誰だって夢を追える。田舎娘がアイドルを目指す『きらめきのがおか』を読むと生きる希望が湧いてくる

レビュー

どこか、「夢を追う」という言葉は、若者の特権のようなイメージがある。大人になると、身分不相応な夢をもつことが、恥ずべきことのように感じられてしまう。「いい歳して……」なんて言われちゃうかもしれない。ほんとうはやりたいことがあったとしても、尻込みしてしまうかもしれない。
 
ゴトウユキコが描く『きらめきのがおか』は、そんな人生における夢を、いくつになっても、誰であっても、追いかけていいんだ、という勇気を与えてくれる作品だ。

ゴトウユキコといえば、『R-中学生』や『水色の部屋』が代表作といわれることが多く、特殊な性癖や思春期における性の葛藤を描くのに長けた作家という印象がある。しかし、今作品はそんな彼女の中では、ある意味異色。大変爽やかでほのぼのとした、青春物語である。
 

きらめきのがおか
©ゴトウユキコ/講談社
 

ど直球で怖い者なしの田舎娘が上京

 

 
主人公は、岡山の片田舎から上京してきた岡部花子。18歳の彼女は、死んだお父ちゃんとの「東京と岡部葡萄組合の架け橋となるアイドルになる」という約束を果たすため、東京でアイドルを目指すことを決意、「煌めきノヶ丘」に下宿することになる。
 
そこの住人は、みんながみんな訳ありの変わり者ばかり。
 
漫画家の夢を諦めた大家の孫であるアキ、アキの姉で旦那と別居中のマキ、口数が少なく不気味な漫画家の十七、お酒が大好きで適当な編集者の大河内、大河内の娘でアイドルの経験がある圭、ハイテンションな変わり者の劇団員、何を話しているのか分からない老人の大家……。
 
しかし、驚くほどピュアな花子は、そんな個性豊かな住人たちともすぐに馴染んでしまう。
 

 

アイドルの道は簡単じゃないけど……

 
アイドルになりたいという気持ちだけで、どうなるかも調べず、完全に無計画で上京してきた花子。当然、そんな簡単にことは運ぶわけがない。甘かったのだ。花子は早々に社会の洗礼を受けることになる。
 

 
花子は、ときに傷つきながらも、だからといってアイドルの道は簡単に諦めない。
 
岡部花子「東京に出てきたからには・・・・ウチにはもう逃げ場がねぇんじゃ」(一巻 p.86より引用)
 
能天気にみえる花子も、実はけっこうな覚悟をもって上京してきているのだ。
 

夢が叶わなかったら、次の夢を追えばいい

 

 
この作品は、単なる花子の夢追い物語では終わらない。たった2巻という短い物語ながらも、住人それぞれが抱える悩みや葛藤が随所で丁寧に描かれており、夢が叶う人もいれば、当然叶わずに諦める人もいる。しかし、それは単なる成功・失敗として描かれない。
 
一見アイドルの才能がないように見えるが、夢を諦めずに追い続ける花子。一時は漫画家の才能があるともてはやされたが、自分の力に見切りをつけ夢を諦めたアキ。いずれの生き方も肯定するような空気感がこの作品にはある。
 
本作品に登場する住人たちは、それぞれが様々な道を「自らの意思で」選択していく。
 
ひとつ夢が潰えたのなら、また新しい夢を見つければいい。
 
そして、ここで重要なのは「自らの意思で」という点だ。誰かの意思や意見にすがるのではなく、自分の決断に覚悟を持つこと。たとえその決断が失敗に終わったとしても、その経験は次に夢を見つけた際に訪れる決断の際に大きな自信となるだろう。
 
夢を追うことにタイムリミットなんてものはなく、私たちはいくつになってもワクワクするような希望の道を選ぶことができるのだ。
 
 
きらめきのがおか/ゴトウユキコ 講談社