「あさひなぐ」「はねバド!」「少女ファイト」「マイぼーる!」スポーツ女子漫画4選

まとめ

スポーツをしている女子は可愛さ5割増し。これは真実であります。体操服、陸上の短パン、テニスウェアなど、ユニフォームを着ているならディ・モールトベネ(非常に良しッ!!)
ということで今回はスポーツ女子漫画特集! 勝利に湧き上がる女の子の笑顔から大マジなスポ根まで、スポーツを通じて女性の魅力が感じられる漫画を集めてみました!

はねバド!

はねバド!
©Kousuke Hamada/講談社

勝負事になると性格が変わる人っていますよね。ぼやーーっとしたのほほん少女が、ラケットを握った途端シビアに豹変。幼い頃からバドミントンの英才教育を受けて育った羽咲綾乃、その人です。

こんな可愛い子が、試合の最中はゾッとするほど怖くなります。ですがそれって性格が変わっているのではなく、負けず嫌いの子供っぽさ。その現れなんですよ。幼馴染のエレナに面倒事を丸投げしてますし。

幼稚性を残した綾乃が、チームメイトである荒垣なぎさたち部活のメンバーや、他校のライバルたちとバドミントンで切磋琢磨していくことで、精神的に成長していきます。

自分のことで精一杯だった綾乃が、「優しくなりたい」とこぼす一幕。
自己中心だった綾乃が、他者に気遣うようになり、大人になっていく。思春期の少女が内面的に成長していく、その表情がすごくイイ!

なぎさと死闘を繰り広げた綾乃は全国大会に進出。元・天才としての奮闘を描写するスポーツドラマとしても見どころが多いです。
綾乃よりも体躯に恵まれた上位互換・益子泪(ましこ るい)との熱闘が描かれる11巻~12巻。息もつかせぬラリーの連続たるや。読んでいるこっちが息を止めてしまうほどの迫力で、シャトルの刹那の攻防を描いています。

『はねバド』は、相手選手一人一人にも丁寧なバックボーンが語られているので、全員に感情移入できます。強すぎるが故の、孤独から生まれた泪。増長した態度とひねくれた性格。その裏にある、家庭の事情。試合で成長しているのは綾乃だけじゃなく、泪も気づきを得ます。
試合後は泪のトゲトゲしさが取れて、友達とも少し打ち解けているのが救われるんですよ。ライバル同士が名字から下の名前で呼び合う、軽く百合っぽさも乗せてくる感じも最高です。

もうひとり、橋詰英美(はしづめ えみ)も忘れられない選手です。あと一歩、本気になって頑張っていれば違う結果だったかもしれないと悔いる気持ち。練習中の徒競走で、最後の白線が踏めなかったという具体的な過去のエピソードが心に刺さります。
誰でも「あの時もっと、本気で取り組んでいればよかった」と思い残すことがあると思うんです。
夕暮れの校庭。トンボを引く野球部の一年生。楽器をしまう吹奏楽部。自責の念で謝罪する橋詰。ノスタルジーを感じさせる青春の光景が、読み手の感情を揺さぶって共感を誘うのです。

全国大会もベスト4が確定。綾乃は準決勝で春の選抜の覇者・志波姫唯華と対戦中。ますます盛り上がり続ける『はねバド!』から目が離せません。

あさひなぐ

あさひなぐ
©こざき亜衣/小学館

薙刀を題材としたスポーツ漫画「あさひなぐ」。乃木坂46を起用して実写映画化したことでも有名です。もちろん主人公はタイトルにもなっている東島旭。運動音痴で身体も小さい旭が、二ツ坂高校の薙刀部に入部。不撓不屈の精神で強くなっていく過程が胸を打つスポ根モノ。

……なのですが! ここでスポット当てたいのは、東島旭のライバルである國陵高校の一堂寧々。登場時からツンケン刺々しく、先輩であろうと怒鳴り散らす我の強さ。黒髪ロング+前髪パッツンが似合っているのに、怒ってばかりでもったいない(個人の感想です)。

当然、部内でも孤立しています。馴れ合いは「弱さ」の象徴として毛嫌いしている孤高の少女。そんな寧々にとって、メンバーと楽しそうに薙刀をしている旭は目障りな存在として映ります。

合宿、関東大会と何度も旭と対峙するたびに、寧々の心は乱れていきます。熊本時代、姉のように慕っていた戸井田奈歩すら切り捨てて、貝のように心を閉じる寧々。

「人の優しさに甘えてはいかん。誰にも心を預けてはいかん。」

そんな寧々にとって,仲間と支え合って強くなっていく旭は、寧々がもっとも否定しなければならない存在だったわけです。

辛くても薙刀で強くなれば「いつか寂しくなんかなくなるけん」。そう願う気持ちとは反対に、ふとした瞬間、孤独感に襲われて路上でうずくまってしまう寧々。傷ついた心を覆っていた硬いかさぶたが、ひび割れて血が滲んだような哀傷の描写が痛々しい。

寧々と旭の因縁は、インターハイ予選団体決勝の大将戦へ。1巻から続く一堂寧々と東島旭の因縁の対決を、対称的に演出するのが鳥肌モノです。
薙刀を交えることで、相手と対話する。死力を尽くして、お互いの心に触れ合う。延長戦の行く先に見た、寧々の求めていた答えとは───。

旭vs寧々の決着がつく21巻は、第一部完といったところ。旭の成長の集大成とともに、寧々の救済に心が洗われるのです。

そして22巻からの新展開。寧々の同輩である的林が言うには、一堂寧々の態度、変わってませんでした! えーっ!? しかし旭と再会した時には、わだかまりが消えた清々しい表情を見せます。本当に良かった。

「あさひなぐ」に心を動かされるのは、登場人物の心象描写がとても巧みだから。美しい日本語で綴られていくモノローグこそ、「あさひなぐ」の本質的な面白さです。
人は美しいものに触れたとき、感情が揺さぶられます。少女たちの一途さや気高さを、薙刀を通じて力強く、整った絵とともに描きあらわす。まごうことなき、今日のスポ根漫画の名作です。

マイぼーる!

マイぼーる!
©いのうえ空/白泉社(ヤングアニマル)

一目で視線を奪われる、華やかな雉山北高校の女子サッカー部の面々。女子サッカー漫画『マイぼーる!』こそ、青春、友情、恋、すべてがキラキラに詰まっているガールズ部活ものとして強く推したい!

すべてのページがライトノベルの表紙や挿絵になりうるほど、ディティールの凝った描きこみっぷりにまず驚かされます。その絵柄のままに描かれる、試合シーンにおける躍動感が素晴らしい。いのうえ空による筆致の凄まじさで、11人x2チームが激しく動き回る作画カロリーの高さにもかかわらず、一切の妥協を許しません。

ここでは雉山北高校の女子サッカー部、その中心人物である舶来レイカに注目したい。成績優秀でスポーツ万能のハイスペックお嬢様。自信に満ち溢れた性格で、皆の精神的支柱になっている存在です。

こちらのお嬢様が、ひとたび試合となれば、血気盛んにゴールを狙う、華のあるストライカーに豹変します。

優雅で華麗なお嬢様でありながら、獅子のごとき獰猛な強さと気高さを持ちあわせるレイカに見惚れます。特に8巻の地区予選のフランクリン戦で見せた策士っぷりにはゾクゾク震えます。

勝利に、恋に貪欲なレイカ。彼女が恋してるのは、男子サッカーの有望な新人にして、女子サッカー部のコーチ・蓮賀 国光(はすが くにみつ)。国光を巡って、宮野 舞(みやの まい)との三角関係も勃発するのですが、そこは正々堂々。舞とレイカが友情で結ばれているのもストレスがなくて楽しめます。
……というか雉山北高校の女子サッカー部全員、国光を気に入っているモテモテ状態なわけですが。一見してギャルゲー的なハーレムのようでいて、硬派な国光は決して色気になびかないサッカー一筋な姿勢も好感が持てます。

女の子たちが頑張る姿の可愛らしさ+ボールを追いかける熱血スポ根。両方の要素がうまくマッチした『マイぼーる!』、読むと元気がもらえます。試合後のお風呂で、女子たちのキャッキャウフウフが毎回あるのもポイント高いです!

少女ファイト

少女ファイト
©Yoko Nihonbashi/講談社

人は誰でも、心に闇を抱えています。「闇」というと大げさですが、悩みとか、挫折とか、嫉妬とか、ポジティブではない感情のこと。
バレーボール漫画「少女ファイト」に登場するキャラクターたちも皆、ポップな絵柄とは裏腹に、それぞれ挫折や後悔を抱えています。

主人公の大石練は小学校時代、チームを全国大会準決勝まで導いた腕利きの選手。ですが当時の練がバレーに没頭する理由は、「バレーやってる間だけは姉ちゃんのことを考える暇がないから」。

大好きな姉を失った心の傷を隠すように、一心不乱にバレーに打ち込む練についたあだ名は「狂犬」。やがてチームメイトたちにも裏切られたと感じた練は、ショックを受けてしまいます。中学時代の練は幼馴染の式島滋(シゲル)・式島未散(ミチル)兄弟以外の友達は作らないようにして、心を閉ざすことに。

交通事故で亡くした姉とチームメイトの離反。2つのトラウマを抱えた練は、姉の在籍していた黒曜谷高校のバレー部に入部します。クセの強いメンバーたちとぶつかり合いながら、練はだんだん自分らしさを取り戻していきます。そう、これは大石練の再生の物語。

相手の気持ちを勝手に解釈して、ついつい悪い方向へ考えてしまうこと、ありませんか? 練のそんなネガティブ思考に対して、小田切学は言い切ります。

「本当のところは本人に聞かないとわからないものですよ」
「人からのまた聞きなんてもっと当てになりませんよ」
だから私は手触りがないものはあまり信じません」

この一言に背中を押されて、練はシゲルと分かり合えます。人間関係の勝手な思い込みや憶測を、「手触りがない」と表現する言葉のチョイスが痺れます。
また、黒曜谷高校を退学させられた元バレー部員が悪口を吹聴していることについて、

「他校の悪口につきあって気分が落ちるのは仕事の範囲じゃない」
「一度何かを否定したら 自分を肯定するためにその粗探しをし続けることになる」

「そんなのは無間地獄」だとキャプテンは告げます。これって昨今のSNSにおける攻撃的なリプライにも当てはまったり。「少女ファイト」はそんな教訓に満ちていて、学びや気づきが多い作品です。

バレーボールを通じて、人間の心の機微を描いている本作。登場人物の多い「少女ファイト」では、人間関係の三つ巴が到るところで見られます。
小田切学が手を焼いていた、弟の引きこもり問題。これを解決させた社交的なミチルですが、過去の弱みを握られている唯隆子には、苦手意識で頭が上がりません。隆子は大半の相手には横柄な態度ですが、学には心を見透かされる真意を何度も突きつけられます。

劇中において、「バレーボールという競技は極端に飛び抜けた選手が一人いても勝てない。一人ひとりの能力が凸凹していても、6人全員で六角形を大きく描けるチームが強い」という事実が語られています。人間関係の凸凹が噛み合うことの妙。
キャラクターたちがそれぞれに抱く感情を緻密に描き、人としての「揺らぎ」をドラマティックに演出していて心を打たれます。

またバレー部員だけじゃなく、大人たちにも複雑な背景があります。陣内笛子監督は、練の亡くなった姉の真理と元チームメイト。目の前の交通事故を止められなかった悔いを今も抱えていて、常に喪服のいで立ちです。
監督やコーチたち春高優勝世代も様々な事情を抱えながら、黒曜谷高校バレー部に関わっていきます。練を中心とする現役グループと、陣内監督やルミ子の父親たち大人のグループ。2つのレイヤーが彩るドラマ性も、作品に深みを与えていてグッときます。様々な角度から、いろんな楽しみ方のできるプリズムのような作品になっています。

まとめ

身体を動かしながら何かに打ち込み、極めていく行為。スポーツ競技は、人の感情をむき出しにします。
舶来 レイカの勝利への貪欲さ。孤独の中で強さを追い求める一堂寧々。競技を通じて人と関わりを持たんとする羽咲綾乃や大石練。
少女たちの剥き身のエゴが、読み手の心を動かす。それがスポーツ漫画の醍醐味であり、感動に繋がるのです。一所懸命な女の子が胸を打つ4選、ぜひ触れてみてください。

はねバド!/Kousuke Hamada 講談社
あさひなぐ/こざき亜衣 小学館
マイぼーる!/いのうえ空 白泉社(ヤングアニマル)
少女ファイト/Yoko Nihonbashi 講談社