原作よりも面白い?あの人気作品のスピンオフ漫画3選

まとめ

「スピンオフ」とは、人気作品の番外編や、サブキャラクターを主人公にした派生作品のこと。昔から存在するジャンルですが、近年ますますその数が増えている印象があります。中には、スピンオフのほうが元ネタの作品より有名になる場合も……。

そこで今回は、原作を知らなくても楽しめる、もちろん知っていればさらに楽しいスピンオフ漫画を3つ紹介したいと思います。

『転スラ日記 転生したらスライムだった件』

転スラ日記 転生したらスライムだった件
©伏瀬・柴/講談社

ファンタジーの世界では決まって最弱モンスターとして描かれるスライムが、まさかの最強モンスターに!? 関連書籍の累計発行部数が1,000万部を超える大人気作品『転生したらスライムだった件』――「転スラ」。

小説投稿サイト「小説家になろう」発の小説で、漫画化、TVアニメ化と様々なメディアミックスが進行中。今、一番アツいコンテンツといっても過言ではないでしょう。『転スラ日記 転生したらスライムだった件』は、そんな転スラのスピンオフ4コマです。

現世で通り魔に刺されて死亡し、異世界でスライムに転生したリムル。紆余曲折を経て(詳細は原作でご確認を)多くの魔物たちに慕われるようになり、森の中に魔物たちが暮らす街を作り始めます。

ゴブリン、オーガ、リザードマン、オーク……。人間離れした力を持っているとはいえ、知性や感情があるという点は私たちと変わりません。戦闘や他国との争乱に明け暮れる本編ではあまり描かれることがない、彼らの人間(?)らしい一面が描かれています。

リムルが街を作るのは、魔物たちに秩序と安定をもたらすためだけではなく、かつて自分が生きていた日本の生活を再現するためでもありました。田植えに七夕、夏祭り。しかし、再現すればするほど、二度と元の世界には戻れないという事実も再認識してしまう。

ほのぼのとした雰囲気の中にも一抹のノスタルジーを感じさせる作風は、柴先生のオリジナル作品『おおきなのっぽの、』にも通じるかもしれません。「転スラ」シリーズをまだ知らない人にもおすすめしたい、良質な日常ファンタジー漫画です。

『魔法少女ほむら☆たむら ~平行世界がいつも平行であるとは限らないのだ。~』

魔法少女ほむら☆たむら ~平行世界がいつも平行であるとは限らないのだ。~
©Magica Quartet/Aniplex・Madoka Partners・MBS

2011年に放送され大きな話題を呼んだTVアニメ『魔法少女まどか☆マギカ』、略して「まどマギ」。その人気は凄まじく、過去には「まんがタイムきらら☆マギカ」という、まどマギ関連作品オンリーの漫画雑誌も刊行されていたほど。

『魔法少女ほむら☆たむら ~平行世界がいつも平行であるとは限らないのだ。~』は、「きらら☆マギカ」で連載されていたスピンオフ漫画のひとつ。しかも作者は『ゆるキャン△』のあfろ先生と、もはや面白さは保証されているも同然ですが、原作の(いい意味での)改変ぶりは他の追随を許しません。

友達のまどかを救うため、何度もタイムリープを繰り返す魔法少女・ほむら。その数は、数十回とも数百回とも。なので、たまには変な時間軸に飛んでしまうこともあるわけで。

魔女退治そっちのけで犬と戯れるだけの時間軸。魔法少女ではなくバイク乗りが魔女と戦う時間軸。まどかが爆弾魔と化している時間軸……エトセトラ。もちろんまどかを救えるはずもなく、ドタバタやっているうちに時間切れになって次の時間軸に飛んでいくという、本編のシリアスな雰囲気をぶち壊す1話完結型のシュールな4コマ漫画となっています。

中でも個人的に大好きなのが、「あけみ屋」に関する一連のエピソード。

時間軸の狭間にぽつんと建つ「あけみ屋」。タイムリープに疲れ果て、まどかを救うのを諦めてしまったほむら(ほむ姉)が切り盛りする居酒屋で、様々な時間軸のほむらたちが束の間の休息を得るためにここを訪れます。

本当なら何度も来るべき場所ではない。けれど、ほむ姉のおいしい料理や、他のほむらたちとの語らいを目当てについ立ち寄ってしまう。本編ではいつも思いつめた顔をしていたほむらも、時にはあけみ屋でビールを飲みながら息抜きしていたのだろうか、と想像してしまうのです。

『でぶぼの』

でぶぼの
©いがらしみきお/竹書房

30年以上前から連載されている、ご長寿動物4コマ『ぼのぼの』のスピンオフ作品。こちらは、原作者のいがらしみきお先生自身がスピンオフも描かれています。

内容を一言でいえば、「ぼのぼのたちが太っているだけ」。本当にそれだけですが、これがまた面白いんです。「デブ猫」「デブ犬」といった動物萌えのジャンルもあるように、二重顎のぼのぼのたちがとにかくかわいい。

健康面の問題はさておき、太っているということは、それだけたくさんの食べ物があるということ。

おいしい食べ物を見つけたら、みんなで分け合って好きなだけ食べる。独り占めしようとするキャラクターは誰もいません。本編では乱暴な一面があるアライグマくんも、こちらではぼのぼのやシマリスくんに料理を振る舞ったりして、比較的おおらかな性格をしています。

また、キャラクターのかわいさに反して哲学的なセリフが多いのも『ぼのぼの』シリーズの特徴ですが、それは『でぶぼの』でも健在。特に、生きていくために最も重要な「食」がテーマになっていることもあり、心に沁みる言葉が多く散りばめられています。

特に印象に残ったのは、目次ページに描かれている以下のコマ。この詩に、作者が『でぶぼの』に込めたメッセージが凝縮されているのではないでしょうか。

まとめ

冒頭にも書いたように、スピンオフのほうが原作よりも有名になるケースは決して珍しくありません。良質なスピンオフは、それ単体でも鑑賞に堪えうる作品になるということでしょう。

とはいえ、原作のキャラクターや世界観があってこそのスピンオフ。私も、「転スラ」に関しては先にスピンオフの「転スラ日記」を読みましたが(柴先生のファンなので)、そのあとTVアニメなども観るようになりました。スピンオフ漫画をきっかけに原作を手に取ってみるのもありだと思います。

転スラ日記 転生したらスライムだった件/伏瀬・柴 講談社
法少女ほむら☆たむら ~平行世界がいつも平行であるとは限らないのだ。~/Magica Quartet Aniplex・Madoka Partners・MBS
でぶぼの/いがらしみきお 竹書房