「無理はしてほしくない。2人で付き合っているんだから…」思いやりで恋を育む、強面イケメン先輩×ヘタレ純朴後輩のほのぼのワンLOVE『柴くんとシェパードさん』

レビュー
柴くんとシェパードさん
©池森あゆ/ ジュリアンパブリッシング

恋愛は相手を思いやることが大切。片方の一方的な思いだけでは、いつかその恋は終わってしまいます。『柴くんとシェパードさん』は強面イケメン先輩×ヘタレ純朴後輩が、犬をきっかけに恋へと発展していくBL作品。男性同士なのに、そんなことを感じさせないほど、純粋な2人。互いを思いやる姿が印象的です。

始まりはコンビニ前、一言あいさつを交わすだけの関係

犬が大好きな大学生、柴本。彼の最近の楽しみは、アルバイト先であるコンビニに毎朝来る、シェパードを眺めること。ひょんなことから、シェパードの飼い主、犬養と知り合いになります。

犬養の飼い犬コタローをきっかけに、一緒に過ごす時間が増えていく2人。犬養のふと見せる笑顔、スポーツマンで男らしい姿に、だんだんと惹かれていく柴本。また犬養も同様に、柴本の無邪気な姿やコロコロ変わる表情を見て、いつの間にか柴本に好意を抱いていることに気づくのです。
柴本を好きだと気づいた犬養は、思いを伝えます。お互いに両想いであることを知った2人は、付き合い始めました。

少しずつ恋人として距離が縮まっていく2人

恋人となった2人。柴本にとって恋人ができるのは初めて。犬養の知らない一面を見て、うまく感情を出せずにすれ違うこともありました。そんな柴本を犬養は優しく受け止めます。
そして2人のエッチ。怖がる柴本の気持ちをくんで、犬養は待ち続けます。いつまでも待たせている状況に、焦った柴本が無理した時には「無理して欲しいわけじゃない。俺にだけ都合がいい恋人なんて変だろ。2人で付き合ってるんだから」と諭します。恋人だからこそ、無理をして欲しくない。犬養は柴本の心を大事にしているのが伝わりますね。柴本もこの場面で自分が、今までとても大事にされていたことに気づきます。

互いを思いやるからこそ、不器用にすれ違うこともあるけれど、2人は少しずつ恋人としての距離を縮めていきます。

優しい表情を見せる犬養

普段、不愛想な顔をしている犬養。柴本と初めて接触した時も、怖い顔をしてビビらせていました。それは誤解で、本当は優しい性格をしていると柴本は知ります。犬養は柴本と過ごすうちに、だんだんと表情が優しくなっていきます。

それは2人の関係が良くなっていくのと比例しているようです。見ていてほのぼのとしますね。柴本の感情豊かな部分が、犬養を変えていったのだと思います。

コタロー

この作品で忘れてはならない登場人物、コタロー。犬養が中学のときに、ねだって買ってもらった犬です。コタローがいなければ2人は出会うことがなかったでしょう。兄弟のいない犬養にとって、コタローは弟のような存在。毎日散歩したり、柴本と恋人になってからは、3人で一緒に出掛けています。
作中には、コタローとの限られた時間についても触れられています。コタローと過ごす時間は人間ほど長くはないけれど、これからも大切に3人で過ごしてほしいです。

コミックは2巻完結で、作者・池森あゆさんの初のBL作品。初めてと思えないほど、2人の心の描写が繊細に描かれているのが魅力です。付き合い始めた2人が様々な壁にぶつかったり、ハプニングに巻き込まれたりしながらも乗り越えていく姿は、見ていて応援したくなります
シリアスな部分はほぼなく、純粋に恋愛漫画として読める作品になっています。

柴くんとシェパードさん/池森あゆ ジュリアンパブリッシング