時代劇はちょっと……という人にもオススメ!ハズレなし!?な「時代劇✕SF漫画」3選

まとめ

「時代劇」というと、「難しそう」とか「あんまり詳しくないので……」と敬遠される方もいらっしゃるかと思います。

そんな方にオススメしたいのが、「時代劇✕SF作品」です。
「SF的な発想のもとで、《時代劇》的な舞台で描かれる作品」……
たとえば、現代人(もしくは未来人)が、何らかの原因で江戸時代や戦国時代にタイムスリップしてしまい、その時代の事件に巻き込まれてしまうという……といったパターンのお話。
そう。いわゆる「タイムスリップSF時代劇」です。

こういうタイプの物語には、ハズレが少ない! ……というのは言い過ぎかもしれませんが、アタリが多い! とは言えると思います。
なぜなら、物語の中に3つの面白さの軸があるから。

一つはタイムトラベル、歴史改変などのSF的アイデアの新奇性。いわば《未来》的面白さ。
そして、定番の時代を舞台にすることによる「舞台装置」の安定感にチャンチャンバラバラの娯楽性。新しい知識が得られる知的好奇心や、古き日本を映し出す懐かしさなどのいわば《過去》的な面白さ。
さらに、現代人が過去の時代を目撃し、現代人や現代社会と対比することで、逆に《現代》というものを照射する批評性、カルチャーギャップなど、いわば《現代》的な面白さ。
この《現代》《過去》《未来》の3つの「面白さ」が一つの作品に入っているから、面白い作品が多いんじゃないか。そう思うわけです。
だからこそ、タイムスリップ時代劇漫画はドラマ化や映画化されやすいんでしょうね。

たとえば、近年、映像化された「時代劇✕SF」作品を挙げてみると、ヒット作・話題作が多いことに気づくと思います。『信長協奏曲』(石井あゆみ)、『信長のシェフ』(西村ミツル・梶川卓郎)、『アシガール』(森本梢子)、それに定番中の定番『JIN―仁―』(村上もとか)――タイムスリップ物ではないですが、『銀魂』も「時代劇✕SF」モノといえるでしょう。
さて、今回は知る人ぞ知る、あるいはこれからブレイクするであろう傑作タイムスリップ時代劇をご紹介しましょう。
映像関係者の方! 今のうちにオファーしておいた方がいいですよ!
まずご紹介したいのが、

『マゲとリボルバー』(盛田賢司・高橋遠州)小学館

マゲとリボルバー
©盛田賢司/高橋遠州/小学館

現代の警視庁の刑事と、江戸生まれの幕府隠密がタッグを組み、東京/江戸の平和を脅かす犯罪者に立ち向かうというSF時代劇で、小学館の「eBigComic4」に連載中です。

この作品が他のタイムスリップと大きく違うのは、タイムスリップのスケール。
よくある「主人公の現代人が江戸時代にタイムスリップする」というパターンではありません。
大地震が起き、現代の東京のど真ん中に「江戸の町がまるごとタイムスリップ」してくるのです。

「地滑り」ならぬ「時滑り」によって、出現した江戸の町。そのかわりに東京都台東区、墨田区、中央区、江東区、北区あたりの東京の町は根こそぎ消失してしまい、東京は大混乱に。そこに住んでいた人々は町ごと行方不明になってしまいます。

そして、十数年後。
東京は復興し、出現した江戸の町は、そのまま高い壁よって囲われ、「江戸エリア」として隔離されています。かつてのベルリンのように、東京の「中」にもう一つの「江戸」という地域が共存する状況になっているのです。

しかし、その「中」は、「外」の日本政府にとってはさまざまな問題を抱える、お荷物とも、火種ともいうべき存在になっていました。
大災害の混乱に乗じて、さまざまな人々が「中」に入り込み、その中には周辺国の工作員も含まれていました。それを利用して米・中・露の大国はそれぞれ陰謀をめぐらし、さらには徳川家の血を引く少年を「江戸エリア」の君主として独立政権を立ち上げようとする海外勢力まで現れ……。
一方、軍事強化を狙う日本政府は「難民」である「中」の人々を「活用」し、「日本人の血が流れない海外派兵」を成立させようと企みます。
世界各国の人々の思惑が複雑に絡み合う東京と江戸は、各国の諜報戦の舞台となり、世界のパワーバランスを左右する重要な地域になっていました。
そんな東京/江戸で、「中」の幕府隠密・神保兵衛と「外」の警視庁刑事・桜田咲人がバディを組んで、最初は反目しながらも、反社会的勢力やテロリストたちと戦っていく、という骨太で壮大な物語です。

「東京の中に江戸が町ごとタイムスリップする」という未だかつてないアイデアによって、チャンバラと刑事物、スパイアクションまでを見事に融合させたSF時代活劇『マゲとリボルバー』、とてもカッコ良くて面白いので、ぜひオススメします。

もう一作、お気に入りのSFタイムスリップ時代劇をご紹介します。
『黄昏流星群』です!
「……えっ!?」と驚かれる方もいらっしゃるかもしれません。
テレビドラマ版では、中年以上の男女の恋愛を描いていましたので、意外に思われる方も多いでしょう。
ですが、原作の『黄昏流星群』(弘兼憲史)は、ありとあらゆる多彩なパターンの恋愛をさまざまなタッチで描いており、中にはSF的なエピソード(ホラーやファンタジー的な物語も)もたくさんあるんですね。
その中には、タイムスリップを取り扱ったエピソードもいくつかあります。
今回は『黄昏流星群』(弘兼憲史)第15巻「わが愛しの剣星」をご紹介します。

黄昏流星群
©弘兼憲史/小学館

このエピソードの主人公は、いわゆる「歴女」。歴史、とりわけ「宮本武蔵」が大好きな女性です。
彼女は、宮本武蔵の生誕地・岡山に「聖地巡礼」のために訪れるのですが、ひょんなことから江戸時代初期にタイムスリップしてしまいます。
さすがは歴女、宮本武蔵が今まさに生きている時代に来れたと喜び、宮本武蔵を探して旅をして、やがて本人と出会って恋に落ちる、という物語ですが……。


 
現代人がタイムスリップした時に感じるであろう繊細な感覚や、逆に当時の人が感じるであろう現代人への違和感が、とてもリアルに描かれていて……これ単体で映画化してほしいくらいの、すごくガチのタイムスリップSFです!
ぜひお読みください!

さて、タイムスリップ時代劇といいながら、「あの作品を紹介しないのはどうだなんだ?」と思っていらっしゃる方もいらっしゃるでしょう。
やはり、この作品を紹介しないわけにはいきません。
そう。タイムスリップ時代劇の金字塔『戦国自衛隊』です。
訓練中の自衛隊の一個中隊が、戦国時代にタイムスリップし、戦国武将の戦にまきこまれていく半村良の小説『戦国自衛隊』。何度も映像化され、漫画化も何度もされてている、タイムスリップSFの定番中の定番です!
その中で、今回オススメしたいのが、森秀樹版『戦国自衛隊』です。

『戦国自衛隊』森秀樹

戦国自衛隊
©森秀樹/リイド社
 
いや、本当にスゴイですから。
原作や映画には登場しない、スピルバーグもビックリのトンデモないものが登場し、なおかつ主人公の隊に入隊します。
それは一体!?
もうお読み下さいというしかありません。ビックリします。

「現代劇」と「時代劇」と「SF」、3ジャンルの「ええとこ取り」した「タイムスリップ時代劇」。
今回紹介した作品を読んで「時代劇」に興味を持たれた方は、今度はタイムスリップじゃない時代劇も読んでみてはいかがでしょうか。

マゲとリボルバー/盛田賢司 高橋遠州 小学館
黄昏流星群/弘兼憲史 小学館
戦国自衛隊/森秀樹 リイド社