読み返すたびに、これが22年も前の作品だなんて思えない。
スタイリッシュで、オシャレで、フランスの単館上映の映画のような軽やかさを持つマツモトトモ先生の『キス』を紹介する。
高校生×ピアノニストの年の差恋愛
「ねえ先生 上手いキスってどんなの?」
「キス」は、高校生(16歳)のカエと、ピアノ講師兼ピアニストをつとめる五嶋先生(24歳)との年の差恋愛モノ。
付き合っているとは言えど、大人の余裕を崩さない五嶋にカエがやきもきしたり、
でも、実はちゃんとカエのことを女として大切にしているからこそ「大人の理屈」を通したがる意地らしい五嶋だったり。
年齢を引き合いにだして苦悩する描写は、いわゆる年の差恋愛モノの王道なのだが、「キス」が連載から22年経っても色褪せない作品なのは、
この五嶋先生がめっちゃくちゃにカッコいいからである。
〜五嶋先生カッコいいコレクション〜
まず、五嶋はめちゃくちゃシュッとしてる。顔もシュッとしてるし、立ち振る舞いもシュッとしてる。
そして手がめちゃくちゃキレイ。長い指、大きな手のひら、まさにピアノ弾きのための指。
作中ではしばしば五嶋のピアノを弾く描写があるのだが、いちいち官能的な手をしていて、漫画なのに本当にピアノの音が聞こえて来そうなほど艶かしい。
ライターでタバコに火をつけようとするこの描写なんて最高である。広い肩幅、すらっとした指、艶のある黒髪。今日の少女漫画にはなかなかない「男前さ」が全身からにじみ出ている。
しかもメガネも似合う。こんな優しい表情で微笑まれたら、誰だってカエちゃんみたいに「クソッ カッコいい…!」というリアクションを取るに決まっている。
ギザで優しくて、少女漫画の割には瞳も大きすぎないビジュアル、みなさんもうお分かりですね、そう、彼は「花とゆめ」界から来た王子なのです。
毎話出てくるキスシーンの色気がすごい
さて、「キス」という作品名だけあって、キスシーンがとっても多いこの漫画。
ケンカした仲直りに、タバコの代わりに、ご褒美に、もうキスシーンまみれである。
さすがに高校生だから一線は超えない五嶋だが、こんなあっちゃこっちゃで色気ムンムンのキスしまくってたら実質抱いているようなものなのでは……。
カエを溺愛する伯父とのバトルも…
周囲の人間からもあたたかく見守られていたカエと五嶋だが、カエを溺愛する伯父が帰国したことで空気が変わりはじめる。
孤高のピアニストである五嶋、世界的なカメラマンである伯父。
人が息を呑むようなオーラを持つ五嶋に、同族嫌悪的な不快感をあらわにして、カエとの仲を引き裂こうと画策。
二人の仲が引き裂かれそうになる王道な展開ではあるが、その王道さと五嶋のかっこよさがたまらない。
守りたい、この笑顔
ギャースカ騒ぐことも多いけれど、年の差を超えて、深く違いを思い合っているふたりの描写が愛おしくて愛おしくて。
絵柄のスッキリさで、そうは見えないが、実はベタ甘なこの作品。
愛おしい女を前にして、色気が大爆発を起こしている美しい男をぜひその目で見ていただきたい。
『キス/マツモトトモ 白泉社』