あなたに幸せのおすそわけ。座敷童子と暮らす日常漫画3選

まとめ

座敷童子。子どもの姿をしたイタズラ好きの妖怪(あるいは神様)で、住みついている家に幸運をもたらすと言われています。

日本の妖怪の中でもメジャーな存在であるため、妖怪をテーマにした作品には必ずと言っていいほど登場します。そこで今回は、座敷童子が主人公格の漫画を3つピックアップしてみました。

「最近ついてないな……」と感じている方。これらの漫画を読んで、幸せをおすそわけしてもらってみてはいかがでしょうか?

『ざしきわらしと僕』

ざしきわらしと僕
©西岡さち/芳文社

最初に紹介するのは、とある田舎を舞台に繰り広げられる、座敷童子の少女と人間の少年のほのぼのスローライフ4コマ。その名もずばり『ざしきわらしと僕』

家庭の事情により、東京を離れ祖母の家で暮らすことになった裕貴は、着いて早々に和服姿の女の子から出迎えを受けました。

聞くところによると彼女は座敷童子で、裕貴以外の人間には見えないらしい。裕貴は彼女に「ざわ子」と名前をつけ、祖母と自分とざわ子3人の生活がスタートします。

小学校にはクラスが1つしかなく、全学年の生徒(といっても7人)が同じ教室で授業を受ける。運動会には、地域の大人たちも全員参加。近所の山は、滑り台あり、秘密基地ありの自然の遊園地。東京に比べれば人も物も少ないけれど、田舎での暮らしは毎日がスリリング。

仕事が忙しい両親に気を使い、学校で流行っているゲームで遊び。大人っぽいと言えば聞こえはいいものの、東京にいたころの裕貴は自己主張が苦手な「冷めた」子どもでした。

そんな裕貴の氷を、ざわ子たち妖怪や、周りの人々との関わりが解かしていきます。よそ者扱いも腫れ物扱いもされず、等身大のひとりの小学生として緑豊かな田舎で過ごすうちに、年相応の子どもらしい一面を見せるようになっていく姿に思わず心が温かくなるはず。

中でも、裕貴の成長に影響を与えているのは、ざわ子の存在ではないでしょうか。裕貴が風邪を引いたときは手厚く看病したり、ぎこちなかった母親との仲を取り持ったりと、物語の要所で重要な役割を担います。

デフォルメの強い見た目や、普段の偉そうな態度からは想像しづらいものの、家族の一員である裕貴を想う気持ちは本物なのです。

また、同年代の男子より大人びている裕貴に対し、友達以上の感情を抱くキャラクターがやけに多いのも本作の特徴。

幼馴染の中学生、同級生のツンデレ女子、東京時代のクラスメイト、はてには女の子よりも女の子らしい男の子まで……。ほのぼのパートとラブコメパートのバランスが見事な漫画です。

『そのアパート、座敷童子付き物件につき・・・』

そのアパート、座敷童子付き物件につき・・・
©小夏ゆーた/竹書房

離婚を機に、格安アパートでひとり暮らしを始めた佐伯竜太郎(32歳)。その部屋には、座敷童子の沙和が住みついていました。

長生きしている割には子どもっぽく、甘えたがりで寂しがり。しかし沙和のそうした性格は、過去にあまりにも多くの別れを経験してきたことの表れでもありました。別れの辛さを知る者同士、竜太郎と沙和の間に奇妙な絆が生まれます。

そして、まがりなりにも座敷童子なだけあって、ご利益もそれなり。引っ越し早々、竜太郎は大家の孫娘の陽(ひなた)と知り合いになり、32歳バツイチ男に二度目の春が訪れます。

ふたりの恋愛関係の行く末も気になるところですが、今の竜太郎が求めているのは結婚相手ではなく、どちらかといえば「家族」じゃないかと思います。

象徴的なのが第5話で、出勤する竜太郎に沙和が「いってらっしゃい」と声をかけるシーン。結婚していたころ、妻との会話がほとんどなかった竜太郎は、「いってきます」の言葉がすぐに出てきませんでした。

離婚するとき、妻に「一緒にいる意味ないよね」と言われ、何も答えられなかった竜太郎。だけど、今は違う。

意味なんてなくてもいい。ただ側にいてくれるだけでいい。そのことにもっと早く気づけていたら、離婚せずに済んだかもしれない。けれど、気づかなかったからこそ、沙和や陽に出会えた。

出かけるとき、「いってきます」と言える人がいる。帰ってきたとき、「ただいま」と言える人がいる。お金よりもずっと大切な宝物を、沙和はもたらしてくれたのです。

『ワンダフルデイズ』

ワンダフルデイズ
©荒井チェリー/芳文社

『ざしきわらしと僕』『そのアパート、座敷童子付き物件につき・・・』に登場するのは、和服姿に黒髪おかっぱの女の子という、一般的なイメージの座敷童子でした。一風変わった座敷童子をお探しの方は、荒井チェリー先生の『ワンダフルデイズ』などいかがでしょうか。

実家は貧乏で、事件や詐欺によく巻き込まれ、住む部屋は事故物件ばかりと、何かとついていないOLの金子さち。新しく引っ越したアパートも、何か妙な気配がする。

そう、さちの部屋には座敷童子の壱(いち)が住みついていたのです! ……と、ここまでは座敷童子漫画でよくある展開ですが、大きく違うのは、壱が女の子ではなくおっさんであること。言うなれば、座敷おやじ

昼間からお酒を飲んだりギャンブルをしたりと不摂生が祟った結果、座敷童子としての力がなくなって今の姿に。ご利益も、アイスの当たりが出る、道で50円玉を拾う程度のしょぼさですが、これまで不運続きだったさちにとっては充分プラスのようです。

アパートの他の住人も、見た目は小学生だけど壱よりも年上の雪女、成人するまで自分が妖怪だと知らなかったろくろ首などバリエーション豊か。タイトルに恥じず、騒がしくも賑やかで楽しい日々が繰り広げられます。

後半からは、もうひとりの座敷童子・零(れい)も登場。こちらは女の子で、神通力も本物ですが、とある事情によりどの家にも住みつかず、公園でホームレス生活を送っていました。

さらには、さちの運の悪さと壱の過去が関係している疑惑まで立ち上がるように。ドタバタギャグ4コマとして始まった物語は、ほんのり哀愁を感じさせつつも、温かく優しい結末を迎えます。

あけすけにものを言うキャラクターたちに、妖怪たちが人間に紛れて暮らす世界観、ギャグとシリアスの調和が心地よいストーリー。TVアニメ化された荒井チェリー先生の代表作『未確認で進行形』にも通じる内容となっており、そちらが好きだった方は本作も楽しめるはずです。

おわりに

以上、座敷童子漫画を3つご紹介しました。

妖怪というものは、怖がられたり、反対に崇められたりするのが常ですが、座敷童子ほど人間らしくて私たちに寄り添ってくれる妖怪はいないのではないでしょうか。

本当にご利益があるかどうかは保証できませんが、読めば幸せな気持ちになれることは間違いありません。ぜひお読みになってみてくださいね。

ざしきわらしと僕/西岡さち 芳文社
そのアパート、座敷童子付き物件につき・・・/小夏ゆーた 竹書房
ワンダフルデイズ/荒井チェリー 芳文社