夫婦円満のコツもわかる?福満しげゆき(とその妻)漫画が好きだ!

まとめ

福満しげゆき氏の漫画が好きなのだ。
誰が何と言おうと好きなのだ。
…などと、なんとなく予防線を張っておきたくなるタイプの漫画家さんなのだが、とにかく好きなのだ。
最新作『診断の多い育児マンガ』の連載も好調な彼の漫画の魅力を、今回はこの場を借りて語らせていただきたい。

福満漫画最初の一歩に。『妻に恋する66の方法』

「イブニング」(講談社)にて連載中の『妻に恋する66の方法』は、タイトルの通り「妻に恋する」(妻に恋し続ける、妻とうまくやる)コツを毎話1つずつ挙げ、それに沿った実生活でのエピソードとともに上記のような「カワイイ妻子との生活」を独特の目線で切り取っていく…といった内容だ。

妻に恋する66の方法
©Shigeyuki Fukumitsu 2017/講談社

福満氏の「妻」は、初期から彼の漫画に一貫して登場し続ける、最も魅力的な「キャラクター」の1人だが、本作ではそんな「妻」の魅力を存分に堪能できる。
「妻」はなにしろ顔がかわいく、ずんぐりとデフォルメされたフォルムもかわいく、全開の九州弁もかわいい。福満氏ならずとも漫画のネタにしたくなるような、ちょっと変わった言動やクセもかわいい。こんなにかわいいのに(最近はだいぶ描かれることが減ったようだが)時々暴力的なところもそのギャップが面白いし、料理をはじめとした家事は完璧にこなすし…と、まあ、とにかく愛らしい妻なのだ。

実際に結婚生活を送っている人であれば、福満夫妻の関係性は家庭生活を送るうえで何らかのヒントにもなるかもしれないし、そうでなくても、純粋に漫画のキャラとしての「妻」は多くの人を魅了するだろうと思う。
「妻」みたいな妻、私もほしい。

福満家の歴史をたどりつつ漫画業界のコワい(?)内情に触れる
『僕の小規模な生活』『うちの妻ってどうでしょう?』

とびきりカワイイ「妻」を入り口に福満作品に親しみを覚えられたら、次はちょっと時代をさかのぼり、これまでに福満氏が描いてきた「私漫画」シリーズも読んでみることをおすすめしたい。

僕の小規模な生活
©福満しげゆき/講談社

『僕の小規模な生活』は「モーニング」にて2006年から2012年にかけて断続的に連載された作品。
「ガロ」、そしてその流れをくむ「アックス」(青林工藝舎)という元祖アングラ漫画誌で発表された初期代表作にして最初の「私漫画」、『僕の小規模な失敗』に続く自伝的漫画という位置づけの作品だ。
そして、ほぼ同時期に「漫画アクション」(双葉社)にて連載されたのが『うちの妻ってどうでしょう?』。

うちの妻ってどうでしょう?
©福満しげゆき/双葉社

こちらは1ページにつき均等に8つのコマが並ぶ4コマ漫画の形式をとりつつも、4コマ単位で1ネタが完結するいわゆる「4コマ漫画」ではなく、1ネタが1コマで終わったり、ページをまたいで続いたりする形式になっている。そのトリッキーさに加え、より「僕」の「主張」に近い内容が描かれる頻度が高いのも特徴だ。

同時期に別々の出版社の媒体で連載された、近いネタを題材にした漫画ということで、妻子はもちろん、それぞれの担当編集者や漫画家仲間など、共通して登場する人物も多く、相互補完的に楽しめる。そればかりか、何と、この「同じ題材を同時期に別々の雑誌で描く」という状況が生まれた過程、それにまつわるイザコザまで赤裸々に描かれているのだ。

この生々しい臨場感には連載当時も驚かされたが、今改めて読んでみても、「よくここまで描いたな! そしてよく載せたな!」と変に感心してしまう。
すでに10年ほど前のことになっているとはいえ、普通は描かれない漫画業界の内幕を垣間見られるのもこれらの作品の面白さなのだ。
そして、ここでもそういう生々しさを「妻」のかわいさがマイルドに中和させる役割を果たしている。妻、好きだ…!

陽キャのあなたにも知ってほしい。暗く卑屈な人間の可笑しくも哀しい心理

さて、福満作品を私が人にすすめたい理由のひとつは、もちろんキャラクターとしての「妻」の存在や、たびたび言及される独特の擬音表現や演出など、漫画として面白い要素が多いことだが、もうひとつは、「自分に自信のない卑屈な人間の内面」がとてもリアルに、でも読みやすくコミカルに描かれていることだ。

このシーンなんて、リアルタイムで読んでいた当時、その「卑屈な人間の心理」のリアルな描写にぞくっとした。
今となってはいい大人というしかない年齢になったのでだいぶ緩和されはしたものの、筆者はこういった、彼の「いろいろと(悪いほうに)考えすぎる」性質には痛いほど共感してしまう部分がある。きっと読む人によっては一笑に付されてしまうのだろうが、そういう人にこそ、世の中にこういう人間もいることを知ってほしい…という意味で、福満漫画を読んでみてほしいのだ。

福満氏は「ほのぼのエッセイ漫画家」扱いされることに抱くジレンマもたびたびネタにしていたのに、ほのぼのエッセイ漫画を褒めちぎってしまってすみません…。でも、エッセイ漫画で人気を博した漫画家には結構、同じような葛藤を抱えている人もいるのかもしれない。
2016年に実写映画化もされた『生活』など、ストーリー漫画も好きです!と最後に付け加えておきたい。

妻に恋する66の方法/Shigeyuki Fukumitsu 2017 講談社
僕の小規模な生活/福満しげゆき 講談社
うちの妻ってどうでしょう?/福満しげゆき 双葉社