鈴木史恵 「鈴木史恵」の記事

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凄絶な体験は、時にギャグよりもギャグである。『ほとんど路上生活』

本当に怖い目にあったり、とんでもない窮地に陥ったりすると、そんな場合じゃないのに笑えてきてしまうことがある。 筆者の今までの人生は、客観的に見てさほど波乱万丈でもないし、特に大きな事件も体験せずに来たという自覚があるため、そうしたシチュエーションとして想像できる範囲は狭い。 だが、それでも恐怖と笑いがいつでも紙一重であることは実感としてわかるし、それが多くの人に共有されている感覚であるからこそ、ホラー映画を笑いのめす文化があったり、ホラー漫画の大家がギャグ漫画を描いたりもしてきたのだろう。

レビュー

クセになる読み味がたまらない…。オンリーワンの“動物グルメコメディ”『ワニ男爵』

『ワニ男爵』は、2016年から2018年にかけて「モーニング」(講談社)で連載された作品。 おそらく前代未聞&空前絶後の「動物グルメコメディ」と呼ぶべき漫画だ。 主人公のワニ男爵ことアルファルド・J・ドンソンは美食の小説家。彼を「先生」と呼んで慕うウサギの少年・ラビットボーイ(通称ラビボ)と連れ立って、たびたび美味しいものを求めて旅に出る。ワニ男爵はふとしたきっかけで我を失い、野生が顔を覗かせてしまうこともあるが、日ごろはその一面を抑え、紳士的に生きることに心を砕いている。

まとめ

痛くて、苦しくて、優しい。戸田誠二作品で生々しい「生」に触れる

自分の能力や、置かれている境遇や、日々の生活に、十分な自信を持てる人は、あまり多くないと思う。将来への不安にさいなまれたり、大小さまざまな失敗を気に病んだりしながら、どうにか毎日をやり過ごしている。人前では明るく振舞いながら、そんな閉塞感を抱えている人は、決して少なくないはずだ。 今回取り上げる戸田誠二さんは、素朴で実直な作風でそんな「パッとしない大人」の心にそっと寄り添ってくれる漫画家だ。 彼のデビュー作から最新作まで、3つの作品集を紹介したい。

レビュー

大人も子ども浸りたい、淡くおだやかな世界。『奈知未佐子短編集 ~思い出小箱の15粒~』

人が「面白い」と感じる漫画の条件はなんだろうか? いろいろな考え方があると思うが、例えば漫画という表現の魅力を「キャラクター」「ストーリー」「演出」の3要素に分解して考えた場合、この三者のバランスが良い作品、もしくはどれか1つか2つが突出している作品が「面白い」漫画になる、というのはひとつの基準ではないかと思う。 そして、特に大勢の人に支持される作品は、(もちろん上記3要素がそろっているパターンが多いのだが)特に「キャラクター」が強いことが多い。 逆に言えば、キャラクターを立てずに魅力的な漫画を、それも商業のフィールドで描くことは、とても難しいことなのかもしれない。

レビュー

ゆるふわマニアックな80’s学園SF『究極超人あ~る』は文化系人間の聖典だ

『究極超人あ~る』は、1985年~1987年に「週刊少年サンデー」誌上で連載された作品。 90年代には『機動警察パトレイバー』『じゃじゃ馬グルーミンUP!』、近年も『白暮のクロニクル』『でぃす×こみ』『新九郎、奔る!』などを発表し、常に第一線で活躍している漫画家・ゆうきまさみの初期代表作だ。 ゆうき作品はライトな読者とコアでマニアックなファンの両方を幅広く抱えていると思うが、本作はとりわけ、後者のコアでマニアックで熱心なファンが多い作品だ。 今回は、『あ~る』の魅力をひもときつつ、その理由を探ってみたい。

レビュー

70年代の一条ゆかりを見よ。華やかな女たちの愛憎劇『デザイナー』

カッコいい女を描くのは難しい。 多くの男性は勝気すぎない女性を好むイメージがあるし、男性から好かれたいという前提がないにしても、自分自身の「強さ」を信じ、気高く強くあり続けられる女性は多くはない。 漫画の主人公になりやすいのは読者の多くが共感できる、あるいは応援したくなるキャラクターだろうから、どうしても「強い女」を描くことに主眼を置く漫画は珍しくなるのだろう。 今回は、そんな女と女の壮絶で激しい戦いを描いた1970年代の作品を取り上げたい。

まとめ

優しく懐かしい誰かの(非)日常、山川直人の世界

「好きな漫画」と一口に言っても、いろんな「好き」の種類があると思う。 「とにかく誰が読んでも200%名作だから全人類絶対読んで!!」と鼻息荒く大声でオススメしたくなる作品もあれば、「すごく好きなんだけど、好きすぎて、軽々に人に教えたくない…でも多くの人に知ってほしい…」と思うようなタイプの作品もある。 筆者にとって、今回紹介する山川直人作品は、後者寄りの漫画である。

まとめ

これを読んで、いつか猫と暮らす日を夢想する。 不思議&(きっと)リアルな猫漫画×2

突然だが、この記事を読んでいる人のおおよそ8割は、猫が好きだと思う。 (漫画が好きな人というのは、たいてい猫が好きなものだ。)   筆者も、もちろん猫が大好きだ。 道で猫を見かければつい追いかけてしまうし、猫のかわいい動画を延々と見ることで貴重な時間を消費してしまうこともあるし、友人知人の家に猫がいると聞けば写真をSNSにアップしてくれと懇願するし、あわよくば遊びに行かせてもらう機をうかがう。 残念ながら自身が猫を飼った経験はいまだないのだが、いつか絶対に猫と暮らしたい…!とひっそりと思い続けている。 ここでは、そんな筆者の思いをより強固なものにした猫漫画を2点紹介したい。

レビュー

学習障害のこと、知ってる? ディスレクシアの少年マジシャンの物語『ファンタジウム』

ここ5年ほどの間に社会的な関心が高まっている事柄のひとつに、発達障害があると思う。 当事者による手記やコミックエッセイが多数刊行されたり、SNS上での情報発信も盛んに行われている。 しかし、ここまで発達障害への注目が集まる以前に、その一種である“学習障害”に焦点を当てた漫画があったことをご存知だろうか。