頼む、助けてくれ。
当方、生まれてこの方童貞の青年紳士26歳。
恋とは何なのか、未だにわかっていない。
道ですれ違う女の子を見て、「あ!可愛い!好き!愛してる!結婚したい!」って思う気持ちは、恋なのだろうか。
画面の向こうの満島ひかりを見て「あ〜〜〜〜〜〜生まれ変わりてぇ〜〜〜〜〜〜」と思う気持ちは恋?
恋ってなに? 妄想? 幻想? 髪にワックスつける奴だけが味わえるやつ? ねぇなんなの? 教えてよ。
「恋とは何か?」の解答がないと、最近、俺周辺の恋のインフレーションが止まらないのだ。
お釣りを渡すときいつも手を添えてくれる近所のコンビニ店員に、暴走した恋心を抱いて妙なアクションをしてしまう前に!
恋の定義をくれよ!!
と、そんな面倒くさく「恋」を煩わせているみなさんへ。
『恋は光』という漫画がおすすめです。
恋の定義を考える漫画
一時期は、恋とは何かを探し求め、秋元康が作った全歌詞から「恋とは」の部分だけを抜き出し、恋の定義づけをしたこともあった。
しかし、結局何一つわからないままに終わった。
「恋とは静かに広がってく波紋」ってなんだよ?
そういうポエムが聞きたいわけじゃないんじゃ!
こちとら、真剣に恋の定義、探してんですわ!!
と、そんな風にやつれきった先で、僕が出会ったのが、恋の定義を考える漫画『恋は光』だった。
ウッソだ〜、どうせいつもの青春ポルノ作品でしょ。
「恋はこんなに近くにあったんだ…」はモテる側の世界観だからな!!
こっち側で語れ!こっち側で!
そういうみなさんのツッコミがビシバシくることは想像に難くないが、おそらくあなたの予想はあたらず、この漫画は期待を遥かに超えていく。
この漫画、真剣に恋の定義を考えるのである。
物語のキーとなる設定がある。
「恋をしている女性が、比喩ではなく現実にキラキラと輝いて見える」という主人公の特殊能力である。
主人公の名前は西条(あだ名:先生)、大学生である。
この「恋の光」の能力を開眼して以来、先生は自分に対して光を放つ女性がいないことを認識し続けている。
つまり、「誰も自分に恋心を抱いてくれている人はいない」という世界観で生きているのだ。
辛い。見たくもない現実を見続けないといけないことほど辛いことなんてあるだろうか。
だが、そんな先生にも恋心が芽生え始める。物語が急に加速する。
その相手が、この東雲(しののめ)だ。
同じ大学に通う学生で、明治時代からタイムスリップしてきたかのような古風な女性である。
そんな東雲が、なぜゆえ、恋の光に怯えながら生きる先生の病めるハートを射止めることになったか?
それはこのセリフであった。
「恋というのものを 知りたくて」
1巻16ページより
僕と一緒じゃねぇかああああ!!
我々、恋の定義ハンターに刺さる内容はこれだけではない。
二人目のヒロインの北代(きたしろ)だ。先生とは幼馴染。
実は、この北代、先生に対して好意を持っているが、先生から自分に対して光を放つ人がいないと告げられたため、その気持ちを本人に伝えられないでいる。
だから、北代は、自分の気持ちが恋だと確認するために、光の正体が恋心ではないと証明しようとするのだ。
この子も恋の定義で苦しんでるうう!
こんな恋多き少女のように見えて実は純粋なパティィィィン!!
さらに、我々のハートをわし掴みにするのはこの展開だ。
三人目のヒロインの宿木。
この人、彼氏持ちの女性からその彼氏を奪う悪癖を持っているのだ。
だから、東雲と北代と三角関係になっている先生に興味を持ち、本心は好きでもないのにアプローチを仕掛けてくる。
恐ろしいことに、光るのだ。
先生と二人きりのときは光らないはずの恋の光が、東雲と北代がいるときにだけ光るのだ!!
果たして、この奪いたいという感情も恋ということなのか!?
その答えは、続きのみぞ知る
4人の恋の行方。恋の光の正体。そして、恋とは一体なんなのか。
その答えは、ぜひ自分の目で確かめてみてください。
恋という概念をここまで、論理的にかつユーモラスに描いた作品は未だかつて存在しない。
そして、「恋愛漫画はどうもキラキラしていて苦手だ」と物申す人も安心してほしい。
「あぁ……わかる……わかってしまう……」とため息が漏れるほどの共感シーンが、出てくるわ出てくるわ……!
恋に辟易とし、荒み切った気持ちにちょうどよく寄り添ってくれる。
他のカップルは光っているのに、自分の隣にいる女の子だけは光らない映画館デート。
デート中に、人を交わす際、左右に分かれてしまうこのシチュエーション。
なんでこんなにぎこちないんだろう……。上手くいかないんだろう……。
いつかの自分が情景とともに浮かび上がる。
はぁ……。本当の恋がしてぇなぁ……。
恋とは何なのだろう。
その答えがわかったとき、我々はようやく一歩を踏み出すことができるのだ。
ぜひ『恋は光』を読んで、恋の定義を探ってみてください。
『恋は光/秋★枝 集英社』