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ありそうでなかった、リアルタイム家族漫画『よっけ家族』

年を取ると、食べ物の好みが変わるように、漫画の好みも変わってくる。 かくいう筆者も、かつては萌え漫画やラブコメ漫画ばかり読んでいたが(いまも読んでいるが)、最近は「家族漫画」にも手を出すようになってきた。 親子や夫婦、兄弟や姉妹の他愛ないやりとり。それらを眺めているだけでほっこりしたり、ときには涙さえ流すようになったのは、ひとり暮らしを始めて10年以上が経ち、自分の中で「家族」が「漫画の世界」だけの存在になりつつあるせいかもしれない。 『うさぎドロップ』や『よにんぐらし』など、これまでに数多くの「家族漫画」を手がけてきたのが宇仁田ゆみ先生。今回ご紹介する『よっけ家族』は、作者の出身地である三重県を舞台にした作品だ。

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生きづらいな、と思ったら読みたい漢方系漫画『違国日記』

私は、大学生のころから「フットワークの軽い根暗」というキャッチコピーを自分につけている。 飲み会やイベントが好きで、だれかに会うのはうれしいし呼び出されれば可能な限りどこにでも向かう。 一方、家に引きこもることも大好きで、好きなだけ漫画を読んでアニメを観てお絵かきをしていたい。「だれにも会いたくないなあ」なんて思うこともしょっちゅうで、そんな自分の心の中の陰陽なギャップを自覚する時、他人との関わり方が下手なのではないかと不安になりもやもやする。 最近、そんな気持ちをすっきりさせてくれた漫画がある。ヤマシタトモコ先生の『違国日記』だ。

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グルメ×王道ラブコメ『味噌汁でカンパイ!』の純朴さに胸キュンとバブみを感じる

「毎日味噌汁をつくってくれ」なんてプロポーズの言葉はもう死語に近いけれど、お出汁の効いた味噌汁は、1日の始まりを豊かにしてくれる日本人のソウルフード。 そんな味噌汁を巡って、幼馴染みの男女が繰り広げるグルメ&ほのぼのラブストーリー漫画、笹乃さい先生の『味噌汁でカンパイ!』を今回は紹介したい。

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癒し系恋物語の名手が描いた新境地!まったく癒されない恋物語『はじめてのひと』

谷川史子という漫画家をご存知だろうか。1986年に『りぼん』でデビューして以来、数多くのヒット作品を生み出してきた超ベテランの人気漫画家である。彼女は「好き」を巧みに表現する。スマホの着信ディスプレイに好きな人の名前が出てきたときの胸がきゅってなる感覚や、なでられた時の感触を思い出してふわふわする感覚みたいに、「好き」の気持ちをみずみずしく描く。 『清々と』を読むと、口角が上がっている自分に気づく。 『おひとり様物語-story of herself-』は何気ない日常を優しさに溢れた出来事に変換してくれる。 まさに癒し系恋物語の名手なのである。

まとめ

『ゴールデンカムイ』が好きならこれ読んで!民族系漫画の魅力

アニメ2期も決定し、大ヒット中の『ゴールデンカムイ』。舞台となっている北海道への聖地巡礼も盛り上がっているようだ。 2018年1月には二風谷アイヌ文化博物館では『ゴールデンカムイ』とのコラボ展示が行われ、8月から開催されているスタンプラリーでは『ゴールデンカムイ』によってアイヌ文化に魅了された読者が次々と広大な北海道の大地を横断している。 そう。『ゴールデンカムイ』の魅力の核はスリリングなバトルシーンや謎が謎を呼ぶストーリーだけではなく、物語を彩るアイヌ民族の文化描写だと言ってもいい。 魅力的な民族文化に触れられるマンガはゴールデンカムイだけではない。民族の文化と歴史が鮮やかに描かれた漫画を2作品紹介する。

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並んで待つことで生まれる少女たちの友情もある!『待機列ガール』

『待機列ガール』は、日本でも類を見ない、並ぶ漫画だ。 しかも「行列」ではない。待機列だ。始まる前に形成された列の中、止まったまま数時間を過ごすという、過酷極まりない空間。 本作はとても漫画の題材にならなさそうな題材をテーマに、思春期の友情、自らの成長、日本の行列文化等を巧みに見せるエンタテインメントになっている。

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その「性的すぎる肉体」が女を“敵”と“味方”に分けてしまう『ひばりの朝』

Instagramを見ていると、どう考えても“遠近法”を使って自分の顔を小さく見せようとしているな、という女の子が山ほど出てくる。心底仲がいいと思っている友達とプリクラを撮りに行っても、シャッター音が鳴るたびに彼女が半歩後ろに下がっているのに気づいて辟易とする。彼氏ができたという話を母親は喜んで聞いてくれるが、あんまりにも幸せそうなノロケ話になると途端に「女」の表情になって心が離れていくのがわかる。親ですらそうなんだから、友達に「彼氏にされて嬉しかったこと」なんて言えるわけがない。 自分よりも幸せそう、自分よりも可愛い、自分よりもモテそう……誰かに対して「自分よりも」という言葉を使って比較しようとした瞬間、相手と私の間に対等な関係はない。そこにあるのは、マウンティングが前提の敵と味方に分かれた世界だ。

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どん底で苦しむあなたに寄り添う唯一の漫画『最強伝説黒沢』

失意のどん底にいる人に寄り添ってくれる漫画とは、どんな漫画だろう。仕事がつらい時にはビジネス漫画を読んで自分を鼓舞する?恋人にフラれた時には恋愛漫画を読んで次の素敵な恋を夢見る? 素敵な漫画の世界に没頭できたとしてもページから顔を上げた時に待っているのはつらい現実。漫画の中で描かれる苦しみにはテンポ良い起承転結が用意されているが、現実の苦しみは冗長で、劇的な展開が見込める保証もない。 素敵な漫画を読んで「現実はそんなにうまくいかねーよ……。」と思うくらいに落ち込んでいる時、ちょうど良い距離感で手を差し伸べてくれる漫画が今回紹介する『最強伝説黒沢』だ。

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作り変えられていく街で生きのびるために。『鉄コン筋クリート』

2020年のオリンピックに向けて東京は今、ものすごい勢いで作り変えられている。 都市開発のため、老朽化のため、街の発展のため……さまざまな理由で、きれいなビルがバンバン建てられていく。同時に、日本特有の下町風景が少しずつ姿を消している。 例えば、去年取り壊された下北沢・駅前食品市場。そこは映画版『鉄コン筋クリート』の、ある場面のモデルになった場所であった。