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新米刑事と大泥棒が手を組んで事件解決!? ドラマも放送中の漫画『ドロ刑』

名探偵シャーロック・ホームズのそばにワトソンがいるように、犯罪や事件を追うストーリーが軸となった作品では、主人公が相棒とタッグを組んで行動することが多い。例えば、映画『探偵はBARにいる』シリーズの大泉洋と松田龍平だとか。ドラマ『トリック』では仲間由紀恵と阿部寛がコンビになっていたし、人気アニメ『TIGER & BUNNY』もそう。『相棒』という、その名もズバリなドラマもある。ドラマや映画ばかりの例で恐縮だが、このように、主要キャラクターが2人1組になって活躍する作品を“バディもの”などと呼ぶ。

今回取り上げる漫画、福田秀の『ドロ刑』も“バディもの”の1つ。ただ、その組み合わせが少々変わっている。コンビを組むのは、主に窃盗犯を扱う警視庁捜査三課の新人刑事「斑目(まだらめ)」。そして、伝説的な大泥棒「煙鴉(けむりがらす)」と目される人物「ハルト」だ。『ドロ刑』は、熱血漢の刑事と大泥棒(?)が手を組んだ異色の“バディもの”である。

©福田秀/集英社

刑事と泥棒が手を組んだ理由は?

刑事が登場する作品といえば、やはり殺人など派手な事件を取り扱うことが多いだろう。しかし、『ドロ刑』の舞台となるのは、空き巣やひったくりといった、窃盗犯を取り締まる警視庁捜査三課。斑目はそこに所属する刑事、通称“ドロ刑”だ。ケチなコソ泥を追うことがほとんどで、重大事件に関わる捜査一課の刑事からバカにされることも。

そんな新米の“ドロ刑”斑目は、華麗な手口で高価な宝石を盗んでいく大泥棒・煙鴉を追っていた。煙鴉の名は、証拠1つ残らぬ犯行現場に、独特なタバコの香りをあえて残していくことに由来している。まるで警察を挑発するかのような犯行に苛立つ斑目だったが、ある日、煙鴉が残していく香りと同じタバコを吸っている人物と遭遇する。それが、ハルトだった。

斑目が彼を逮捕しようと意気込む一方で、ハルトは「(匂いだけで)証明できるの?」と余裕の表情。しかも、一瞬のスキをついて、斑目のスーツから名刺を抜き取るなど大胆な行動を見せつける。確かに証拠は匂いしかないが、その手癖の悪さは「ハルトが煙鴉ではないか」と疑うには十分だ。さらには、警察署を後日訪れ、斑目が追っている窃盗事件のアドバイスを、“泥棒目線”からする始末……。

結局、ハルトの助言により、事件は見事解決へと導かれた。その後、斑目は「一流の“ドロ刑”になりたいのなら 誰よりドロボウを理解できる刑事にならなきゃ」というハルトの言葉に惹かれたこともあり、なぜか「捜査についていきたい」という彼の要望を受け入れる。疑わしいハルトの情報を身近で集め、いつか彼を、煙鴉を捕まえることを目指して。こうして、斑目とハルト、奇妙なコンビが誕生するのだった。

2人の関係性にも注目

“バディもの”の醍醐味は、コンビ間で交わされる会話や、その関係性にある。それは、『ドロ刑』もしかり。正義感は強いが、ガサツでどこか間の抜けている斑目。オシャレでスラっとした身のこなしが素敵なアラフィフの紳士ハルト。対照的な2人が交わすやりとりは、どこかほのぼのとしていて、読んでいると心地よい。それに、大泥棒かもしれないという疑いを忘れてしまいそうなほど、ハルトの描かれ方はキュートだ。甘いものや犬が好きで、泣きそうな子供に手品を見せるなど、心優しい一面をのぞかせる。素敵なおじさま、ハルトにキュンキュンするという読者も少なくないはずだ。

もちろん、2人のやりとりだけでなく、ストーリーも十分に楽しめる。“ドロ刑”が捜査するのは、地味なコソ泥が多いものの、何重にも前科を重ねた、いわば“プロの窃盗犯”が相手だ。度重なる犯行で手口は洗練され、プライドを持って犯行を行う者さえいる。そのような犯人をどのように逮捕するのか、どうやって罪を自白させるのか。斑目とハルトが、頭脳や大胆な行動を持ってして事件と対峙する様子は、非常に痛快でスリリングだ。そして、日々起こる事件を追いつつも、なぜハルトは斑目に近づいたのか、そもそもハルトは本当に煙鴉なのかといった、ストーリーの根幹に関わる部分からも目が離せない。

ドラマとの対比も楽しめる

2018年11月現在、『ドロ刑』は日本テレビ系にて土曜夜10時より、ドラマとして放送中。斑目を中島健人、煙鴉を遠藤憲一が演じている。ここまでの説明を読んだドラマ版『ドロ刑』ファンは、「あれ?」と首をかしげているかもしれない。それもそのはず、原作とドラマでは、斑目のキャラクター設定や登場人物、ストーリーが若干異なっている。ドラマから『ドロ刑』を知った方は、ぜひ原作に触れて、その違いを楽しんでみてほしい。

ドロ刑/福田秀 集英社