「講談社×まんが王国 共同プロジェクト」として独占先行配信を開始し、以来まんが王国でランキング上位を取り続けている『ギルティ ~鳴かぬ蛍が身を焦がす~』。
「1話目から、衝撃の展開が待ち受ける――」そんな強烈なキャッチコピーを掲げた大人気作品。今回、まんが王国ラボ編集部が作者の丘上あい先生に独占インタビューをさせて頂くことが出来ました。
前後編に分かれる大ボリュームのお話から、その人気の秘密に迫ります!
「初めての電子先行配信」という機会に、新境地にチャレンジしてみたかった
まんが王国ラボ編集部(以下、ラボ):そもそも『ギルティ』の話の着想は、どういったところから得たんでしょうか。
丘上あい(以下、丘上):こういう大人の恋愛漫画って、あまり描いたことがなかったんです。でも、当時のBE・LOVE編集長と別案件で打ち合わせをしていたら「丘上さんのドロドロした作品が読みたいなぁ」と言われて(笑)。ドロドロ…と思ったときに、「不倫かなぁ」という感じで決めました。
あと、電子先行配信での連載が初めてで。「今まで紙で読んでくれていた読者以外の人が読んでくれるのかな」と思ったときに、これまでとちょっとイメージが違う作品で、新たなお客さんに見て頂きたいな、という思いもありました。
ラボ:「電子先行配信での連載が初めて」と仰られましたが、電子だと、話の書き方や作り方が紙での連載と違ったりするんですか?
丘上:紙だと雑誌で出すことになるので、他の作品や広告の兼ね合いで、決められたページ数でバチっと収めないといけなくて。描きたかったエピソードを削ってしまうことはありますね。
あと、紙は左右の「起こし」を考えないといけない。雑誌を開いたときに、右上に衝撃的なものが来るようにしているんですよ。左に来ちゃうと、ページをめくった時に見えてしまうので…。
電子だと、一応コミックスになった時のことを考えて描いてはいますけど、あまりそういうことを気にしないで描けるんですよね。
ページ数も、紙ほど制限がないから、「単行本で最終的に何ページ」という制限の中で、今回は30ページ、次の話は32ページ、みたいに1話あたりのページ数を自分で調整して割り振れるのは有難いです。
「電子コミックを課金して読む」って、割とハードルが高いと思うんですよ。コンビニで雑誌を立ち読みするよりは、ハードルが高いから、本当に見たい人しか見に来ないかなと思っていて。
だから、今までやったことのないエロの表現や、ドロドロした人間の汚いところをもっと踏み込んで描いています。
今まで私の漫画を読んでいて「え、こんなの丘上じゃない」って離脱する人もいるかもしれないけれど、それはもうしょうがないかな、って気持ちですね。
でも「あ、ヤバイ、丘上の新境地!」って思って読んでもらえたら――「ただの不倫モノではない」と思ってもらえたら。そういう思いで描いてます。
ラボ:「初の電子先行配信」というタイミングも相まっての、チャレンジ作というところがあるんですね。
丘上:そうですね。

「爽は、逆にちょっと自分がイラっとするキャラにしました」
ラボ:出てくる登場人物が、次々と波乱を巻き起こしていきますよね。爽が可哀想になるくらい(笑)
ああいった登場人物のキャラクターは、モデルがいたりするんでしょうか。
丘上:具体的にモデルっていうのはいないんです。
私、どうしても「嫌な人間を描けない」っていうところがあって。自分が「人に嫌われたくない」と思っているのが、ついつい作品に出がちなんですよね。
だからこれまでの作品でも、ちょっと悪い奴でも、何話か進むとすごく良い人になっちゃうんですよ(笑)。そういう部分をずっと弱点だと思っていました。
人間はもっと嫌な部分はあるし、そこを掘り下げられない自分が、殻を破れていない感じがすごくあって。「悪い奴をトコトン悪者にしたかった」っていうのはありますね。
一見すると、不倫されている主人公・爽はただの「可哀想な人」「同情すべき人」ではあるんだけど、実は爽も爽で、旦那の息が詰まるような奥さんであったんじゃないか、不倫される原因みたいなものを作っていたんじゃないか、って。
だから「爽に味方して読んでください」とは思っていないんです。瑠衣の味方をして読む人が居てもいい。
彼女のやっていることは確かにめちゃくちゃなんですけど、「瑠衣の言ってることも分からんでもない」という人が居てもいい。「黙って他の人を想い続けているくらいだったら、行動に出る瑠衣のほうが正直なんじゃないか」って思う人も、もしかしたらいるかもしれない。
だから、読んでいる人が誰に共感しても良いように――「悪者でも共感しようと思えばできる」キャラクターにしたいなと思っています。
すごく悪いことをしているキャラクターなのに、どこか正論を言っていたり、ヒロインがぐうの音も出ないくらいやり込められるところに、なんだかスッキリする読者がいてもいいのかな、っていう。
多分、嫌いな人っていると思うんですよ。爽みたいに「綺麗で完璧で、仕事もできて、旦那は代理店勤めで高収入。タワーマンションに住んでて、家で旦那がカルパッチョ作ってくれる」みたいなのを。
………「カルパッチョ」、もうカズ君の代名詞みたいになっちゃいましたけど(笑)

一同:(笑)
丘上:そういう爽にちょっとイラっとする人もいるのかなって。私だったらイラっとするなって(笑)。
だから爽は、逆にちょっと自分がイラっとするキャラにしました。
ラボ:確かに瑠衣の発言って、的を射ている部分も多いですね。
丘上:不倫の話って、ヒロインが幸せになるためのことを考えたり、「とにかく不倫女をやっつけろ!」みたいな展開になるものが多くて、それがちょっとありきたりかな、と思ったんです。
どちらかと言うと、私、実は瑠衣の方に肩入れして描いてるんですよね。自分の中にもあるような感情だったり、汚い言葉だったり、そういうのを「全部言わせてる」みたいなところがあって。
描きやすいのは、実は瑠衣なんです。
ラボ:作品の見方がちょっと変わりました。言われてみたら、確かに「爽タイプ」が嫌いな女性は居ると思います。
丘上:爽は、誰もが共感するヒロインではないと思うんですよ。ある種、偏った特殊な場所にいる「リア充」。でも、それだけにして主人公が全く共感を得ないのも困るので、爽のバックボーンとして、母親との確執だとか、自分ではどうにも回避できなかった秋山との別れだとか、そういうものを描くことでバランスを取っています。一見「リア充」に見えても、「皆、蓋開けたら色々ありますよ」って感じです。
瑠衣は、描いたことが無いキャラクターだから楽しい
丘上:瑠衣です。瑠衣が一番描きやすいですね。「描いたことが無いキャラクターだから楽しい」っていうのが一番にあると思うんですけれども……。
「私、こんなに伸び伸びゲス顔描けるんだ!」って(笑)
ラボ:今までの作品にいないキャラクターですよね。
丘上:無いですね。
「シッカリしてくださいよ… 『奥さん』」とか、GPSが「…あ~あ… 壊れちゃった」とか、「よくこんな顔描けるなー」と、自分で描いていて発見でした。「あ、こういう顔描けるんだ、私」と思って(笑)


ラボ:あの「…あ~あ… 壊れちゃった」の顔は、バナー映えがすごくて、作品の広告に使わせていただきました。
一同:(笑)
丘上:結構バナー映えを意識して顔を描くようにもしてるんです。
丘上:コマを切り抜いて使ってもらいやすいような顔を意識して描いている。やっぱり自分が見てても、漫画の広告バナーで気になるのって、そのコマの表情だったり切り抜いたセリフだったりなので……。
そこで読む人の気を惹けるものだったら良いな、と思っています。
ラボ:電子先行配信連載ということで、すごく工夫されているんですね。我々みたいに電子出版をしている人間からしても、先生自らがそういったことを意識してくださっていることは、すごく有難いですし心強いです。
話の「引きの強さ」が重要
ラボ:『ギルティ』は「初めての電子連載」「新境地のテーマ」だとお伺いしましたが、描いていて「難しいな」と思ったり、苦労されている部分ってあるんでしょうか?
丘上:電子に限らず連載っていうのは、やっぱり「引き」が大事なんですよね。
私、海外ドラマが好きでよく観るんですけど、海外ドラマって、「1話完結の話」の縦軸に対して、最後まで解決しなきゃいけない横軸の問題を残しながら進んでいくものが多くて、「最後まで観たい」って思えるような作り方をしている。これまでの私の作品も、そういう進め方をしているものは多いです。
「1話1話の引き」と「単行本になった時の引き」をすごく意識していますね。
今までだったら「いや、こんな展開ありえないだろ」って思ってしまうような、その「ありえない」を取っ払って、「いや、こういう展開もアリだ」って自分に言い聞かせて、結構強めの引きを敢えて作るようにしました。
そうしたら、「次の話が待てない!」っていう声を頂いたり、友達からは毎回興奮したメールをもらったり。配信日0時にすぐ読んでるっていう友達が「なんなの!瑠衣ィ!」って送ってきたりとか(笑)。
それぐらい続きを楽しみにしてくれてる人がいるっていうのは、実感として今までに無いものだったので、「引きをとにかく強くする」っていうのは多少オーバーでもやって良かったな、って思っています。
ラボ:うちの社内でも、最新話の配信日にはいつも「続きが気になるー!」っていう話になります。
まんが王国の公式Twitterってアカウントが2つあるんですが、『ギルティ』に配信日には2つのアカウントそれぞれが「続きが気になるー!」ってつぶやいて。社内のTwitter同士で盛り上がるのが恒例になってます。
丘上:でもネタバレができないから、いつもツイートが「ぬぉぉおおおう」みたいになってるのが、ちょっと面白いです。中身のこと言う訳にはいかないから、ホントにそうとしか言えないよな、って(笑)
https://twitter.com/mangakingdom/status/985723076670177280
ラボ:もっと語彙力があれば、もっと上手く引きの強いワードで宣伝できるんですが……(苦笑)
丘上:いやいや、でもあれが一番私は嬉しいですね。「うわぁああ」ってなって欲しくて描いてるので(笑)。
ラボ:つぶやいた後にいつも先生が反応してくださって、担当が喜んでいます。ありがとうございます!
丘上:こちらこそ、ありがとうございます。
ラボ:Twitter上でも読者の方とやり取りさせていただく事があるんですが、「次の配信日、いつですか?」とか「今日配信されますか?」みたいなのを頂いたりするので、反響の大きさはそういうところでも感じていますね。
描いていて楽しくもあり難しいポイントとは
丘上:さっきも言いましたけど、瑠衣の表情ですね。あと、「エロ」をしっかり描いたことってこれまでにあんまり無くて。
ラボ:あ~確かに。見たことない気がします。
丘上:「エロ」って、描いたことなくは無いんですけど、これまではふわっとした感じのだったので。あそこまでのはやったことが無かったから、楽しいし、さっきの質問に被りますけど、難しくもあります。……とにかくエロの見せ方にバリエーションがなくて。
ラボ:「エロ」を表現としてどう出すか、って難しいですよね。
丘上:私は「表情が大事かな」って思っているんですよね。
直接的な描写を描いちゃうと、例えば「ガッツリ下からのアングルで描いて、吹き出しで隠す」とかになっちゃうので。なので、やっぱりカメラは上からのアングルで、AVだったら女優さんの顔にずっとこうスポットを当てるような。男の人の顔よりも、女性の表情でエロスを表現したいなっていうのがあります。

あと、爽が扉絵のことが多いんですけど、ああいうちょっとセクシーな扉もあんまり描いたことがないんです。すごく細かいことですけど、「顔を向かって左に傾けてたら右の首筋を出すように、髪の毛は右側に三角に残してちょっと後れ毛を描く」とか。
自分で「エロいな」って思う表現は、そういう細かいところなんですよね。
ラボ:女性ならではのセクシーラインというか。
丘上:ビチッっと纏まっている髪の毛よりも、ちょっと緩んでいる髪の毛の方がエロいのかな、とか。
ラボ:なるほど。そいうところが、描いていて楽しいところであり……
丘上:難しくもありますね、これまでに描いたことが無いから。
とにかく難しい。でも楽しい。っていう、半々ですかね。
「『ギルティ』は、まだ始まってません」
丘上:うーん、これ色んな人に聞かれて言ってるんですけど、「『ギルティ』はまだ始まってません。」っていうのが。
ラボ:「始まってません」!!??
丘上:15話も描いて、まだ始まってない(笑)
「本当の意味でまだ始まってはいない」っていうのが、まぁ唯一言えることかなっていう……。
ラボ:もう十分すぎる、あの………、パンチのあるお言葉を。
丘上:ここからです。
ラボ:個人的に、今めっちゃテンション上がりました!
一同:(笑)
ラボ:ますます配信日にはザワつきそうですね(笑)ありがとうございます!
インタビュー前半は、作品の誕生秘話から、制作裏話まで、たっぷり語って頂きました。
後半は、先生ご自身の漫画家ライフについて、沢山お話を伺っています。更新をお楽しみに!
毎話衝撃の展開が待ち受ける『ギルティ ~鳴かぬ蛍が身を焦がす~』。最新話が読めるのはまんが王国だけ!
この機会に、知らなかった方も是非チェックしてみてください。
『ギルティ ~鳴かぬ蛍が身を焦がす~ 分冊版/丘上あい 講談社』

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