300ページで起承転結! 1巻完結の名作3選

まとめ

絶対に面白いけど、時間がなくて読めない…!

漫画好きの方なら、そんな作品が1つや2つ、あるのではないでしょうか。
口コミや評判からして、間違いなく面白いんだけど、コミックスがもう数十巻も出ていて、いまから読むのは大変だと思って積んでいる…。僕も何作品もあります。

いつか時間ができたらとは思うのですが、そんな時間は残念ながらいつまでもやってこないもの。そこで今回はそんな方のために、1巻完結でサクッと読めて面白い作品を3つピックアップしました。
どれも300ページ以内、30分程度で読めるボリュームですが、満足度は十二分。
自信をもってお勧めする間違いのない名作ばかりです。

医療と政治の闇に、凸凹コンビが切り込む『ネメシスの杖』

ネメシスの杖
©朱戸アオ/講談社

厚生労働省の患者安全委員会に届けられた匿名のタレコミ。

「シャーガス病」は、血中に寄生虫が入り込むことによって感染し、一度かかったら有効な治療法のない、恐ろしい病気です。

この案件の担当になった主人公の阿里は早速病院に向かうのですが、調査を始めたとたん、上層部から、事態を隠ぺいするよう要求されます。

中南米に旅行でもしない限りはかかるはずのない病気であるシャーガス病。
なのに増え続ける患者。

独断で調査を進めることにした阿里は、協力者となった寄生虫の専門家の紐倉とこの案件の裏に隠された闇に踏み込むことになるのでした…。

見どころは、まっすぐ過ぎる阿里と、飄々とした紐倉のコンビワークと、医療と人の闇に迫るストーリー。1巻完結だからこその無駄のない展開と落差が、本当に見事な作品です。

やさしい人たちが犯したかなしい罪。『よろこびのうた』

よろこびのうた
©ウチヤマユージ/講談社

2006年3月、ある地方のもう使われていない火葬場で2つの焼死体が見つかりました。
現場の状況から、老夫婦が自ら火をつけて行った自殺と判断。

半年後、そんな出来事が起こった地に取材で訪れた、新聞記者の伊能。
自殺が起こったときに取材しつくされた地域なのですが、彼は住民への聞き込みをする中で、道に「あるはずのない」タイヤ痕を見つけます。
この地では車の事故が起こった記録は存在しないはずなのに…

疑問に思った伊能は、そちらについても住民に話を聞いてみることに。
しかしそこには、思わぬ秘密が隠されていたのでした…。

やさしいタッチで描かれている作品ではあるものの、印象を一言でいえば「やるせない」。

『よろこびのうた』は、どうしようもないことが重なって、重なって、追い詰められてしまったやさしい人たちが、罪を犯してしまうお話です。

しかし、人間が罪を犯す際には大抵、何かしらの理由が付きまとうもの。
それはときに、本人にとっては正義だと思ってのことかもしれません。
何が正解で、何が正しいのかは、本人にしか分かり得ない。
人はなぜ罪を犯してしまうのか。そんな本質を立ち止まって考えることのできる作品です。

この作品は前からとても好きで、今回ご紹介するにあたってまた読み直したのですが、案の定号泣しました。ぜひ、1人でいるときに読んでみてください。

「聞いてしまったあいつが悪いのだ…」極限の殺意『告白~コンフェッション~』

告白~コンフェッション~
©福本伸行・かわぐちかいじ/講談社

猛吹雪の中、遭難してしまった2人の男。
1人は骨折し死を覚悟。死を目の前に楽観的になったのか、もう1人に対して過去に犯した殺人のことを口走ってしまいます。
しかし、直後に2人は運良く山小屋を発見。避難に成功します。

ここから空気は一変。

こいつは俺の口を封じようとしているのでは…
こいつは地上に戻ったときに、俺の罪をバラしてしまうのでは…

2人の間には、“告白”の気まずさと、疑心暗鬼、そして仄(ほの)かな殺意が漂うのでした…。

そんな物語を描くのは、原作・福本伸行さん、画・かわぐちかいじさん、という超・豪華タッグ。

極限状態に置かれた人間同士の駆け引きが圧倒的な描写力で描かれ、衝撃の結末へと転がり落ちてゆきます。

誰も来ない雪の山荘で、互いに疑い、やがて始まる極度の心理バトル…
こちらまで緊張してきて、ページをめくるのが怖くなってしまいます。

ですが、読み終えた後には良い映画を見終わったときのような満腹感があります。
ヒリヒリした緊張感がお好みの方は絶対に好きだと思います。

以上、1巻完結の名作をご紹介しました。
中身が濃密な作品ばかりなので正直、全部映画化しないかなと思ってずっと待ってます。
読んだ方には、この気持ちが分かってもらえるかと思います。ぜひ!

ネメシスの杖/朱戸アオ 講談社
よろこびのうた/ウチヤマユージ 講談社
告白~コンフェッション~/福本伸行 他 講談社