まんが王国ラボ

共有したいネタは身近に!『その「おこだわり」、俺にもくれよ!!』で生活に小さな幸せを

イケてるやつだと思われたい。
少しでも多く、センスのある情報を手に入れたい。
手に入れたこだわりの情報を、共有したい。共感されたい。

©Toru Seino/講談社

イケてるやつだと思われたい。
少しでも多く、センスのある情報を手に入れたい。
手に入れたこだわりの情報を、共有したい。共感されたい。
 
昨今、SNSの発達によって、情報共有のハードルが下がり誰しもが「共感」を得やすい時代になりました。
 
例えば、街を歩いていて見つけたクスッと笑える看板はTwitterに。
例えば、味はそこそこ、カラフルな見た目のスイーツはInstagramに。
 
……だけど正直、毎日のようにSNSに流す情報を見つけ出すのって大変じゃないですか?
そんな情報の共有前提でスマホ片手にネタ集めなくてもよくない? ね…?
 
人に共有するまでもない、あなたのその「おこだわり」が知りたい。
 
それより、教えて欲しいのはあなたの「おこだわり」。

 
『その「おこだわり」、俺にもくれよ!!』には、作者である清野とおる氏が定義した数々の「おこだわり人」が登場します。人と共有することなく、ひとり至福の時を楽しむ「おこだわり人」が。
 
例えば、

 
雪印『さけるチーズ』が大好きな男(1巻9話:おこだわり人⑨「さく男」)。
 

「さけるチーズ」のために爪を伸ばしたり、
 

細かく割いたチーズは、一思いに頬張ったり、
 

 
お供に最適な飲み物を模索したり……と、ある人物(ほとんどが一般人)の日常生活でのささやかだけど、執着的な楽しみを暴いていく漫画です。
 
ちなみに『さけるチーズ』のお供の最適解は、KIRIN『休む日のALC.0.00%』を『キンミヤ焼酎』で割ることだそう。
 
だって、真似したくなっちゃうもの。
1巻につき、紹介されるのは10名前後の『おこだわり人』。先程紹介した「『さけるチーズ』が大好きな男」のように食へのこだわりを持つ人だけでなく、「睡眠」「休日の過ごし方」「内ポケット(?!)」など衣食住を網羅したラインナップが揃っています。
 
しかし、いくら「おこだわり人」を知ったところで、なかなか共感を覚えられないと思っていませんか?
 

 

ところが、この漫画では「ディティールを大切にすることで、よりリアルに真似をしてみたい衝動に駆られてしまうのです。
 

 
清野とおるさんは、対象者に対してそれは細かく細かく警察の事情聴取のように「5W1H」を聞き出しています。なぜなら、
 

 
自分で真似をしてみたいから。
 
登場する『おこだわり人』の所作を清野さん自身がなぞることで、情報のリアルさが増しているのです。
 

 
この爽快感。今すぐ真似したくなってしまいません……?
食卓を囲んで便利ワザを紹介していく某テレビ番組における「ウラ技」のような、「ついつい生活に取り入れたくなってしまう気持ち」が、本作には散りばめられています。
 

SNSのタイムラインとにらめっこするのもほどほどに、あなたが当たり前にやっている習慣に向き合ってみるのも一興。もしかしたら、なによりも誰かを幸せにする力は、あなたの「おこだわり」に込められているのかもしれません。
 
その「おこだわり」、俺にもくれよ!!/清野とおる 講談社
(ナカノヒトミ)