モンスターや女の子に生まれ変わっちゃった!? 転生モノ漫画4選

まとめ

「小説が書かれ読まれるのは、人生がただ一度であることへの抗議からだと思います。」
 
ミステリ作家・北村薫氏のデビュー作「空飛ぶ馬」より。何度でも生まれ変わって、いろんな人生楽しみたいですよね! ということで今回は「転生モノ」漫画特集。女子高生からスライム、サキュバスまで、性別や種族を越えて第二の人生を体験できる、様々な転生漫画をご紹介します!

『転生したらスライムだった件』

 

転生したらスライムだった件
©伏瀬・川上泰樹/講談社
 
「ボクは わるいスライムじゃないよ」───国民的RPG「ドラゴンクエスト」シリーズにたびたび出てくる有名なセリフ。『転スラ』でもオマージュとして、このセリフが使われています。
『ドラゴンクエスト』ではモンスターが人間の仲間になりました。反対に『転スラ』では、サラリーマンが異世界のスライムに転生して、仲間を増やしていく物語です。
 
会社員の三上悟は、同僚をかばって通り魔に刺されて死亡。異世界の洞窟にて、スライムとして転生するところから始まります。
悟=スライムのリムルは、相手を喰らって能力を取り込む「捕食者」のスキル持ち。コウモリや蜘蛛を討伐しては捕食して、様々なスキルを獲得していく「俺TUEEE」系として、強い主人公が無双する形式になっています。最弱のモンスターという称号のスライムが、最強に無双するというギャップの面白さが、まず挙げられます。
 

 
しかし本作のミソは、戦闘力ではなく頭脳戦。リムルは知恵を使って問題を解決していきます。ゴブリン、牙狼、オーガ(鬼)……はじめはリムルと敵対していた種族たち。
見た目がぷるぷるとしたスライムが、巧みな交渉術で、各地の争いを治めていく。その都度、誤解が解けたり改心したり、仲間になっていく。リムルが人間やモンスターを助けるたびに、様々な種族・人物たちとの縁が紡がれていくヒューマン・ドラマならぬ、モンスター・ドラマが心地いいんです。
 
ですが避けられない脅威には武力を行使します。『まおゆう魔王勇者 外伝 まどろみの女魔法使い』の川上泰樹の描く激しい戦闘は、躍動感があって実にイイ。
 
それはそうと、ヒロインのおっぱいの台座になるリムル。その絵面のおかしさと羨ましさ。コミカルな演出にも注目です。
 

 
 
 
もう一作、転生モノ+「俺TUEEE」系を紹介しましょう。
 

『サキュバスに転生したのでミルクをしぼります』

 

サキュバスに転生したのでミルクをしぼります(コミック)
©雪月佳/木野裕喜/双葉社
 
男子高校生・利一が命を落として、サキュバスに転生して異世界に召喚! つまり男から女の身体へ移り変わるという、性転換(TS)モノです。
 
女子の身体に入った男子が、一番はじめにすることといったら何でしょうか? はい、おっぱいを揉むことですね! 「君の名は。」の瀧くんよろしく、利一くんも「むにんっ」と鷲掴んじゃいます。
 

 
なんやかんやで酒場で住み込みで働くことになったサキュバスの利一あらため、リーチちゃん。残念美人のスミレナさん、純朴な弟のエリムらと、賑やかな異世界での生活をスタートさせます。
 
リーチのレベルは1。どこが「俺TUEEE」かというと……付き添いで一緒に転生してきた牛のミノコ。襲ってきたベテランの冒険者たちを一蹴。ここぞという時に、何度もリーチのピンチを救うミノコの頼もしさたるや。「俺TUEEE」、いや「牛TUEEE」と呼びたい。
 

 
シリアスになりすぎず、ギャグやエッチなネタをテンポよく描いているので飽きさせません。いい意味で、肩の力を抜いて楽しめる華やかさがウリの漫画に仕上がっています。
 
 
 
TS(性転換)モノを扱った転生漫画、まだありますよ。
 

『どるから』

 

どるから
©石井和義・ハナムラ/竹書房
 
もしも正道会館の石井館長が、女子高生に転生したら───
 
この一行だけでパワーワード満載。そもそも石井和義館長、まだご存命ですし!(2018年12月現在) 冒頭、刑務所から出所したての石井館長がトラックに轢かれて逝去。石井館長の魂は、不思議なネコの力で女子高生・一ノ瀬ケイに乗り移ってしまいます。この序章だけでツッコミが追いつきません。
 
一ノ瀬ケイの空手道場は借金まみれで廃業寸前。そこで石井館長(in一ノ瀬ケイ)は、K-1ブームを盛り上げた名プロモーターの手腕を活かして、道場再建を目指します。
 
身体はJK、中身はオッサン。見かけは美少女なのに、大股でガハハ笑いだわ、関西弁だわ、おっさんセンス丸出し。霊体の一ノ瀬ケイの激しいツッコミがウケます。
 

 
『どるから』は、2つの柱がキモになっています。
1つ目は、道場の再建を解説していく経営ノウハウもの。これまでの一ノ瀬ケイの空手道場は、昔ながらの「キツくて怖くて汗臭い格闘技」。石井館長はこれを「健康的で安心でおしゃれなスポーツ」に転換することを提案します。
 

 
「空手道場はサービス業」
「立地的に学校に近いならば、キッズ対策すべし」
 
個人経営の喫茶店やラーメン屋、あるいは仕事全般にも通用する石井館長の経営哲学。可愛い女子高生の外見と、中身のおっさん丸出しトークによる経営指南。面白がりながら、気づきが多いんです。
 
2つ目はもちろん格闘バトル。中堅格闘家を一蹴する一ノ瀬ケイのカッコよさ、古武術合気の天才少女との一騎打ちなど、躍動感のある決闘が場を盛り上げます。
 

 
要所で出てくる石井館長の格闘語録も興味深いです。ケンカでナイフやフォーク、頭突きに金的、なんでも使ってきたとか、ぶっちゃけすぎです館長! その場で与えられた状況で、一番勝てる可能性を模索していく合理的な思考法。経営も格闘技も、根底にある本質は同じだと感じさせられます。
 

 
TSコメディ、経営ネタ、熱いバトル。見るべきところの多い漫画です。
 
 
 
最後にとびきりリラックス効果のある、癒やし漫画を紹介しましょう。
 

『小学生がママでもいいですか?』

 

小学生がママでもいいですか?
©ぢたま某/講談社
 
『まほろまてぃっく』でメイドさんを、『Kiss×sis 弟にキスしちゃだめですか?』で姉萌えを世に知らしめた、ぢたま某。そんなぢたま某の新作は、年下の女子小学生から溢れんばかりの母性を感じるヒーリング漫画です。
 
仕事に疲れ果てた主人公の徳山岳大(とくやまたけひろ)は、ある日小学生の女の子・木々那(ここな)と出会う。木々那は、岳大の死んだ母親の生まれ変わりだと主張。女子小学生に癒やされるハートフル転生コメディ!
 
大人の男性が女子小学生に甘える合理的な理由付けとして「転生」を用いている、この設定がまず見事。
にもかかわらず、主人公の岳大は「ママー」などと安易に甘えません。常識的な社会人として振る舞い、世間体を考慮して女子小学生と距離を置こうとします。けれど木々那ちゃんは母親としてグイグイ距離を縮めてきます。部屋のあちこちを捜してエッチな本を見つけようとしたり、この小学生ママ、油断も隙もないっ!
 

 
ふとした瞬間に生前のお母さんとの会話や仕草、癖を木々那に重ねる岳大。仕事に行き詰まって心が折れる寸前、膝枕した木々那の手のひらが岳大の額に置かれて、気分が安らいでいく。幼い頃の母親が木々那に重なる瞬間です。
 

 
大人が子供に癒されるハートフルなシーンの数々。社会に傷ついた大人が、もう一度立ち上がる再生の物語なんです。疲れたサラリーマンに効く、強力な栄養ドリンク。エネルギーをチャージしてもらえますよ!
 
 
 

結び

 
近年「(異世界)転生モノが多すぎる」という指摘があります。それは一つの事実ではあります。だからといって「同じようなものばかり」という結論にはなりません。
スライムやサキュバス、性転換といった多種多様な転生ドラマを取り上げました。もうこれって、一つのジャンルになっているんですよね。
「転生」大喜利といいますか。「転生」テーマに乗っかって、そこにどういう作者のオリジナリティを盛り込んでいくか。紹介した個性的な4選、どれもオススメですよ。
 
 
転生したらスライムだった件/伏瀬・川上泰樹 講談社
サキュバスに転生したのでミルクをしぼります(コミック)/雪月佳 木野裕喜 双葉社
どるから/石井和義・ハナムラ 竹書房
小学生がママでもいいですか?/ぢたま某 講談社