干物女向け・やる気スイッチを押したいときに読む漫画3選

まとめ

朝は5:00に起床してお花に水をあげてヨガをして、家事を終えたら豆から拘った珈琲とモーニング。
さて、1日のスタート☆……なんて生活の人、本当に実在するのだろうか。
 
最近はお休みがあると専ら睡眠時間に費やしてしまう。酷い日には二日酔いで半日過ごしてしまうこともある(化粧を落とさないまま寝て後悔することがよくある)。外に出ればやる気が湧いてくるのに、家の中にいるとどうもオフモードだ。習い事・部活・アルバイト……「行けば楽しいのだけれど、行くまでが面倒臭い」という干涸びた状態に気を抜くとよくなってしまう。少しでも共感してくれる人がいるならば、嬉しい(仲間意識)。

 
しかし人生ずっとだらだらはしてられない。今回は読んだだけでやる気が湧いてくる素敵な女の子が出てくる漫画を紹介する。読んだあとあなたが、外に出て伸びをして背筋がしゃんとなるといいなと思う。
 

”真面目すぎるアラサー女子アナ”の生き方を読む『YES!』。

 

YES!
©槇村さとる/集英社
 
槇村さとる先生といえば香里奈主演でドラマ化された『Real Clothes』(https://comic.k-manga.jp/title/94474/pv)が有名だ。時代時代の、等身大の女性の生き方を映し出してくれる。
 
『YES!』の主人公は局アナのみどり29歳。仕事に命をかけていると言っても過言ではないくらいプロ意識の高い女子アナだ。
 

 
……仕事に対する意識が高すぎる。
 
入社7年目、順調だと思っていた生活だったが、大好きだった叔父の死や帯番組の降板により精神が不安定になり自分への自信が揺らいでいくようになる。
 

 
経験を積んでも帯番組では若さが優先されるという女子アナの世界に不安を抱くみどり。同時期に局の先輩が自分を求めてくれるという理由もありフリーアナウンサーに転身する。
 

 
自分の仕事に誇りを持ち、自分だからできることを常に意識してキャリアを積んできたみどり。
 

 
結婚退職する後輩、自分の帯番組のバトンを渡すことになる新人、次の居場所を見つけた先輩。
みどりは自問する。
 
「自分が正しいと思ってきたことはなんだったのか」
 
「自分はなにも変わっていないのではないか」
 
「なぜ自分だけがうまくいかないのか」
 

 
そこに答えを出すことはできず、自問の繰り返しだ。
 
みどりはどんどん負のスパイラルに落ちていく。そんな時、夫が亡くなり旅に出た叔母・京子さんの家に住む人がいなくなり、彼女の計らいで同名の”みどり”(通称クロ)とみどりは同居することになる。クロは結婚相手を探すために田舎から東京に出てきた女の子で、彼女の母親と京子さんは友達だったのだ。
 

 
クロは自分のしたいことをはっきりと思い描いている。そしてそれを包み隠さずはっきりと伝えることができる女性だ。
 
一方みどりは自分のしたいことがないと気づいていく。女子アナとして職務をまっとうすることが使命だと思うあまり、一人の人間としてどう生きていくのかというビジョンを描かずに独りで突き進んできたのだ。
 
一人の女子アナとして生きてきた彼女が、クロと出会い自分を見失っていくさまをヒヤヒヤしながら読んでほしい。
 

 
容姿端麗・才色兼備、それでも現状に飽き足らずストイックに幸せ(「なにが幸せか」という問いも見所の一つだ)を追い求める姿に読者は刺激を受ける。「なんで自分ばっかり!」という人は少々頑張りすぎているのかもしれない。うまくいかないことを受け入れることも、時には必要だ。
 
二人のみどりを見て、仕事もプライベートも楽しもう!と思うことができるポジティブな作品だ。
 

”元天才子役・現引きこもり”の成長を描く『キャットストリート』。

 

キャットストリート モノクロ版
©神尾葉子・Leaf Production/集英社
 
次に紹介する漫画『キャットストリート』の作者は『花より男子』の神尾葉子先生だ。
 
あなたは、社会から断絶し家族とすら話すことがない人生を想像できるだろうか。
 
この物語の主人公・青山恵都(ケイト)は9〜16歳までの7年間、引きこもりだった。
 

 
子役で有名だった彼女は9歳のときミュージカル「サニーデイズ」初日公演で、あるショックから言葉を発せられなくなりそのまま芸能界を引退した。仕事が忙しく同級生から妬まれ友達もいなかった彼女はそのまま引きこもりになってしまった。
 

 
世間からは後ろ指を指され「声をなくしたケイト」と言われていた。
 
そんなケイトに、社会に出るきっかけをつくってくれたのはフリースクールを経営しているという一人の男性だった。フリースクールにいるのは社会からドロップアウトした人ばかりだ。
 
彼は言った。「人生の散歩道といったところでしょうか」「どうです?来てみませんか」と。
 
知識も言葉も流行りもなにもかも9歳の頃から止まったままだったケイト。身の回りのすべてに怯えている状態だ。そのため自分が傷つかないようにすることに必死で、人とうまく関わることができない。
 

 

 

 
「変わりたい」、「でも怖い」……
 
そんな気持ちを後押しをしてくれたのはフリースクールで初めて会った佐伯玲だった。
 

 
玲の友達にプログラマーの峰浩一、洋服作りが趣味の野田紅葉。彼らにもそれぞれフリースクールにいる事情がある。
 

 

 
ケイトが彼らとどのようにして7年間のコミュニケーションのブランクを埋めていくのか、どのようにして自分の居場所を持てるようになるのか、そして、天才子役”だった”ケイトが社会でどう生きていくのか……
 
まずは試し読みから読んでみてほしい。先ほどの画像のようにケイトの表情は眉間にシワが寄っているものばかりだ。彼女の表情が増える度に勇気がもらえる。ケイトのように、外に出て行きたくなるだろう。
 

たくましく可憐。激動の時代を生きる女性の強さを描いた『ヨコハマ物語 夢草紙―明治編―』。

 

ヨコハマ物語 夢草紙―明治編―
©大和和紀/講談社
 
私は名古屋に住んでいた時に、月イチのある朝活に参加していた。各自お勧めしたい本を数冊(決まりはない)持って行き、本の紹介をしてそのまま集めて積み上げ、気になる本を抜き取り持って帰る。その本にはスタンプが押され、再度お勧めしたい本として次回の会で持って来ても良い。そうして人から人へ渡った本を、私たちは「漂流本」と呼んでいる。
 
『ヨコハマ物語 夢草紙―明治編―』に出会った時、それはすでに一度漂流されていた。その日のうちに読んですぐに「また漂流させたい!」と思った。早く次の人に読んでほしいと、心底思ったのだ。
 
この物語の舞台は明治の横浜。文明開化真っ只中の激動の時代、貿易商叶屋の娘・万里子(まりこ)と両親を失い叶屋に引き取られた卯野(うの)、同い年の彼女たちが共に成長していくストーリーだ。
 
明治の横浜。貿易が栄え日本に新しい文化の風が吹いていた時代。日本語でない言葉を話す異国の人々が活き活きとしている姿を見ながら生活している万里子と卯野は、お互いに外国に行くことを夢見る。
 

 
まだテレビすらない時代、異国の人々や西洋から来た洋服や雑貨にどれほど胸が踊っただろうか。しかし女性が学校に行くこと自体が難しかったのが現実だ。
 
しかし万里子は強く主張する。「時代は変わる」と。
 

 
万里子は自信家で気が強く、卯野は謙虚で心優しい。正反対の性格だが、二人は共通して芯を持っている。夢を叶えることを決してあきらめたりしない。意志を持った姿はたくましく、美しい。その姿に何度も元気付けられるのだ。二人は強い友情で結ばれていくが、同じ人を愛してしまう。友達、家族、恋人……人を愛することもこの漫画の大きなテーマだ。
 
そして私がこの作品が好きなのは、本作はビジネス書としても読めるという点だ。
 
万里子の家は一度悲しい理由で倒産の危機に瀕する。実家を救うために幼少期から勉学に勤しんでいた万里子は商才を発揮し、ピンチをチャンスに変えていく。発想の転換や勝気の性格ゆえの猪突猛進な仕事ぶりは痛快で気持ちよく、今の時代に読んでも楽しめる。
 
一方卯野も海外で伝染病や差別に合いながらも、持ち前の雑草魂で自分の生き方を見つけていく。
 
この漫画は激動の時代の波乱万丈な彼女たちの人生すべてを描いている。
 
すべてを読み切るのに時間はかかるだろう。(私は7〜8時間かかった。)
 
けれど、読み始めたら次に何が起こるのか、と、ページをめくる手が止まらなくなるはずだ。
 
私は猫背だ。私の中のやる気スイッチのひとつに背筋を伸ばすことがある。
 
彼女たちのような美しく輝く女性たちの物語を読んでいると、いつの間にか背筋が伸びてくる。早起きした朝の時間、漫画を読むのもいいかもしれない。読んだらその日は1日姿勢がシャンとするはずだ。
 
 
YES!/槇村さとる 集英社
キャットストリート モノクロ版/神尾葉子・Leaf Production 集英社
ヨコハマ物語 夢草紙―明治編―/大和和紀 講談社