ゴスロリ服を着た女の子が好き?だったら『水曜日の夜には吸血鬼とお店を』を読まない手はない

レビュー

ゴスロリに甘ロリ、いわゆる「ロリータ・ファッション」が好きな方は多いと思われる。海外に誇る日本文化のひとつとしても認知度が上がっているものの、普段の生活で目にする機会は少ない。

もっとゴスロリ服を着た女の子が見たい。そんな方におすすめしたいのが、今回ご紹介する『水曜日の夜には吸血鬼とお店を』。ゴスロリショップで働く吸血鬼の少女と人間の少女の、心温まるふれあいを描いた4コママンガだ。ちなみに、タイトルの「お店」は「ショップ」と読む。

水曜日の夜には吸血鬼とお店を
©Rami Hato/講談社

そのゴスロリショップは、水曜日の夜だけ扉を開く

水曜日の夜にしか営業しないという、不思議なゴスロリショップ「LAST WEDNESDAY」。

店長のウェンズデイは、血のように赤い瞳、白銀の長髪、そして鋭い牙と、どこか浮世離れした容姿の持ち主だった。

そう、彼女の正体は、世にも恐ろしい吸血鬼だったのだ! ……恐ろしい?

その「LAST WEDNESDAY」にある日、ビルのオーナーの孫娘である理沙がやってきた。

理沙は元々、ビルの最上階で祖母とふたりで暮らしていた。ところが、祖母が療養のためしばらく家を空けることになってしまう。

孫を療養先に連れていくわけにはいかない。かといって、ひとりにするのも心配。そう案じた祖母は理沙に、ウェンズデイの店の手伝いをするように言い渡したのだ。

だが、理沙はまるでお店の役に立たない。ゴスロリショップで働こうとしているのに、デザインセンスが壊滅的。

また、ウェンズデイは人間の血を吸わない代わり、特別なレシピで作られた料理しか受けつけない体質だった。そんなウェンズデイの料理を作るのも理沙の仕事だが、彼女の手料理は逆に、不死身の吸血鬼をも倒す銀の弾丸になる――。

結局、自分の分はおろか、理沙の夕食やお弁当までウェンズデイが作る羽目に。どうしてこうなった。

世話をやいているのはどっち?

理沙が来てからというもの、仕事が減るどころかむしろ増えた。オーナーの孫である手前、無下には扱えないが、ウェンズデイが理沙の世話を最初は面倒だと思っていたのも仕方ないだろう。

しかし、どんなときも笑顔を絶やさない理沙の純真さ(作中で怒ったり拗ねたりしたシーンが一度もない)に、次第にウェンズデイは惹かれていく。

本作の見どころは、理沙の世話をやくウェンズデイの方が実は理沙に心酔していて、世話をやかれる理沙の方がウェンズデイを客観的に見ているという、ふたりの関係性の「ひねり」にある。

授業参観に出てくれる保護者がいなくて理沙が哀しんでいると勘違いし、勝手に学校に忍び込もうとしてしまうウェンズデイ。

ウェンズデイが自分へのプレゼントを用意しているのを知っていながら、知らないふりをして大げさに驚いてみせる理沙。

理沙の保護者(オカン)を自称するウェンズデイだが、実際は理沙の手のひらの上で踊らされているようにも見えてほほえましい。

人間よりも寿命が長いとはいえ、ウェンズデイもまた女の子。長い間ひとりでお店を切り盛りしていて、本当はさみしかったのかもしれない。

「枠」にはまらない4コママンガ

ここまで、ウェンズデイと理沙の関係性(内面)について書いてきたが、ビジュアル面にも触れておきたい。

ゴスロリ、甘ロリ、ボーイッシュ、アリス風にシスター風コーデ。ゴスロリショップが舞台なだけあって、キャラクターたちが着ている、私たちの普段の生活ではあまり見かけないような服装が拝めるのも、本作の魅力だ。

しかし、この作品は4コママンガなので、コマが小さい。せっかくかわいい靴やタイツを履いていても、普通に描いてしまうと画面には上半身しか映らない。

そこで本作では、上下のコマの枠をぶち抜いてキャラの全身を描くという表現を要所で採用している。2コマ・3コマ程度なら他の作品でも見られる表現だが、4コマすべて(ページの縦半分全部)ぶち抜くのは珍しい。

さらに、そうした手法をほぼ毎話取り入れているのもポイント。さながらこの作品そのものが、ゴスロリショップのショーウィンドウのようですらある。

作者の羽戸らみ先生は、美少女系のイラストレーターとして長年活躍されている方なので、絵のかわいさは文句なし。加えてギャグにもスパイスが効いており、キャラクター・ビジュアル・ギャグ総じて完成度の高い4コママンガとなっている。

タイトルこそ『水曜日の夜には吸血鬼とお店を』だが、月曜でも火曜でも、朝でも昼でも、好きなときにページを開いてウェンズデイと理沙のゆるふわな日常を覗き見てほしい。

水曜日の夜には吸血鬼とお店を/羽戸らみ 講談社