平凡サラリーマンの“副業”は、まさかの殺し屋!? 『今日からヒットマン』

レビュー

昨今、副業ブームが来てますね。

副業とは、ひとことでいえば、本業以外の仕事で稼ぐこと。
かつては多くの企業で禁止されていたようですが、最近は大企業も副業のためのルールを整備するなどしていて歓迎ムードが流れているようです。

かくいう僕も副業としてこの記事を書いています。
ライティングは場所を選ばないので、副業にする人が多いようですね。
副業にはこうした、無理なく楽しく続けられる仕事を選ぶのがいいと思います。

しかし、今回紹介する『今日からヒットマン』は、考えうる限り最悪な副業をやることになってしまった男の物語です。

最悪の副業、それは“殺し屋”

今日からヒットマン
©むとうひろし/日本文芸社

主人公の稲葉十吉は、食品会社の営業マン。
上司にせっつかれ、ダメな後輩のしりぬぐいに奔走する毎日。
それでも家には愛する妻がいて、朝は行ってらっしゃいのキスをするような生活を楽しんでいます。

そんなある日、得意先の接待の帰り道で伝説の殺し屋 ”二丁”と遭遇してしまいます。

絶対絶命…!と思いきや ”二丁” はトラブルで瀕死の状態。
十吉はそれを見て口八丁でやり過ごそうとしますが、拳銃で脅され、”二丁”のやりかけの仕事(=殺人)に巻き込まれてしまいます。

十吉は巻き込まれた仕事を見事にやりとげ、そのままの流れで二代目の”二丁”を襲名させられます。

そんなこんなで普通のサラリーマンだったのに、突然殺し屋をすることになってしまった十吉。

サラリーマンとしての仕事もこなしつつ、舞い込んでくる依頼を、持ち前の幸運で次々とこなしていくのでした…。

芸はいつでも身を助ける

この漫画を読んでいてつくづく思うのは、「芸を身を助ける」ってホントだなぁということ。

十吉は殺し屋という副業を軌道に乗せていくのですが、「会った人の名前を忘れない」といった営業としてのスキルを用いて敵の組織を仲違いさせたり、得意先の好みを学ぶためのネットスキルで殺し屋としての知識もインプットしたり。
そのベースにあるのは本業のサラリーマン生活で培った経験です。

筆者の自分にも似た経験があります。
僕はライター以外にもボードゲームデザイナーとして活動しているのですが、 ボードゲームを作るときには、必ずそれを遊ぶための説明書をセットで作らなければいけません。

ボードゲームは基本的に非電源のゲームなので、ボタンを連打していれば遊び方が理解できてしまう、電子ゲームなどによくあるようなチュートリアルが用意できないからです。

そこで説明書は極力、読んですぐ理解できるように気をつけて作ります。
このやり方が仕事でも作業の指示書を作るときなどに役に立ちました。
そんなふうに、一見関係のない事柄もどこか別の世界で応用できるということは、結構多くあるものです。

きっと、殺し屋と営業もそうなのでしょう。
考えてみればどちらも、生きた人間が相手です。
そして、いかに相まみえる前に相手のことを考えられたかが勝敗を分けます。
優秀な営業マンである十吉は、だからこそ殺し屋としても成功しているのです。

というわけで『今日からヒットマン』はエンタメとして十分面白い漫画なのですが、「持っているスキルをいかにして別ジャンルへ応用するか」という、これからの時代に求められてきそうな力を学ぶのにも役立つ作品です。

副業始めてみようかな、という方にもおすすめですよ。

今日からヒットマン/むとうひろし 日本文芸社