『ゴールデンカムイ』が好きならこれ読んで!民族系漫画の魅力

まとめ


アニメ2期も決定し、大ヒット中の『ゴールデンカムイ』。舞台となっている北海道への聖地巡礼も盛り上がっているようだ。

ゴールデンカムイ
©野田サトル/集英社

2018年1月には二風谷アイヌ文化博物館では『ゴールデンカムイ』とのコラボ展示が行われ、8月から開催されているスタンプラリーでは『ゴールデンカムイ』によってアイヌ文化に魅了された読者が次々と広大な北海道の大地を横断している。

そう。『ゴールデンカムイ』の魅力の核はスリリングなバトルシーンや謎が謎を呼ぶストーリーだけではなく、物語を彩るアイヌ民族の文化描写だと言ってもいい。

魅力的な民族文化に触れられるマンガはゴールデンカムイだけではない。民族の文化と歴史が鮮やかに描かれた漫画を2作品紹介する。

もっとアイヌを知りたいなら『シュマリ』

シュマリ 手塚治虫文庫全集
©手塚プロダクション 講談社

ゴールデンカムイと同じくアイヌ文化を取り扱っているのが手塚治虫の『シュマリ』。戊辰戦争が終結し、蝦夷は北海道と改名され、本州からやってきた日本人によってあらゆる土地が開拓され始めた激動の時代を舞台にした作品だ。

アイヌに寄り添う主人公シュマリの破天荒な生き様、とてつもないスピードで変わっていく北海道で一攫千金し、のしあがっていく本州から来た和人たち、翻弄される原住民アイヌの人々、シュマリの息子であるポン・ションが新しい世代のアイヌとして選ぶ道……。たくさんの人々の運命が絡み合って紡がれるワイルドな群像劇には息をつく暇もない。

『ゴールデンカムイ』と合わせて読むと面白いのは、時代の流れだ。『シュマリ』の時代背景は日露戦争終結後の『ゴールデンカムイ』よりも30年ほど前。どちらの作品にも登場する元新撰組の土方歳三がどう描かれているか、北海道の風景がどう描かれているか、2つの作品を読み比べて違いを楽しむのもひとつの読み方だ。

また、『シュマリ』には金塊や刺青など、『ゴールデンカムイ』がオマージュしていると思われるモチーフもいくつか出てくる。『ゴールデンカムイ』でアイヌ文化に興味を持った人にはぜひ読んでほしい作品だ。

インディアンの視点で描く西部開拓時代『RED』

RED
©村枝賢一/講談社

原住民と開拓というテーマには様々な見方がある。『ゴールデンカムイ』ではアイヌの少女・アシㇼパと日本人・杉本がお互いの文化に触れ、世界を広げていく様子が描かれているが、アメリカのフロンティア開拓が終焉した頃を時代背景にした『RED』が描くのは、先祖から受け継いだ伝統や生活を奪われ、居留地へと追いやられたインディアンの怒りだ。

『RED』のキャッチコピーは”勝者の歴史に牙を剥く、叛骨の崖っぷちウエスタン、ここに開幕!!”

主人公のレッドは騎兵隊に部族を虐殺されたスー族ウィシャのインディアン。虐殺から生き残ったレッドは旅芸人として暮らしていたが、ある日自分の部族の仇であるブルー小隊のメンバーリストを入手し、復讐を決意する。この復讐の旅が『RED』のメインテーマだ。「レッドの復讐」という主軸に、立場や抱える思いも様々な、多様な人種のキャラクターが合流し、物語を紡いでいく。登場するインディアンもレッドだけではない。

最後のアパッチ族として生きる少年チリカ、

惨殺から生き残ったレッドを育てたスー族マザスカの長であり、白人社会に溶け込む決意をしたシルバーリング、

レッドと同じ部族の生き残りであり、白人に育てられたスカーレット。

レッドと同じ虐げられる立場でありながら、復讐に生きる者ばかりではない。それぞれが苦しみながらも部族の未来を考え、生き抜こうとする姿は「インディアンの誇り」の多面性を私たちに見せてくれる。

物語全体に復讐というテーマが横たわり、凄惨な場面の多い作品だが、希望が全く残されていないわけではない。そしてアクションシーンは重いテーマを忘れそうになる程爽快だ。

今回紹介した2作品では、歴史のなかでその在り方が変化していってしまった民族に思いを馳せることができる。『ゴールデンカムイ』で日常ではなかなか触れることのない異なる文化に興味を持ったなら、是非一度読んでみてほしい。

ゴールデンカムイ/野田サトル 集英社
シュマリ 手塚治虫文庫全集/手塚治虫 手塚プロダクション 講談社
RED/村枝賢一 講談社