講談社

レビュー

やがて変わりゆく友情を描いた『金のひつじ』は、映画『スタンド・バイ・ミー』を超えるかもしれない。

小学校の頃、毎日のように遊んでいた友達と今も頻繁に連絡を取っている人はいったいどのくらいいるのだろう。中学受験や高校受験で離れてしまったかつての友人たちは、彼らのいる場所でコミュニティを作り、そして私たちは進学した先の学校でコミュニティを作ることになって、そのコミュニティ同士が交わることがなければ、だんだん連絡の回数も減っていき、いずれは疎遠になってしまう。それは大人になった今の自分たちにも言えること。小学校の頃にあれほど仲の良かった友達の「『何人』と今も連絡を取っていますか?」というイジワルな質問をたまにしてしまうのだが、うーんと唸る相手に目を向けながら、困らせてしまったことをいつも反省している。

レビュー

人と落語を愛したカタブツ噺家(はなしか)と、その弟子の話『昭和元禄落語心中』

落語、と言われた時、どんなイメージを抱かれるだろうか。日本の伝統芸、おじいさんおばあさんの娯楽、笑点……。そもそも落語についてあまりよく知らない、という方は多いのではないか。正直にいうと私もそのひとりである。 そんな落語初心者の方こそぜひ読んでいただきたい作品がある。 心中、と聞くとドキッとするかもしれないが、怖い話ではない。本作は、落語と人を愛した噺家(落語家)の師弟とその周りのひとびとによって紡がれる、あたたかい人間ドラマだ。

レビュー

円満の秘訣は「公認の不倫」!? 話題作『1122』で夫婦のあり方を考える「いい夫婦」って何なんだろうな。

アラサー真っ只中の筆者、結婚したり子どもができたりと周囲は家庭づくりに忙しい。幸せな夫婦像がそこにあるかと思いきや、深淵を覗き込んで見ると、どこも煙のようなものが立っている。   芸能人の不倫スキャンダルへのバッシングが昼間のワイドショーを賑わせる一方で、「昼顔」よろしく、不倫する女たちを描いたドラマは大ヒット……。酒の席なんかで幾度となく交わされる「最近セックスしてないな」の言葉。   本音と建前がごっちゃになった現代で「夫婦公認の不倫」をはじめたとある夫婦の選択が「いい夫婦とは?」という答えの出ない問に重たすぎる石を投げ込んでいる。   渡辺ペコ先生の『1122』。パートナーを考える世代は一度でも手に取ってほしい作品である。

レビュー

純粋でまっすぐな情熱がまぶしい!ロケット打ち上げを目指して奔走する『我らコンタクティ』

宇宙へロケットを打ち上げる。『我らコンタクティ』は、そんな“夢”に向かって奔走する物語である。それは惑星探査のためでもなければ、宇宙の真理を解き明かすためでもない。   目的は1つ。映写機とフィルムを一緒に飛ばして、宇宙空間で映画を上映すること。ただ、それだけ。

まとめ

学園モノ×フェチの化学変化。 「植芝理一」作品の摩訶不思議ワールドを体感せよ

現在「月刊アフタヌーン」にて『大蜘蛛ちゃんフラッシュ・バック』を連載している漫画家・植芝理一先生をご存じでしょうか? 彼の作品はアニメやCDドラマなど、メディア展開されてはいますが、その認知度はまだ“知る人ぞ知る”レベルではないかと感じています。   先生の作品は、作風のベースはごく普通のラブコメなのに、そこに作者の「フェチ」が加わることで唯一無二の作品に仕上がっています。ときにオカルト、ときにSFといった視点を持つ作品たちは、ただストーリーを追うだけではないひと味違った楽しみ方もできますよ。そんな植芝先生の作品を、時系列で3作紹介します。

レビュー

精巣ガン治療で出会ったひとの人情と、漫画家を諦めなかった武田さんの話『さよならタマちゃん』

夢を追いかけている最中にガンになってしまう――。どれほど恐ろしいことだろうか。   『さよならタマちゃん」は、ガンの闘病を描いた作品である。   武田さんは35歳の時、精巣ガンと診断される。 当時彼は、マンガ家のアシスタントで生活費を稼ぎ、奥さんと愛犬と暮らしながら、自らもマンガ家デビューを目指すという、苦しくも目標のある人生を送っていた。 本作では、そんな武田先生が夢半ばで「死ぬかもしれない」病気にかかってしまった葛藤、入院生活のリアル、そして入院中に武田さんに温かい手を差し伸べてくれ人々との交流が赤裸々に描かれる。

レビュー

思春期は男も女もエロいことで頭がいっぱい。『大上さん、だだ漏れです。』は高校生のバイブルだ!

幸いにも通っていた高校はもともと女子校で男女比率が結構大変なことになっていたので、ラッキーハプニングは日常茶飯事であったし、そもそもハプニングなどなくても、華の学園生活は、主にエロの文脈でいえば大変幸せな経験だったと今さらながら感謝している。 パンチラもブラ透けも、表現の都合上、ここには書けないことでさえも、素晴らしい思い出だ。男子トイレに集まって「あの子のブラの色」などを語り合っていた学生生活、昨今問題になっているいじめの問題もまったくなかったので、あくまで男性目線での話になってしまうけれど、多くの異性に囲まれて過ごすというただそれだけで、争いの火種すらも起きないのだなあと、エロいことを考えながら思っていた次第である。

まとめ

干物女向け・やる気スイッチを押したいときに読む漫画3選

朝は5:00に起床してお花に水をあげてヨガをして、家事を終えたら豆から拘った珈琲とモーニング。 さて、1日のスタート☆……なんて生活の人、本当に実在するのだろうか。   最近はお休みがあると専ら睡眠時間に費やしてしまう。酷い日には二日酔いで半日過ごしてしまうこともある(化粧を落とさないまま寝て後悔することがよくある)。外に出ればやる気が湧いてくるのに、家の中にいるとどうもオフモードだ。習い事・部活・アルバイト……「行けば楽しいのだけれど、行くまでが面倒臭い」という干涸びた状態に気を抜くとよくなってしまう。少しでも共感してくれる人がいるならば、嬉しい(仲間意識)。

レビュー

本当の「善」と「悪」とは何か?『いぬやしき』で描かれる存在意義の観念について

何がいいことで、何が悪いことか。 みなさんには、これがすぐに判断できるだろうか? 私には、それがよくわからない。「いいこと」も「悪いこと」も人によって異なるからだ。 そんな私が最近読んだ『いぬやしき』という漫画がある。『GANTZ(ガンツ)』の作者・奥浩哉先生が手がけた人気漫画で、2017年にアニメ化、2018年には実写映画化もされた。 「身体がロボットになったヒーローが悪い奴を倒す、よくあるバトル漫画でしょ?」と思っていたのだが、それは大間違いだった。アクションというよりは、緻密な心理描写や、人間関係が描かれているヒューマンストーリーに近いかもしれない。