『獣人さんとお花ちゃん』配信記念! 柚樹ちひろ先生インタビュー

インタビュー

獣人と人間――ふたつの種族のあいだには永遠とそびえ立つ、大きな壁がある。
偶然見つけた壁の亀裂から獣人の住処へ迷い込んだ花は、漆黒の獣人・サナティに「侵入者」として捕らえられるはずが、逆に助けられて――。

Twitterで話題となった「種族を超えた恋物語」・『獣人さんとお花ちゃん』が、ついにまんが王国で配信開始となりました!

今回、配信を記念して、ラブチュコラ編集部様に柚樹ちひろ先生へのインタビューを実施して頂くことができました。
TL好きの方はもちろん、これまでTLに馴染みの無かった方もその世界観に触れてみたくなるはず―!?
先生の作品への愛がたっぷり伝わる内容になっております。是非最後までお楽しみください。

獣人さんとお花ちゃん【分冊版】
©柚樹ちひろ/笠倉出版社

Q. 漫画との出会いと、漫画家になろうと思ったきっかけがあれば教えてください。

ラブチュコラ編集部(以下、編集部):自己紹介をお願いします。

柚樹ちひろ(以下、柚樹):ティーンズラブ(以下、TL)の漫画を描いている柚樹ちひろです。

柚樹ちひろ先生

編集部:漫画との出会いと、漫画家になろうと思ったきっかけがあれば教えてください。

柚樹:漫画の出会いは小学校の頃ですね。ある少女漫画の、何故か4巻目を最初に手に取りました。
読んだことがある、と自分で勘違いしたらしく、4巻から読み始めて(笑)
でもやっぱり違ったので1巻から買いなおしたんですけど、それが出会いですね。

編集部:漫画を描くことは、いつ頃から始められたんでしょうか。

柚樹:絵は幼稚園のころから描いてました。
小学校に上がってからは、自由帳に漫画を描くようになりましたね。絵を描くのも、何かしら人物を描くのも楽しかったんだと思います。
小学校の卒業アルバムとかにも「漫画家になります」って描いてあったんで、ずっと漫画家になりたい一本で、考えてたみたいです。

編集部:本格的にご自身で1作品を描き上げたのはいつ頃ですか?

柚樹:「投稿しよう」って決めたのが中学校の時でした。
中学校のいつだったかな、たぶん中1とかだと思います。

編集部:そこからストイックに執筆を続けていらっしゃるんですか?

柚樹:その頃から同人も始めて、同人誌を友達と描きながら「漫画は楽しいな~」って描いてた感じでした。
それ以外何もやってなかったですね。漫画一筋にやってました(笑)

編集部:漫画は何年くらい描き続けていますか?

柚樹:えーと、おぎゃーと生まれてから(笑)……多分5、6年後ぐらいですよね。
それからもう10年、15年以上絵と関わっていることになりますね。

Q. 『獣人さんとお花ちゃん」の作品が生まれたきっかけを教えていただけますか?

柚樹:もともと獣人もの、人外ものが大好きだったんです。
少女漫画では読んだことある、BLでも読んだことがある、青年誌とかでも読んだことがある、でもTLには無い。なんでTLで無いんだろう、というところからですね(笑)

編集部:「なんで無いんだ」っていうところから、ご自身で描くというところに繋がったんですね。

柚樹:描きたいっていうのもあるし、他の作家さんたちが描いているものを読みたいから、
「これは広めるしかないなあ」って思いまして(笑)

Twitterで最初に広めたときに「描きたい」っていうのは言ってたんですけど、
どちらかというと「描いてほしいな、誰か」ぐらいの気持ちでいたんですよ(笑)
結局言った自分本人が描くことになっちゃうんですけど(笑)

でもそうやって広がっていって、獣人さん物が他にも配信されるようになったので、
「広がってるなあ」ってひしひしと感じます。

BLとか少女漫画とかでは当たり前に一般の方は読まれているので、
せっかくだったらTLでも――きっと読者さんは好きなんじゃないかな、好きになってほしいな、という気持ちです。

編集部:ご自身としても、「TLの中でも獣人さんが描きたい」っていうツイートにあれだけ反響があったことには、びっくりされたんじゃないでしょうか。

柚樹:獣人を扱った作品は確かに少ないのかもしれないですけど、「読みたい人は、世界中から探せば沢山いるはずだ」っていうのを実感しましたね。
描きたい人もいるというのを知れたのも、嬉しかったです。

編集部:海外の方からも今作は反響がありますよね。

柚樹:そうですね。海外の方、本当にありがとうございます。
「日本語にしないで、ロシア語とか英語とかに早くなってほしい」
っていうのをたまに頂くので、私もなってほしいです!

Q. 描いていて楽しいところ、大変なところを教えてください。

編集部:実際描いてみて、ご自身がお好きなジャンルだからという楽しさと、好きだからこその苦労・大変な面ってあると思うんですけど、そのあたりはいかがでしょうか。

柚樹:めっちゃくちゃ大変ですね。いやー、それこそ表情とか体つきとかも。
作画面でも勿論ありますし、物語性として他のものにないものを作れるのか、とかキュンとしてもらえる部分をもっと作れないか、とか、自分がどれぐらいできるのか、とか日々研究です。

『獣人さんとお花ちゃん』は、ネームが終わった後に次のネームの下書きをやっちゃうんですよ。忘れないように。しかも筆がすごい進むという。

編集部:素晴らしい(笑)
それだけモチベーションが高いんでしょうね。

柚樹:一番進んでます。

編集部:ご自身で描きたかった作品というお気持ちが強いんでしょうね。

柚樹:ほんとに、溢れんばかりの情熱で描いてますよ(笑)

編集部:いつも勢いのあるネームなので、すごい面白いなあって思いながら見てます。

Q. これまでの経験で作品作りにいきていると感じることはありますか?

柚樹:TLでデビューしたての頃は、同じTL漫画をあんまり読まなかったんですよ。
読んでも読者目線で、漫画家として読む事はほぼなくて、ちょっとおろそかにしていた部分がありました。
でも今は、TL・BL・少女漫画・青年漫画も含めて全部のジャンルから、できるだけ自分が「ここがいい」とか「作画がいい」とか「構図がいい」とか、そういう部分を引き出しにしまうようにしています。

編集部:これから描く題材に関しても、ご自身なりにリサーチなどは熱心にされているんですか?

柚樹:「どんな作品が流行っているのかな~」と電子書店さん巡りはしますね。
でも、「今はこれか…」とか考えますけど、それが自分の描くものと同じになるかは別ですね。
流れに乗れれば一番ですけど、描きたいもので乗れるように日々チェックだけしてます。

でも、自分の漫画のネタが被ったり影響を受けすぎるので、漫画の中身は見ないであらすじ程度でやめてます。

編集部:TLに関しては、近しいキーワードが入っている作品は意図的に避けてますか?

柚樹:大体避けて、描き終わった後に全部読んでます(笑)

Q. 1話でお気に入りのシーンと見どころがあれば教えてください。

柚樹:出会いのシーンは、まずインパクトを出したかったです。
脱衣所で押し倒される――というか事故が起きるラッキースケベのシーンは、ちょっと湿度が上がるような感じを意識しました。

編集部:出会いのお花畑の描写も、すごい気合が入っていて素敵でした。

柚樹:冒頭のシーンのところって特に摑みが大事だと思うので、できるだけ力を入れてやろうと思って(笑)

編集部:すごい熱量を感じました。
TLって1話の段階で濡れ場の需要が大きいので、今回そういった面では冒険の要素がありましたよね。

柚樹:それこそ冒頭にバッて、「こういう感じのエロの要素を入れてます」っていうのを入れる漫画が
多いじゃないですか。
冒険に出ない分、「読んでてエロくないじゃん」って思われないかはちょっと不安でしたね。

編集部:1話の方ではスローテンポですけど、今後の話数に関しては読者さんの期待に沿えるような、ガッツリそういった要素も入ってますしね。

柚樹:見どころというか、サナティをじっくり見ていただければ(笑)
ぐらいかな。

編集部:話数を重ねるごとにサナティ自体もかなり表情や言動が変化していきますよね。

柚樹:変化していくんでね。

Q. 漫画を描くうえで、一番好きな作業はなんですか?

柚樹:好きな作業はトーン貼りです。

編集部:ちなみに理由を聞いてもよろしいですか?

柚樹:昔からトーン貼りは好きでしたね。なんか色付けに近い感じですね。
すごい大変なんですけど、集中しだすと止まらなくなるような感じが好きで。
専門学校の時、先生に「柚樹のトーンはいつも走ってるよね」って言われて、
「走ってるってなんだろうな」って思いつつ(笑)
多分、自分が好きな部分だからそれだけ固執してやってるんだろうなっていうのはあります。

編集部:確かに、トーンの重ね方とか雰囲気から、並々ならないこだわりを感じる気がします。

柚樹:私、結構おおざっぱで適当な人間なんで、トーンもはみ出したりとか色々あるんですけど、そういう部分も含めて情熱と考えていただければ……(笑)

編集部:今回、アナログで作業されてますよね。

柚樹:そうですね。
昔は――というか今でもベタが嫌いなので、ベタはできるだけアシスタントの方に任せてます (笑)
ペン入れは昔はすごい雑だったので、そういった部分はほんとに気を付けながら。
いやー、ほんとに一線一線、デジタルと違って戻しがきかないので、気を付けながらやってます。

「最初の一筆でこう全部決めていく!」ぐらいの気持ちで。頑張ってます。

編集部:すごいと思います。トーンももちろんすごく気合入ってやられてますけど、
線がいい意味で走っている感じが、勢いがあっていいなっていつも思ってました。

柚樹:強弱を結構つけて描く方が好きなんです。
できるだけ少な目にはしてますけど、ほんとはもっと入れたいぐらいの気持ちで描いてます。

愛用の画材

 

Q. 気分転換の方法や、最近ハマっていることを教えてください!

柚樹:んーと、猫です(笑)

編集部:猫ちゃん(笑)

柚樹:ねこー。猫を吸いに行くのと、漫画読んでます。もうずっと。

Q. 獣人さんとお花ちゃんで、これから挑戦してみたい設定、描いてみたいシチュエーションが
あれば教えてください。

柚樹:「いつかやりたいなー」っていうのは花畑エッチです。

「小ネタでも描きたいなー」ぐらいの気持ちでいるのは、お花ちゃんに耳を付けてあげたいなっていう。コスプレ。
兎の尻尾のパンツが出たの知ってます?普通に兎の尻尾がついてるんですよ。女の子の。かわいくないですか?

編集部:いいですね、かわいいですね。

柚樹:かわいいですよね(笑)

編集部:それを見たサナティさんがすごい恥じらいそうですよね。お花ちゃんよりも。

柚樹:それが、描きたい(笑)
……これは小ネタですね、多分(笑)

柚樹:あとは……おまけは、書店さんからご要望があれば。やれるならば、やりたいですね(笑)

Q. 5年、10年後の目標や、仕事やプライベートで今後やりたいことがあれば教えてください。

柚樹:プライベートはとりあえず健康でいられればいいかな(笑)
仕事に関しては、5年、10年後も描いていたいので、維持することを忘れないっていうだけですかね。

編集部:「描き続けていきたい」っていうお気持ちが強いんですね。

柚樹:情熱が尽きるか、「ここで私が描きたいものは描き尽くしたな」っていうのを感じられるぐらいにならないと、描くのはやめられないと思うんです。
まだまだ他の人たちが描き続けているのを見て嫉妬してしまうので、止まらずにずっと描き続けたいですね。

編集部:素敵だと思います。

柚樹:頑張ります。
あと、ドラマCDやりたいです!

編集部:アピールしましょう!(笑)

柚樹:オファーお願いします(笑)

編集部:ちなみに出演していただきたい声優さんとかいらっしゃいます?

柚樹:渋くて低音の落ち着いた声でしたらどなたでも!
……とはいいつつ、サナティの声に凄い合ってるなって自分がイメージしてる人は、二人ほど…高望みしております…。

編集部:どちらもご自身に抱かれているサナティのイメージに近しいんでしょうか?

柚樹:近いですね。やー、もうほんとにね。
いつもドラマCDのお世話になってます。

Q. 原稿を描く日のタイムテーブルを教えていただけますか?

柚樹:朝そこそこに起きてお昼ぐらいから始めて、夜に一回夕食を挟んで、夜またやって、12時ぐらいには寝るぐらいのスパンです。

編集部:「夜までノンストップで仕事をされてるのかな?」っていう印象があります。

柚樹:でも休み休みです。集中力が切れるんで。
3、4時間やって、ちょっと休憩して、漫画読んで、また再開して――、みたいな感じでやってます。

編集部:お休みはとったりされてるんですか?

柚樹:今、ないです!

編集部:イレギュラーを除いては、ほぼ終日お仕事をされている?

柚樹:そうですね。
でも、仕事自体が、言い方変ですけど趣味というか、生活の一部なんで、
「仕事も休みみたいなもの」、という言い方が近いのかもしれないです(笑)

Q. これまでに描かれた作品の簡単なご紹介などがあれば教えていただけますか。

柚樹:TL★オトメチカさんの『私の先生はドSでエッチなケダモノ~俺が抑えてるの、分からない?~』と、
メルトさんの『オタクも恋する肉食紳士 ~絶頂! オジサマテクニック~』と、
ショコラブさんの『処女から始める結婚生活』ですね。

『処女から始める結婚生活』は配信が続いていて『オタクも恋する肉食紳士』は単行本発売もしてます。

『私の先生はドSでエッチなケダモノ』は主人公がストーカー気味であるというものと、
「幼なじみ+先生」っていう学園物が描きたくて、担当さんに「学園物描きたいんです」ってお願いして
押し通した作品です。
『オタクも恋する肉食紳士』は、元々はオジサンものじゃなかったのがオジサンものに変わったという、初めての体験ものですね。
『処女から始める結婚生活』は、新婚ものを描いたことがなかったので、それも描いてみたくて描きました。

編集部:どの作品も、ご自身が好きだったり新しくチャレンジしたいなっていう題材を意欲的に描かれてるんですね。

柚樹:はい。男性キャラクターの髪でも、短髪をあんまり描いてなかったんですけど、本当はすごい好きで描きたかったので、描いてみています。

Q. 今後『獣人さんとお花ちゃん」の展開は、ずばりどうなっていきますか?

柚樹:ちょっと伏せつつになりますが……、
恋愛もありつつ、TLなのでエッチに描き上げていきたいですね。
異種間ものになるとその分壁が大きいとか、結婚とかできるの?とか、そこも現実的に描きたいです。
ただ、それを辛いものじゃなく、ノンストレスな優しいもので描き上げていきたいっていうのはありますね。

編集部:世間的にどうかは別として、「やっぱり二人をやっぱり幸せにしてあげたいな」って気持ちですよね。

柚樹:読者さんが読んだときに、
「あー、なんだよこんなにつらい状況なのに幸せそうじゃん」
みたいにのほほんとし過ぎず、二人がちゃんと乗り越えて幸せになるところを伝えたいです。

Q. 最後に、今まで応援してくださっている熱心な読者の方や、今回『獣人さんとお花ちゃん」でファンになられた方、皆様へのメッセージをお願いします。

柚樹:TLはエロ有りなので、読みにくい思うという方もいるかと思います。
そこに「獣人」という人外要素が加わり、さらに厳しく狭い道を突っ走っておりますが、エロは恋愛のその先の感情を繋ぐ大事な要素で、獣人は沢山のキュンを内に秘めた素敵な存在です。

この2つを少しでも共感して読んでくださった方、ありがとうございます!
気になるけど読めないという方も、いつかもう少し道幅が広くなって通りやすくなった時に「こんな作品あったな」と思い出していただければ嬉しいです!

獣人のサナティを恰好良く、人間の花を可愛く、時に色っぽく、余すことなく魅力的に描けるようこれからも頑張ります。
また、物語としても成長していく二人を楽しく読んでくだされば嬉しいです!

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いかがでしたでしょうか。

なお、まんが王国では、今回配信になった『獣人さんとお花ちゃん』の他にも柚樹ちひろ先生の人気作を配信中です。
是非、新刊と併せてサイトをチェックしてみてください!

獣人さんとお花ちゃん【分冊版】/柚樹ちひろ 笠倉出版社