レビュー

この世界はマンガで、主人公は僕。掟破りなメタ作品『わたしの宇宙』

「トゥルーマン・ショー」という映画をご存知だろうか。「マスク」や「イエスマン」などで知られる人気俳優、ジム・キャリーが主演を務めていることもあり、作品を観た方も多いかもしれない。物語のあらすじはこうだ。 ジム・キャリー演じるトゥルーマンは、ごくごく普通の生活を送る一市民。保険外交員として働き、妻も友人もいる。しかし、その生活は24時間、TV番組「トゥルーマン・ショー」として全世界に放送されていた。彼が生まれた瞬間から、なんと30年にもわたって。さらに、トゥルーマン以外の人間はすべて役者で、暮らしている街は巨大なスタジオだった。自分の生きる人生が“作り物=フィクション”であったと気づいたトゥルーマンは、その舞台からの脱出を試みる……。

レビュー

「何もない」がある漫画。サンカクヘッド先生の破天荒すぎるデビュー作『ぽんてら』

外では才色兼備の「美妹(びもうと)」、しかし家に帰ると頭身が縮んでグータラな「干物妹(ひもうと)」になってしまう女子高生の生態を描いたギャグ漫画、『干物妹!うまるちゃん』。単行本の累計発行部数は300万部以上を数え、TVアニメも放送されていたため、知っている人も多いはず。 この作品のヒットにより、サンカクヘッド先生は晴れて有名漫画家の仲間入りを果たす。今回は、そんな作者の記念すべきデビュー作『ぽんてら』を紹介したい。『干物妹!うまるちゃん』に比べると絵柄も作風も荒々しいが、ヒロインたちのかわいさや、作者特有のギャグセンスは当時から健在だ。

レビュー

なぜ私たちは、マイノリティを放っておけないのだろう?『しまなみ誰そ彼』

昔、知人が「セクシャルマイノリティーの人たちにとって、その性志向はアイデンティティとなってるわけでしょ。なのに、それをカミングアウトしづらい社会は間違っている。もっと気軽に言えるようにに、社会を変えていかないといけない」と言っているのを聞いて、「本当にそうだろうか?」と思ったことがある。 もちろん社会が受け入れる雰囲気を作ることで、より生きやすくなる人は増えるかもしれない。

レビュー

「自由」をつかんだはずの中年漫画家が抱える孤独感。『零落』

あなたは、漫画家という職業に憧れることがないだろうか。 絵を描いているだけでお金をもらえる。毎日満員電車に詰まって会社に行かなくてもいい。好きな時間に仕事ができる。理不尽な上司もいない。 漫画家に限らず、アーティストやミュージシャンといった「フリーランス」で働く人に、憧れをいだく方は多いのではないか。 私もそのひとりだ。 しかし、『零落』を読んでしまうと、漫画家に対する認識がかなり変わる。自由に仕事をすることで払う代償は、大きい。

レビュー

京都の町屋に暮らす若手職人たちの美しい暮らし 『路地恋花』

ものづくりはお好きでしょうか。 大量生産品じゃなくて、職人の手でひとつひとつ丁寧につくられていて、客の趣味嗜好とか、思い出とか、内に秘めたる感情を込めていたりとか。そういう”ストーリー”のあるものづくりに惹かれるという人は結構いるような気がします。 さて、京都のとある一角に、若手の職人たちが職住一体の暮らしをしながらものづくりに打ち込む職人長屋がある。 路地(ろぉじ)の奥で、さまざまな”ストーリー”のあるものを生み出していく職人たちの姿と、彼らをとりまく恋を描いたオムニバスストーリー。 それが麻生みこと先生の『路地恋花』である。

レビュー

70年代の一条ゆかりを見よ。華やかな女たちの愛憎劇『デザイナー』

カッコいい女を描くのは難しい。 多くの男性は勝気すぎない女性を好むイメージがあるし、男性から好かれたいという前提がないにしても、自分自身の「強さ」を信じ、気高く強くあり続けられる女性は多くはない。 漫画の主人公になりやすいのは読者の多くが共感できる、あるいは応援したくなるキャラクターだろうから、どうしても「強い女」を描くことに主眼を置く漫画は珍しくなるのだろう。 今回は、そんな女と女の壮絶で激しい戦いを描いた1970年代の作品を取り上げたい。

インタビュー

『カーストヘヴン』配信記念! 緒川千世先生インタビュー

その学校では、「カーストゲーム」によって生徒の序列が決定される。 最上級の札【キング】を手にし、クラスの頂点に君臨していた梓。だが、懐柔していたつもりの取り巻きに欺かれ、最底辺の【ターゲット】に落ちることになり、いじめの標的に。 クラス全員にいたぶられながらも必死で抵抗する、梓の運命は――!? スクールカーストを描いた大人気BLコミック『カーストヘヴン』。「まんが王国」で最新刊・4巻が配信になりました! 配信を記念して、今回緒川千世先生にインタビューさせて頂くことが出来ました。 先生のプライベートから作品づくりまで、沢山お話を伺うことが出来ました。ぜひ最後までご覧ください♪

レビュー

銃を捨てて、友達の手を握ろう。変態癒し系軍人JK4コマ『さよならトリガー』

自分の学生時代――小学校・中学校・高校の12年間――を振り返ってみると、クラスに「転校生」がやってきたのは2・3回だけだったと思う。それくらい、転校生という存在は非日常的で、滅多にお目にかかれない。 しかしながら、学校が舞台の漫画にはよく転校生が出てくる。1作品に必ず1人いると言っても過言ではないだろう。ときに主人公だったり、ときにテコ入れの新キャラだったり。 『さよならトリガー』の主人公・「アナ」ことアナスタシアは、遠い国から日本の高校に編入してきた銀髪碧眼の女の子。「外国人留学生」も、学園漫画ではお約束のひとつ。少し違うのは、彼女が各国の戦場を駆け抜けてきた歴戦の軍人であることくらいだ。

まとめ

「1巻で読み切れる傑作は?」と聞かれたら即答する漫画3選!

「おすすめの漫画はなんですか?」 これは書店員をやっていて訊かれる質問ランキング上位に入る。 ご来店されるお客さまだけでなく、家族、友達、初対面の人にも尋ねられることも多い。 この質問は答えるのが難しい。薦めたい漫画はものすごくたくさんあるから。もちろん訊いている本人たちは悪気がなく、純粋に「どの漫画を読めばいいのか」を知りたいのだと思う。商業コミックは月に1000点近く新刊が出続けているので選び方がわからないのは当たり前だ。 だから私は常に、すぐ答えられるものを何パターンかで用意している。

まとめ

優しく懐かしい誰かの(非)日常、山川直人の世界

「好きな漫画」と一口に言っても、いろんな「好き」の種類があると思う。 「とにかく誰が読んでも200%名作だから全人類絶対読んで!!」と鼻息荒く大声でオススメしたくなる作品もあれば、「すごく好きなんだけど、好きすぎて、軽々に人に教えたくない…でも多くの人に知ってほしい…」と思うようなタイプの作品もある。 筆者にとって、今回紹介する山川直人作品は、後者寄りの漫画である。