で大人の階段を登っていく甘酸っぱい過程を味わってほしい。
 
 
I”s<アイズ>/桂正和 集英社』『いちご100% モノクロ版/河下水希 集英社』『涼風/瀬尾公治 講談社