まんが王国ラボ

思春期は男も女もエロいことで頭がいっぱい。『大上さん、だだ漏れです。』は高校生のバイブルだ!

幸いにも通っていた高校はもともと女子校で男女比率が結構大変なことになっていたので、ラッキーハプニングは日常茶飯事であったし、そもそもハプニングなどなくても、華の学園生活は、主にエロの文脈でいえば大変幸せな経験だったと今さらながら感謝している。
パンチラもブラ透けも、表現の都合上、ここには書けないことでさえも、素晴らしい思い出だ。男子トイレに集まって「あの子のブラの色」などを語り合っていた学生生活、昨今問題になっているいじめの問題もまったくなかったので、あくまで男性目線での話になってしまうけれど、多くの異性に囲まれて過ごすというただそれだけで、争いの火種すらも起きないのだなあと、エロいことを考えながら思っていた次第である。

 

©Yu Yoshidamaru/講談社
 
一方、『大上さん、だだ漏れです。』の主人公である大上さんは、エロいことばかりを一昼夜考えている女子高生。孤独にして孤高、いつも本を読んでいるキャラである大上さんが読んでいるのは小説でもメイクの本でもなく、実はエッチな本であることは、クラスメイトの誰も知らない。バレると大変、スクールカーストにおいては非常に危険な場所に置かれることになる。
 

 
いつもエッチなことを考えて悶々としている大上さん。同じくクラスから孤立していたイケメン男子・柳沼くんを初めて近くで見て、ムラムラとしてさまざまな想像をしてしまう彼女は「淑女たれ」という旧来的な価値観に囚われることも縛られることもない。ただひたすらにエッチなことを考えるその姿には、少なからずシンパシーを感じてしまうだろう。
柳沼くんはイケメンでキレイな顔をしているのに、本当にシコるのだろうか、顔がかっこいいとアソコもかっこいいのか、みたいな疑問は、男性でも女性でも不変の、性に関する小さいながらも本質的な問いである。
 

 

 
そんな柳沼くん、実はある体質を持っていて、それが原因で人との距離を置いているのだけれど、クラスメイトは誰もそのことに気づいていない。ある日、掃除でたまたま同じグループになった大上さんと柳沼くん。大上さんは前日見てしまった淫夢のために、なかなか柳沼くんに話しかけられない。掃除の途中、接し方がわからない大上さんはついつトゲトゲしい言葉を使ってしまうが、その刹那、物置の上より落ちてきた壺から体を張って助けられるも、柳沼くんに触れようとすると拒絶されてしまう。
 

 
慌てて謝罪とお礼をするため、柳沼くんのもとへ向かう大上さん。すると……。
 

 

 
柳沼くんは自分の体質のことを大上さんに打ち明け、今はもう割り切って他人に関わらないようにしていると伝えるも、大上さんは、それは人と関わることでプラスに作用できるのではないか、誰とも関わらずに過ごすのは寂しいものだと柳沼くんにアドバイスをする。といっても自分も友達がいない大上さん。そこで柳沼くんは友達を作る練習のために、友達になってみようという提案をする。クールで特殊な柳沼くん、エッチなことばかり考えている大上さん、果たしてふたりはどんな友達関係を築くのだろうか。
 

 
エッチなことばかり考えている男子高校生もいれば、エッチなことばかり考えている女子高校生だっている。オープンにできないことで悩みを抱えていたり、そもそも考えることすらも悪いことなのでは、と思っている人もいるかもしれない。
最近では、大学の就職説明会にアダルトグッズのメーカーが参加したりもしているわけで、高校生だって体も心も立派な大人のはずである。性のオープン化が進めば楽になる人はたくさん出てくるだろうし、「オナニーにどんなグッズ使ってる?」みたいな会話が日常的になされれば、孤立したり、悩みを抱える人の救いになるだろう。
 
大上さんは卑猥な単語も平気で口に出すし、柳沼くんはそのことに対し、普通だというように振る舞う。性に悩むエッチな高校生が、エロいことダダ漏れの大上さんをあたたかく見守りながら、自分の内なるエロを受け入れて楽になれることを、切に願うばかりである。
 
 
大上さん、だだ漏れです。/吉田丸悠 講談社