青年漫画

レビュー

「好きなことで生きていく」を江戸時代に実践した女性の物語『北斎のむすめ。』

浮世絵師・葛飾北斎には、同じく絵師の娘がいた。画号を「応為」、名を「お栄」という。 世界的に有名な父親に比べると知名度は低かったものの、近年になって、実は北斎にも匹敵する才能の持ち主だったと評価され始めている。 何より、「葛飾北斎を父に持つ女浮世絵師」という、まるで作り話のような設定。彼女を主人公にした小説『眩』(新潮社)が『眩(くらら)~北斎の娘~』として実写ドラマ化されたり、スマートフォン向けRPG『Fate/Grand Order』にも北斎とセットで登場したりと、エンタメ業界においてもお栄の活躍は目覚ましい。 今回紹介する『北斎のむすめ。』も、そうした流れを汲む作品のひとつ。タイトル通り、お栄の青春時代を描いた歴史漫画だ。

レビュー

虚々実々の歴史ミステリー・エンタテインメント! 宗像教授に民俗学を教わりたい! 

知的興奮を味わいたい! 歴史の謎に迫る漫画を読みたい! 荒唐無稽な神話や伝説の影に隠れた歴史の真実を知りたい! 繋がらなかった二つの謎がパッとつながる瞬間が好きだ! 歴史のそこここに潜むあやしいもの、オカルト風味が好きだ!   そんな人に私がおすすめしたいのが『宗像教授』シリーズです。

レビュー

なんか変だ!怪力JKとその仲間によるヘンテコな日常を描いたコメディ『スペシャル』

平方イコルスン先生の『スペシャル』。“文学系スクールライフ・コメディ”と銘打たれた同作品が描くのは、ヘンテコな高校生たちが過ごす、普通じゃない日常だ。読んでいると、シュールな世界観、軽妙なセリフ回しに笑いを誘われ、自然と顔がにやけてくる。

レビュー

すべての会社員に刺さる『ウサギ目社畜科』は、フリーライターにも刺さる内容だった

長時間労働にパワーハラスメント。プライベートの時間や、ときに自尊心をも犠牲にしながら働き続ける人々の悲哀を描いた「社畜もの」は、いまや漫画界の一大ジャンルと化している。 まじめに労働問題に切り込む作品も中にはあるものの、大半は社畜あるあるネタが中心のギャグ漫画だ。笑い話にでもしなければやっていられない、ということかもしれないが……。 『ウサギ目社畜科』も、そんな社畜コメディのひとつ。キャラクターたちの社畜っぷりはかなり深刻だが、絵柄のかわいさでだいぶ中和されている。

レビュー

学習障害のこと、知ってる? ディスレクシアの少年マジシャンの物語『ファンタジウム』

ここ5年ほどの間に社会的な関心が高まっている事柄のひとつに、発達障害があると思う。 当事者による手記やコミックエッセイが多数刊行されたり、SNS上での情報発信も盛んに行われている。 しかし、ここまで発達障害への注目が集まる以前に、その一種である“学習障害”に焦点を当てた漫画があったことをご存知だろうか。

レビュー

恋とは一体なんだ? 「恋の定義」を求めて『恋は光』を読んでみた

頼む、助けてくれ。 当方、生まれてこの方童貞の青年紳士26歳。 恋とは何なのか、未だにわかっていない。   道ですれ違う女の子を見て、「あ!可愛い!好き!愛してる!結婚したい!」って思う気持ちは、恋なのだろうか。 画面の向こうの満島ひかりを見て「あ〜〜〜〜〜〜生まれ変わりてぇ〜〜〜〜〜〜」と思う気持ちは恋?   恋ってなに? 妄想? 幻想? 髪にワックスつける奴だけが味わえるやつ? ねぇなんなの? 教えてよ。   「恋とは何か?」の解答がないと、最近、俺周辺の恋のインフレーションが止まらないのだ。   お釣りを渡すときいつも手を添えてくれる近所のコンビニ店員に、暴走した恋心を抱いて妙なアクションをしてしまう前に! 恋の定義をくれよ!!

レビュー

本当の「善」と「悪」とは何か?『いぬやしき』で描かれる存在意義の観念について

何がいいことで、何が悪いことか。 みなさんには、これがすぐに判断できるだろうか? 私には、それがよくわからない。「いいこと」も「悪いこと」も人によって異なるからだ。 そんな私が最近読んだ『いぬやしき』という漫画がある。『GANTZ(ガンツ)』の作者・奥浩哉先生が手がけた人気漫画で、2017年にアニメ化、2018年には実写映画化もされた。 「身体がロボットになったヒーローが悪い奴を倒す、よくあるバトル漫画でしょ?」と思っていたのだが、それは大間違いだった。アクションというよりは、緻密な心理描写や、人間関係が描かれているヒューマンストーリーに近いかもしれない。

レビュー

「欲情」は悪いことじゃないけど、ときに相手を傷つける。十人十色の“性の目覚め”を描いた『中学性日記』

たいてい、若いころに思い悩んだことの多くは、10年も経つと笑い事になるものだ。「なんであんなことで悩んでいたのだろう」と不思議に頭をかしげるが、おそらくそこは必要な通過儀礼のようなものだったのだろう。 シモダアサミの描く『中学性日記』を読んでいると、そんな些細な悩みやコンプレックスで頭がいっぱいだった頃を思い出す。 当作品は、多くの男女が性に目覚める「中学生」という時期に焦点を当てたオムニバス形式の作品である。 思春期の彼らは、自分にも他人にも意識が過剰で、とても不器用で、不安定だ。不用意に傷つけたり誤解しあう姿にもどかしく思う人もいるだろう。しかし、きっと必ずどこかで「ああ、私も昔そういうことで悩んでいたよ」と言いたくなる瞬間があると思う(あなたがすでに「大人」であるならば)。

レビュー

『ゆるキャン△』あfろ先生のデビュー作『月曜日の空飛ぶオレンジ。』がカオスすぎる件

あfろ先生といえば、言わずと知れたキャンプ漫画『ゆるキャン△』の作者。2018年に放送されたTVアニメのヒットをきっかけに、原作の漫画を読み始めた人も多いことだろう。   だが、古参アピール乙と言われるのを覚悟の上で、ここは声を大にして訴えたい。   あfろ先生の漫画、『ゆるキャン△』以外も面白いから読んでください!!!   『ゆるキャン△』と同じ、山梨県が舞台の『mono』。『魔法少女まどか☆マギカ』のスピンオフ『魔法少女ほむら☆たむら ~平行世界がいつも平行であるとは限らないのだ。~』。死後の世界「煉獄」を描いた『シロクマと不明局』。日常ものはもちろん、シュールなギャグ漫画やSF漫画も手がける作風の幅の広さに驚かされる。   その中でも今回は、あfろ先生の記念すべきデビュー作、『月曜日の空飛ぶオレンジ。』を紹介したい。