人生で一度は言ってみたいセリフの宝庫『SPRIGGAN スプリガン』

レビュー

「ここは俺に任せて先に行け!」

仲間たちと走る敵陣。立ちふさがるのは体躯3mはあろうかという大男。早く行かなければ囚われた姫の命が危ない。
「こいつは俺が引き受けた!お前たちは先に行け!」
大男の一撃をいなし、仲間たちに叫ぶ。俺の背中に集まる視線。その重さを感じつつ、奴に対峙する。勝てるかどうかなんて分からない。
しかし、その覚悟を見た仲間の一人(多分主人公)が歯を食いしばりながら言葉を投げる。
「…分かった!絶対死ぬんじゃねえぞ!」

言われてぇ〜。そんでラスボス戦で苦戦してる仲間の元にボロボロながらも駆けつけて窮地を打破する一手を繰り出してぇ〜。

さて今回ご紹介する『SPRIGGAN スプリガン』には、人生で一度は言ってみたいセリフがたくさん登場する。ほんと、たくさん。
もちろん「一生、こんなことを言う機会には巡り合わないんだろうなぁ」とは思うが、やはりそういうシーンを読むと滾るものがある。
『SPRIGGAN スプリガン』を読むときはぜひとも音読をオススメしたい。

SPRIGGAN スプリガン
©たかしげ宙/皆川亮二/小学館

紀元前4000年よりさらに前、いわゆる「超古代文明」の最中、現代科学を遥かに上回る技術を持ってして作られたのが「オーパーツ」。使いようによっては人類を滅ぼす力を秘めているものが、数多く存在している。

その力を使って、世界を掌握することを目的にしている勢力がうごめく現代。
超古代文明からの警告メッセージを受け取り、その巨悪たちからオーパーツを守るために日々闘う、特殊組織「アーカム」。
そしてその「アーカム」の中でもトップクラスの実力を持つ人間は「スプリガン」と呼ばれ、尊敬、畏怖されていた。
『SPRIGGAN スプリガン』はその「スプリガン」の少年、御神苗優を主人公に置いたアクション漫画である。

アクション漫画と書いたように、敵と対峙するとバッチバチに闘うのが御神苗優。
アーカムが開発した強化スーツ「A・M(アーマード・マッスル)スーツ」を着て、流血骨折なんのその、オーパーツを巡る攻防に身を投じる。
ある時は熱く、ある時は冷静に。高校生という年齢を思わせる言動もありつつ、任務を遂行するための頭脳も併せ持つ人物である。
そんな彼だが育ちには秘密があり、その経験を通して今の性格が培われた、という経緯がある。詳しくは読んでね!

だから…だろう。そうだろう。
そういう育ちだからこそ『SPRIGGAN スプリガン』には人生で一度は言ってみたいセリフがたくさん出てくるのだ。

これはクラスメイトを守るために敵と相対したシーン。
いや、言うだけなら簡単だ。私だって、お酒を飲みながらで言える。
しかし一般人であるクラスメイトを守りつつ、敵の大将を前に血を流しながらこれが言えますか?実際その場面に出くわしたとして、の話ですよ?

私が同じ立場なら「オレを殺るだと!?」のセリフが「オレ……いってぇ……」になると思う。そのあと頭を抱えて転げ回ると思う。
無理やりそのセリフを吐き出したとしても、こんなに自信たっぷりに笑えないだろう。
いやぁ、言いたい。これを言える強い男になりたい。

『SPRIGGAN スプリガン』の物語はその時々に登場するオーパーツ、それぞれを主題に置いて展開する。なので各ストーリーにまとまりがあって読みやすい。
そして、そういう話の切り分け方をしているので毎回、様々な強敵が優の前に立ちふさがる。

上で挙げたページは優と同じく「A・Mスーツ」を着た人物を相手にしている。出会い頭に一発やられて、やはり頭から流血。
しかし同じスーツを着ているもの同士、負けるわけにはいかないと担架を切る。
熱いセリフだ。余裕のある敵の表情との対比も良い。

というか、こういうセリフ言う時は頭から血を流している方がいいのか?
もし言える機会があるなら、私も事前にケガしておこう。

いや、血を流してなくてもかっこよかった。
私はこれまでの人生でナイフを突きつけられた経験はない。が、もし今後万が一そういう場面に出くわした時のために、このセリフは覚えておこうと思う。みなさんも良かったらぜひ。ちなみにこのコマの直前に、優はナイフを持った敵の腕を蹴り折っています。言葉に見合った実力です。そこまではできない。

漫画好きにはおなじみの「やってないセリフ」第1位に君臨する「やったか!?」も登場する。これは比較的口に出来る機会がある気がしますね。心に留めとかないと。

ここまでいくつかのシーンをご紹介したが、しかし正直今、全部は書ききれないと感じている。
この紹介記事を書くにあたって『SPRIGGAN スプリガン』を読みながら言いたいセリフ候補をメモしてみたのだが、15分で10個出てきた。
それぐらいの密度で『SPRIGGAN スプリガン』のストーリーは展開していく。
その濃さは、ハリウッド映画を観ている気分になるほどだ。

敵キャラ、サブキャラのセリフもたまらない。優に匹敵するほどの言い回しをする。
もうここまで来ると『SPRIGGAN スプリガン』はセリフで闘うアクション漫画なんじゃないかと思う。そんな訳ないんだけどさ。ねぇ。

『SPRIGGAN スプリガン』は少年漫画、ヒーロー漫画の教科書的な存在なんじゃないか。
普段生活していて我々が体験できない出来事に、身を投じていくキャラクターたち。
そういう姿を見ていると、憧れるし、応援したくなる。
どういうセリフにも違和感がない。その場でそれ以外の言葉が出てくるか?いや出ないよなぁ、と納得がいく。
だからこそ、そのセリフをマネしたくなるのだろう。私もそうなりたい、と。
読んでいて気持ちがスカッとする作品である。

あなたも『SPRIGGAN スプリガン』で好きなセリフを探してみてください。
もちろん、音読しましょう。

SPRIGGAN スプリガン/たかしげ宙 皆川亮二 小学館